BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@シリーズ――淡々と

 

 

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 自覚しているけど、ここで前本泰和に触れることは少ない。というのは、決して派手な動きや表情の変化を見せないタイプだからだ。地味と言ってしまうと失礼にあたるのだけれども、僕の印象としては「周囲に惑わされず、とにかく自分のやるべきことを淡々とこなす」。レース後にしても、感情をストレートに表に出すのではなく、勝っても負けても静かに己と向き合うという感じだ。

 2R、前本は1着。吉川元浩が強烈なまくり差しを放ってきたが、2コースから巧みに差して残し、バックで舳先をかけて、2マークで押し切っている。前本らしいテクニカルなレースだったし、また激しさも感じさせる攻防だった。

 それでも、ピットに上がってきた前本は、まったくもって淡々としているのみ、だった。中国勢とともにエンジン吊りをこなし、静かにみんなに礼を言って、まるで変わらない足取りで控室に戻っていく。これぞ前本泰和。こうした部分が彼の強さだろう。

 あ、ひとつだけみんなと違う動きがあるんだった。展示から戻ってもカポックと勝負服を脱がない。ほとんどの選手が、展示後はいったんカポックと勝負服を脱いで待機しているものだが、前本は着たままなのだ。2R展示後ももちろん黒の勝負服を着てました。

 

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 そういえば、1Rを勝った新田雄史も、淡々とした雰囲気だったな。勝っても準優には届かない可能性も高いとはいえ、ようやく出た白星に、もっと弾んだ雰囲気でもおかしくないと思っていたのだが。もっとも、新田も極端に感情をあらわにするタイプではない。勝ったあとなどは喜びが見える表情になったりはするのだけれど、大きく笑ったり、周囲とハイタッチしたりというのは見た記憶がない。師匠の井口佳典が出迎えに来て喜んでるのは何度か見たけど。

 エンジン吊りを終えた新田は、戦った各選手のもとに小走りで歩み寄って、頭を下げていた。これはレース後の儀式のひとつではあるが、その様子もやけに淡々として見えた。これもまた新田の強さ? 今年のSGではいまひとつ元気のない成績が続いただけに、来年は(もちろん今節も)ハツラツとした新田雄史が見たいところではあります。

 

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 で、西山貴浩だって、淡々とするときはあるのである。西山といえば、言わずと知れた、エンターテイナー。開会式も魅せてくれましたね。ピットでもサービス精神は旺盛で、顔を合わせればなんか一言残しては、こちらを笑わせようとする。それはどんな舞台であっても変わらない。だが、レース前となれば違う。

 写真は、3Rの展示準備に向かう西山である。カメラを向けても視線を送らず(ふだんはピースしたりする)、ただ自分の世界に入って、淡々と歩んでいる。頭のなかには戦略が渦巻いている? 想定すべきレース展開が映っているだろうか。SGに出てくるほどの強豪レーサーなのである。当然、こうした顔を見せるときもあるのである。

 今日は勝負駆け。前半4着で、後半はピン勝負か。勝負師・西山貴浩の顔を見せてくれ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)