BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル1st第2戦ダイジェスト

田村、散る。

 

11R 進入順

①田村隆信(徳島)F+01

②池田浩二(愛知)06

③丸岡正典(大阪)05

④茅原悠紀(岡山)11

⑥瓜生正義(福岡)13

⑤桐生順平(埼玉)17

 

田村隆信が勝負師らしい“最期”を遂げた。スタートをメイチ張り込んでフライング、欠場。スリット写真を見る限り、数センチ~十数センチ程度のはみ出しだったと思う。

 スタンドのモニターに「返還①」の文字が浮かび上がった瞬間、あちこちから悲鳴のような声が響き渡った。私の前にいたオッサンは「バッカヤローー!!」と叫んで、手の中に丸めていた出走表をスチール製の手すりに叩きつけた。田村のファンというより、出来上がりつつある1-3-2の舟券を大量に買っていたように見えた。

 

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 その直後、今度は隣にいたオッサンが「仕方ないよ、1着勝負だろ、仕方ないよ」と誰に言うともなく呟いた。同感。いつものことではあるが、私は勝負駆けのフライングを責めない。この勇み足で、田村は早々にF2持ちとなった。3/14から60日間のF休みとなり、さらにそれから3カ月間GI、GⅡから除外される。来年の賞金王争いを考えれば、絶望的な境遇に立たされた。もちろん、田村はそれだけの覚悟を持ってキワまで踏み込んだ。その決意と行動を、私は否定したくない。絶賛もしないけれど。

 

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 田村がピットに帰還し、押し出されるように丸岡正典が先頭に立った。2番手は池田浩二で、ほぼ紛れのないレースになった。ただ、道中の3着争いで、茅原が瓜生を追い抜いたシーンだけが印象に残る。昨日は強ツケマイを浴びせて、瓜生を崖っぷちに追い込んだ。下関チャレカの直接対決では全速差しで抜き、一度は抜き返されたが、再び全速差しで抜き去った。相手が瓜生だっただけに、これらの逆転劇のインパクトは鮮烈に過ぎる。今、いちばん道中で目が離せない選手。それは茅原悠紀を置いて他にない。

 

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 そしてそして、桐生70号機はまったく火を噴くことなくグランプリ戦線から離脱した。仲口53号機と合わせて、平和島のWモンスターがあえなく失墜したことは、本当に残念でならない。せめて桐生には、しっかりと70号機の素性を引き出して、シリーズの主役として活躍してほしい。

 

明日への切り返し

 

12R

①毒島 誠(群馬) 06

②今村 豊(山口) 08

③石野貴之(大阪) 15

④井口佳典(三重) 12

⑤欠場

⑥今垣光太郎(福井)21

 

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 仲口53号機、欠場。今朝、この情報を聞いたとき、私は自分でも驚くほどガッカリした。7月からこの怪物モーターを見続け、グランプリでの比類なき強さを夢に描いていた。これほどひとつのエンジンに肩入れしたのは、私の20年ほどのボート歴でも初めてのことだった。さらに、9月を過ぎてから70号機がグングン成長し、「どちらが真のモンスターか、グランプリ優勝戦で白黒が付く」と勝手に思い込んでいた。機力だけで勝負は決まらない、「選手7、機力3」程度だ。そうは知りつつ、私はエンジンばかりに傾倒していた。そんな熱にうなされるような半年間の夢が、今日のふたつのトライアルではっきり終わった。この心にぽっかり穴が空いたような空虚感は、いったいなんなんだろう。

 

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 レースの話だ。毒島誠は今日も強かった。イン逃げ圧勝。走破タイムは異次元レベルの1分44秒5。ただ、これをもって「毒島=節イチ」じゃないのだな。毒島は周回展示でもひとり旅でも、己の限界に挑戦するように全力全速で走り続ける。しかも、最近のターンスピードはボート界屈指でもある。毒島の猛烈なレースタイムを見て、その機力を過信してはならない。

 

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 2番手は、「勝負駆けに強い」と自ら公言した石野貴之がしっかりキープした。この着順を守りきれば、確定ではないがベスト12へ大きく前進する。熾烈を極めたのが3着争いだ。ガチンコ勝負駆けの井口VS今村に今垣も絡み、ベスト12争いは混沌となった。そして、すでに絶望的な立場の今垣が激しい切り返しなどで嫌味を付け、ついに3番手を獲りきった。周囲の空気なんか絶対に読まない。これが光ちゃん流の平常心だ。で、今垣-井口-今村の態勢になりつつあったのだが、このままだと井口が脱落して今村が生き残ることになる。井口はそれをハッキリ分かっていたのだろう。凄まじい気迫で今垣を追い回し、最終ターンマークは全速にも近い切り返しで今垣を外に跳ね除けた。道中でこれだけの“奇襲”を繰り出す井口、はじめて見たかも。

 

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 で、この競りの間に、3艇身ほど後ろにいたミスター今村も息を吹き返した。渾身の差しを入れる。一瞬、届きそうにも見えたが、井口に半艇身だけ及ばなかった。さらに、ゴール直前、井口が今村に艇を被せるようにして内に斜行した。直進しても先着は揺るぎない態勢だったのに……これがトライアルの気迫である。3着・井口、4着・今村で、井口のベスト12入りが確定した。ミスターは石野と②④着で並んだものの、タイム差で次点に甘んじた。「今後も来れるかどうかわからない」と決意をあらわにしたミスターだったが、わずか半艇身だけ最高の舞台に届かなかった。残念!!(photos/シギー中尾、text/畠山)

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