BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@シリーズ――シリーズ組も気合充分!

 

 

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 11R発売中、装着場に大きな金属音が響いた。平和島のピットには、ペラ調整室が2カ所。1カ所は競技棟1階の室内にあるもので、もう1カ所は競技棟1階のピロティになっている場所、つまり屋外と言える場所にある。寒風の中、ここでペラ調整をしている選手は少なくないわけだが(銀河系軍団がだいたいココ)、風が吹き込めば身を切られるような寒さを感じる時期だけに、それを厭わずに調整している選手たちには頭が下がる。

 金属音の主は、そこでペラを叩いていた新田雄史だった。シリーズのレースは10Rで終了しており、すでに作業を終えている選手も多数。しかし、新田はやめていなかった。木槌を激しく打ち下ろし、何度も大きな音を響かせている。もう微調整の類いではないぞ。思い切り叩き変えているとしか思えないほどの、力強い打撃をペラに与えているのだ。仮にそうだとして、すでに試運転は行なえない。水面を走っているのは、トライアル2nd組のみなのだ。それでも、新田は叩く。きっと明朝一番に、このペラ叩きの反応を確かめることになるのだろうが、とにかく執念を感じさせる新田の姿だった。迫力があった。

 

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 今節、石渡鉄兵の姿は整備室でよく見かけた。ただし、モーター整備ではなく、整備室の隅にあるテーブル=プロペラゲージ擦り用の場所である。早くからゲージ擦りをしている選手はエンジン出ているの法則に照らし合わせれば、石渡はモーターに好感触を得ているということになるが、石渡の場合、そうとも限らないようだ。先々を見据えて、さまざまなプロペラの形をゲージにとっておく。そういう狙いもあるようである。もちろん、モーターがウンともスンとも言わなければ、別の作業を優先するのだろうけど。

 その石渡が、やはり11R発売中に、整備室からゲージを入れたケースを持ち出して、ペラ室に運んだ。ゲージ方面での戦闘態勢がいよいよ整ったか。明日からはトライアル組から5名がシリーズに合流する。上位モーターを手にしている、今年のトップ18に残った強豪がやってくるのだ。もちろん彼らにデカい顔をさせてはいられない。まして、石渡にとっては地元SGなのだ。明日からの石渡の動きはきっと変わる。レースに臨む断固たる決意も、さらに強くなっていくだろう。

 

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 地元SGを戦っているのは、濱野谷憲吾も同様である。何度も言うが、本来はこちらにいてほしくはなかった。しかし、こうなってしまったからには、こちらで存在感を示さねばならない。10R、豪快まくりでようやく1着が出た。濱野谷の反撃が、いよいよ始まった。

 レース後はさぞや笑顔がまぶしいかと思ったら、そうではなかった。むしろ顔をしかめながら周囲と話をしているのだ。正直、そのキモはよくわかりませんでした。勝って兜の、という雰囲気でもなかったし、何かに不満を抱いているようですらあったし、安堵というわけでもなかったし、実に複雑な表情になっていたのである。

 まあ、どんな心境だったかはこの際関係ない。明日からやってくる瓜生とか今村とか桐生とかを真っ向から迎え撃たなければならない、その筆頭はやはりこの人だろう。明日は勝って爽快な笑顔を!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)