BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット@クライマックス――明日も頑張れ!

 

 

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 ピットに緊張が走った。ボートリフトは2マークの目の前にある。賞金王もそうだが、大一番をここで観戦しようというシリーズ組も多い。今日も何人かの選手が、ここでレースを注目していた。つまり、2マークの攻防を間近で見た。

 一瞬、何が起こったのかはよくわからなかった。完全に把握したのは、寺田千恵が天から降ってくるようにして、真っ逆さまに落ちていったときだ。もちろん、海野ゆかりも水口由紀も小野生奈も、その容体は気にかかったが、その瞬間にいちばん大きく水面に投げ出されたように見えたのは寺田である。レース後の寺田は転覆整備にも出てきていたが、やはり顔色は冴えなかった。

 

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 ピットに「選手負傷の模様」とのアナウンスが走り、空気がぐっと重苦しくなる。まずレスキューで運ばれたのは寺田と水口だったが、寺田が自力でレスキューを降りたのに対し、水口は担架で運ばれているように遠くからは見えたから、今年の女王のほうが「負傷の模様」に当てはまるのだとわかって、次には誰もが水口の身を案じた。

 水口は、12R直前に整備室に向かうために姿をあらわしており、まずは誰もが胸をなでおろしている。しかし、枠番抽選の際での顔色はやはり冴えない。0点発進という苦境に対してというより、落水自体へのショックが大きいように思えた。

 

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 寺田と水口は救護室前にレスキューで移送されているが、エンスト失格だった小野は、ボートリフトからピットに戻っている。レスキューを降りると、小野は小走りで控室のほうに向かった。4人のなかではもっとも安心できるレース後の様子だ。しかし、顔つきは相当にカタい。元気者の小野が見せたことがないような、深刻な表情である。あれだけの事故の直後には当然か。むしろメンタルが気がかりに思えた。

 

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 メンタルでいえば、もっとも痛手を負ったのは、妨害失格となった海野だろう。妨害失格ということは、あの事故の原因を作ったと判定されたのである。マイナス10点という大きすぎる減点のことが海野の頭にあったとは思えない。ただただ事故を起こしてしまった自分を責め、苦しい思いに苛まれているのではないかと思う。

 枠番抽選の場では、水口や寺田を気遣う姿も海野は見せていた。水口が三国で女王戴冠を果たしたとき、もっとも喜んでいたのは海野である。まさに盟友なのだ。その水口を傷つけてしまったという後ろめたさは、ただただ哀しい。やはり、減点で女王の座が絶望的になったことなど、今の海野は考えられないのではないか。

 そんな事故がありながら、4人は明日の出走表に名を刻んだ。枠番抽選には全員が参加し、明日も出走すると決めたのである。だから、今夜はただただ体を休め、心も休めてほしい。事故は事故として反省し、明日からもまた元気に戦う姿を見せてほしい。明日からの彼女たちの健闘を心から祈る。苦境からまた立ち上がって戦いに向かう姿勢を見せることが、ファンにとっては勇気につながることがあるのだ。がんばれ!

 

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 12Rは正反対というか、順当な結果だった。平山智加が逃げ切り、2番手争いを平高奈菜と三浦永理が演じて、平高がしのぎ切った。レース後、控室へ戻る際にそのスリーショットがあったのだが、3人とも笑顔で健闘をたたえ合っていたし、3人ともそれなりの手応えを得た初戦となったようだった。

 平高にとっては、実に大きい2着のようだ。「足は12人でいちばん弱い」という状況で、2着を獲り切ったのだ。「三浦さんのほうが圧倒的に良かった」と競った相手とのパワー差も感じたようで、足合わせすら「誰とやっても負けるので、出るのがつらい」とのことである。

 でも、レースで勝てばいいんです! ひとまず9点をゲットしたことで、優出争いのメドは立てることができた。それもあってか、平高からは決して悲壮感はうかがえない。逆に、完全に足負けしていながらも競り勝ったことは、平高のテンションを上げることだろう。足色だけで平高を軽視してはならない。もともと気持ちで走るタイプ、明日も彼女らしい激烈なレースが炸裂してもまったくおかしくない。

 

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 それにしても! 平山智加のこのガラポン巧者ぶりは何なんだ! 枠番抽選運という言葉では片づけられないぞ。そう、平山はまたまた白球を出した。初戦1号艇で登場し、2連続で1号艇をゲットし、優勝戦も1号艇で快勝した昨年の芦屋。今年も同じパターンか!? 芦屋のVTRを我々は見ることになるのか!? 平山が白球を出した瞬間、抽選会場は大きくどよめいた。「なんで? なんで」と平山自身が訝しがる、この白球ラッシュ。平高が「大村からじゃん!」と野次を飛ばし、記憶が呼びさまされた。第1回の大村、トライアル第3戦で平山は1号艇を引き当てていたのだ。つまり、抽選4回連続で白! どえらいことである。

 もちろん、明日の12Rは平山がふたたび逃げ切るかどうか、が大きな焦点である。何はともあれ、まずはレースが見どころである。その後に、もうひとつ見どころができた。明日、平山はどの色を出すのか。何色が出ても、盛り上がり必至ですよね。また白が出て「うおぉぉぉっ!」となるのか、違う色が出て「あぁぁぁ~~~~」となるのか、どちらにしても抽選会場は騒然となるだろう。JLCの中継などをぜひご注目ください!

 

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 あ、抽選では日高逸子が2号艇を引き、満足そうに「う~ん。うんうん」とうなずいているのが実にかわいらしかったです。日高は11R後の会見で、6号艇は嫌だと宣言していた。そんなこと言ったあとに限って緑を出しちゃう、ってのはありがちですよね。だから、本当は白がいいに決まってるけど、それに次ぐ色である白が出てホッとした様子。気分良く、第2戦に向かえそうだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)