BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@グランプリ――悔恨の表情

 

 

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 池田浩二がここまで窮地に追い込まれるとは。2戦続けての5号艇。枠番的には有利ではない。しかし、今日はまさかの6着。2走で10点止まりである。

 さすがに池田は悔しそうだった。常滑ダービー優勝戦後のような、怖いくらいの雰囲気ではない。むしろ、周囲におどけまくって悔しさを紛らわせようとしている、という感じだ。なぜか中野次郎に凄んでみたり。もちろん、池田の目は笑っていて、次郎は「まったくもう……」という感じで、池田から逃げようとしていた。カポックを脱ぐ際にも、苦笑いを周囲に見せるようにして浮かべている。がぁぁぁっと天を仰ぐのも、どこかおどけている感じだ。まだ戦いは終わってはいない。望みはまだあるという段階だから、こうなるのだろう。それが池田浩二、ではある。

 ただ、枠番抽選では本音がちょっとだけ出ていた。6着だから抽選はラスト。つまり抽選というより、残り物に福を祈る立場である。すると、最後に残ったのは緑。6号艇を強いられることになってしまったのだ。別項にあるとおり、10点では1着で相手待ちという状況である。その戦いを、6号艇で臨まねばならなくなったのだ。さすがに池田の表情が少し憤ったものとなった。もちろん苦笑いも浮かべている。周囲にはそれを見せている。だが、「マジかよ(怒)」の感情がちょっとだけ勝ったか。池田の顔つきは、明らかに変わっていた。

 さあ、明日の11R、池田は何を魅せてくれるだろうか。このままでは終わらせない、そんな思いが強ければ、僕らが想像する以上の池田浩二を表現するのではないか、と期待したくなるのだが……。

 

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 菊地孝平も、池田浩二ほどではないが、追い込まれた状況である。ここまでの2戦を好枠で戦いながら、活かせなかったのだ。菊地が見せた表情は、呆然、だろうか。完全に硬直した表情となり、周囲が目に入っていないといった感じだ。レース前にも、己の世界に入り込む菊地モードを見せるわけだが、それとはまるで違った没入感。こんなはずではなかった、というような悔いを、濃厚に漂わせていたのである。

 枠番抽選会で、そんな雰囲気はさらに際立った。穏やかに微笑を浮かべる太田和美、好枠を引き当てたいと気合が入る井口佳典、慣れたもんだとばかりに余裕の表情の松井繁、など、それぞれが抽選に向けての雰囲気を漂わせるなか、菊地はまだレースを反芻しているかのように、表情をカタくしていたのだ。これから行なわれる抽選よりも、すでに終わったレースに意識を飛ばしている、というか。問題は、それをどのような形で闘志に変換できるか、であろう。聡明な男だけに、そのあたりはしっかり切り替えるとは思うのだが。

 

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 呆然というなら、毒島誠と茅原悠紀も同様だったかもしれない。毒島は今日も昨日と同様の悔しがり方をしており、茅原もレース後の表情は相当に深刻だった。今日は二人とも舟券絡みを外した。トライアルを席巻し……いや、このところのボート界を席巻し、のほうが正しいか、ともあれ話題の的だったスピードターンの勢いも、一時停止となってしまった格好である。修羅場を山ほどくぐってきた先輩たちのスゴ技は、彼らから表情を奪った。グランプリの厳しさを改めて痛感した、というところだろうか。

 

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 枠番抽選では、茅原の表情が好転している。1号艇を引いたのだ。顔つきが一気に力強くなった! 6号艇を引いた昨日は、「このなかではいちばん若いので、コースを動くなんてことはできません(笑)。それに、コースはどこでもいいと思ってました」と語っていたが、やはり1号艇が欲しいのが本音! 明日はインからどんな異次元ターンを見せてくれるのか。あるいは、それでもグランプリの過酷さを思い知らされてしまうのか。注目したい。

 

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 得点トップに立ったのは白井英治だ! 連勝! ピンピン! 最高のかたちでトライアル2走を終え、早々とファイナル行き当確となっている。こういうときの白井の表情は、充実感いっぱい。柔らかいし、穏やかだし、気分の良さがストレートにあらわれている。

 ただ、兜の緒も決して緩めていないのも確かだ。誰よりも後悔を噛み締め、この夏、ついに思いが報われた。それによって、白井のなかで新たに芽生えたものもあるだろう。もはや、以前の白井英治ではない、と思う。

 ならば、どうですか、完全優勝狙うってのは。

 明日は4号艇を引き、白井はこう言った。

「これぞボートレースというレースを見せたい」

 まさか3号艇に行かせて最内差し、ではないだろう。それが現代ボートレースのセオリーではあるけれども。白井がそう言うからには、カドから攻める! 弾き飛ばされるリスクはあるが、決まればパーフェクトへの道も開けるだろう。

 8月、白井には大きな感動をもらった。もし、明日の白井が公約通りの「これぞボートレースというレース」を見せてくれたら、僕はまた巨大な感動に酔いしれるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)