BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@クライマックス――節イチ!

 

 

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 足色とは別の話である。ピットで見る限り、節イチは鎌倉涼だ! 地元クイーンズクライマックスに、特別な思いを抱いて臨んでいるのは当たり前。それは戦前から予想できていたことである。それを鎌倉は、存分に表現している! 足色とか枠番とかまったく無視するとするなら、僕は明日の優勝戦は鎌倉で大勝負する。

 鎌倉は今日、ギアケースを交換して臨んでいる。これは「ちょっと欲を出した」交換だったという。決して悪い足色ではないが、さらに上を求めた。ギアケースだから、交換して良くなければ元のギアケースに戻すだけ。そこで鎌倉は、欲を出した。この部分が、特別な大舞台で大事なのだと僕は思っている。“いつも通り”では通用し切れない舞台もあるはずなのだ。そして、これが奏功した。鎌倉の足はさらに上向いたそうだ。

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 そのうえで、鎌倉はギリギリまでペラ調整をしている。展示ピットにボートを移さなければならないギリギリの時間まで、ペラ室にいたのだ。ちょうどペラ室から出る鎌倉とすれ違ったのだが、あのプリティ涼ちゃんが、あんたは王者かと言いたくなるほどの凄味を発散させていた。思わず飛びのいて道を開けたくらいだ。

 

 そして鎌倉は、自分は2コース差しが苦手だから、まくるしかないと決め打ちして臨んだという。ここ一番で2コースまくりが多いことは、新概念データ使いとしてももちろん知ってはいるが、ハナからそれしか考えていなかったとは、その腹の据え方がすごい。それがあのスタートであり(テラッチはコンマ14だから、別に遅れたわけではない!)、迷いのない外マイである。

 メンタルは仕上がり切っている。文句なしだ。もちろんそれが結果に直結するわけではないのが勝負の世界。鎌倉が勝つとは断言しない。ただ、大仕事を成し遂げる雰囲気は間違いなくある。大晦日のヒロインになれるムードが、たしかに鎌倉からは漂っているのだ。

 

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 あ、そういう鎌倉の気合を感じているからかどうかはわからないが、平高奈菜が「涼ちゃんが引きたいなら、引いてもらってもいいです」と笑っていた。本来は平高自身が徹底攻撃型。今日のシンガリ負けでちょっとテンションが下がっていたのもあると思われるが、鎌倉を3カドに引かせて、その展開を突くという作戦も頭にあるのかもしれない。2014年ボートレース界流行語大賞にノミネート確実の「3カド」が今年最後の最後で見られるかも!? もっとも、平高のことだ、明日になれば自力でぶち抜く決意を固めているかもしれないが。とにかく今日は、落胆し、意気下がっている様子の平高なのであった。

 

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 テンション下がり気味というなら、平山智加にもそれを感じずにはいられない。平山がそう言ったわけではない。本音を耳にしたわけではない。だが、今日逃げ切って明日も逃げ切り完全優勝という青写真を、平山は確実に描いていたはずである。

 だって、会見にあらわれた平山は、どう見たって、不機嫌そうに見えたもの。平山の人柄だから、質問にはひとつひとつ丁寧に応え、決して投げやりな態度やいい加減な受け答えはしなかった。それでも僕は、平山が落胆やら憤りやら強い悔恨やらが入り交じった思いを抱いているようにしか見えなかった。特に、1号艇で臨む優勝戦と2号艇で臨む優勝戦の違い、という質問が出たとき、突如それまで以上に饒舌になったあたりに、計算が狂ってしまったことへのやるせなさが強くあらわれていたように思った。誠実な平山智加は大好きである。だがハッキリ言って、勝負師の激しさを見せる平山はもっと大好きだ。その本音らしき部分に、平山の強さの本当の秘密を見たような思いになれるからだ。

 

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 本音といえば、日高逸子の本音って何なんでしょうね?

「明日は奇跡が起こればいいですね」

 意気込みを聞かれてそう答えたのだが、1号艇で、優出メンバーの全員が「日高さんの足が抜けている」と答え、ここまでオール2連対の強さを見せている日高逸子が勝つことを、奇跡と言うのでしょうか。「ここまで来たのが奇跡のようなものだから」とも付け加えていたが、3枠2枠2枠で、誰もが「日高さんが出ている」と証言して、そもそもが実力者である日高逸子の優勝戦1号艇ゲットも、奇跡とは言わないだろう。

 今節の日高からは、とにかく気分の良さが伝わってきていた。モーターの気配が選手の気分を上下させるということは理解しているが、それを改めて知らされた思いになったほどだ。それは、優勝戦1号艇が決まった今日のレース後にも変わらない。だからこそ、日高の奇跡発言は謎なのである。そういえば、瓜生正義の発言もこれに近いなあ。

 その謎の探索は別の機会にするとして、間違いなくティアラにもっとも近いのが日高逸子だ。優勝戦は1号艇にそびえ立つ日高に、やまと世代が5人、束になって挑むという構図となっている。興味深いメンバー構成になりましたよね。日高がグレートマザーの底力を発揮するのか、若者たちが世代交代を迫るのか。そんな角度からも面白そうな優勝戦である。ほんと、どんな“奇跡”が大晦日に起こるのだろうか。

 

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 おっと、締めみたいな感じになってしまったが、6号艇2連発の三浦永理と、6号艇3連発の守屋美穂が優出! これはたいしたものである。失格4艇のトライアル初戦があって、ボーダーがやや下がったという部分はあるにせよ、イン優勢の住之江で不利枠ばかりを手にしながら、頂上決戦にたどり着いたことには拍手を送るべきだ。

 三浦は今日、スローに入ることをハナから決めていて、だから多くの選手が「伸びは三浦さんがいい」と言っていた足色を出足型に変えて臨んだそうだ。明日も外枠は外枠だが、出足型にした感じがもうひとつだったそうで、伸び型に戻して優勝戦に臨むそうだ。守屋は「伸びを中心に、足はいいです」とのこと。外枠に伸びる選手がいるぞ! 住之江だからといって、侮ってはいけない。雰囲気的には守屋に何かを感じるのだがどうだろう。6号艇に岡山支部が入って、1週間前のことが頭をよぎってるだけ? 今節の守屋は、今日の11R4着の後であっても、非常に前向きな何かを感じさせられる。自信、と見ているのだが、果たして。

 

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 最後に、海野ゆかり、あんたは凄い! 初日の時点で優出が絶望だった海野が、トライアル最終戦を強烈すぎるまくりで締めたのである。意地を見せてもらいました。勝負駆けの選手に注目が集まるような場面で、勝負駆けが関係なくなってしまった者が見せる激勝がよくある。そこに僕は、レーサーとしてのプライドを感じずにはおれないのだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)