BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル第3戦ダイジェスト

僅差の明暗

 

11R

①寺田千恵(岡山)14

②鎌倉 涼(大阪)04

③小野生奈(福岡)02

④岸 恵子(徳島)06

⑤永井聖美(愛知)06

⑥守屋美穂(岡山)09

 

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 スリットラインを通過した瞬間、鎌倉だ! と確信した。インの寺田千恵だけが凹んでいる。とりわけテラッチが遅かったわけではない。コンマ14は、すでに勝負付けが済んだ選手としては奮発した方だろう。だが、すべて勝負駆けだった他の5人の気合が、テラッチのそれを圧倒した。鎌倉涼04、小野生奈02!!……もちろん、先に仕掛けたのは2コースの鎌倉だ。ギアケースを換えて、課題の伸び足もきたのだろう。テラッチをぐんぐん置き去りにして、難なくまくりきった。圧勝、当確。

 

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 バック直線での焦点は、2着以下=ファイナル進出争いに絞られた。2番手を走っているのは、伏兵の永井聖美だった。昨日、3番手からズルズル5着まで後退した永井は、ピストン2個、リング4本などほぼ全取っ替えでこの一戦に臨んだ。おそらく、それが功を奏した。小野生奈、守屋美穂が必死に追いすがるが、逆転を許しそうな足色ではない。昨日より、はるかにしっかりと水を噛んでいた。2着、トータル18点でフィニッシュ。ボーダーを20点と読んでいた私は、「健闘はしたけど、お疲れさんだな」と勝手に決めつけていた。が、実はそうではなかったのだ。

 

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 3着は生奈。コンマ02の電撃Sから、死力を尽くして戦った。結果的に2着でゴールすればその時点で当確だったのだが、あと一歩及ばなかった。ただ、「惜しかった」という言葉は、彼女には必要ないだろう。去年より今年、今年より来年。一足飛びに強くなってゆく生奈は、前だけを見つめていればいい。

 

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 4着は守屋美穂。3戦連続6号艇という最悪の境遇で、434着。粘り強く着を拾い続けた。そして、とりあえずはその苦労が報われた。19点でファイナル当確を決定付けたのだ。くじ運の悪さも含め、明日は4戦連続の6号艇になるわけだが、「チャレカで12位滑り込み→ファイナル6位滑り込み」という妖しい流れは馬鹿にできない。岡山支部の6号艇。開会式での「私も茅原さんに続けるよう、しっかり走りたいと思います」という言葉が、不気味な響きを帯びてきた。

 5着は岸恵子。今節の岸は、まったく目立つことなくトライアルを終えた。それでもなんとか18点を獲得したのだが、永井と同じ256着で持ちタイムは永井が上位。この時点で、岸のファイナルの可能性はほぼ消失した。一方の永井は、「12Rの三浦永理が4着以下なら当選」という微妙な結果待ちとなった。

 

白と黒の狭間

 

12R 進入順

①平山智加(香川) 10

②日高逸子(福岡) 16

⑥三浦永理(静岡) 16

③海野ゆかり(広島)05

④水口由紀(滋賀) 17

⑤平高奈菜(香川) 18

 

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 11Rの結果を踏まえて、平山、日高、鎌倉、平高、守屋の5人に実質的な当確ランプが点った。残る1議席は三浦か、永井か。このレースのファイナル勝負駆けは、三浦永理だけだった。その三浦が、動いた。

「枠番抽選の不公平は、私が正す!!」

 そんな怒りすら感じるような激しい前付けだった。まあ、本人は単にガチの勝負駆けだから動いたのだが。そうはさせじ、と水口由紀、平高奈菜が敢然とブロックした。今節、はじめての熾烈な進入争いに、スタンド2マーク側のファンは騒然となった。

「こんな進入を見たかったんやーー!!」

 後ろのオッサンが叫んだ。平山をしこたま買っているファンには厄介な前付けだろうが、私も深く頷いた。これがあってこその「競艇」じゃないか。

 

 

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 さらに、徹底抗戦した水口・平高が「これでは深い」とばかりに回り直した。この熾烈なコース争いで、誰がいちばん有利になったか。明らかに、海野ゆかりだった。外枠3艇がゴリゴリやり合う中、海野だけがゆったりと艇を流していた。単騎がましでもOK、という構えだ。そこに、2艇が回り直して自分の外に就いた。内3艇は横並びでぐんぐん深くなる。逆に、海野は艇を翻す。絶好すぎる4カド。スタートさえ決めれば、相手が松井繁でもまくりきれる隊形だ。

 

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 海野は行った。コンマ05。すでにファイナルの目は逸しているのに、この気合、この度胸。日高にしろ山川にしろ、長きに渡って女子のトップレベルに君臨する女傑たちは、このあたりがヤバイ。イン平山智加は昨日と同じコンマ10だったが、そのはるか上を海野が通過して行った。スタートは同じでも、起こしの隊形&スリット隊形が昨日とは違いすぎた。こうなっては、逆らいようがないのだ。平山は、昔ながらの「競艇」の餌食になった。

 ただ、平山の戦いは終わらない。海野にまくられても、明日のファイナル1号艇争いはまったく違うところにある。たとえ5着でも、日高にさえ先着すれば明日は1号艇なのだ。それを本人がどこまで意識していたか定かではないが、その1号艇争いはあっけなくケリが付いた。海野にまくられた日高が、迷うことなく全速で平山の上を行った。その判断と実行の早さは、日高の方も「平山にさえ先着すれば!」という強い意識があったのではないか。いや、あったと思う。まくられてからのあの切り替えの早さは、明らかに攻撃のターゲットを平山に絞っていた。そうとしか思えない。

 

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 昨晩、私と黒須田は「平山5着、日高6着でも平山1号艇。だから、平山は日高完封に専念する」という勝手な推論で大いに盛り上がった。が、そこには大きな見落としがあった。日高も、それだけを考えていたのだ。きっと。その推論の正否はともかく、平山VS日高の1号艇争奪戦は、外から攻めきった日高に軍配が上がった。

 もちろん、これで白黒が決するわけもない。明日は枠番を交代しての直接対決・第2弾。明日こそは、お互いにただひたすら1着だけを目指すガチンコの真剣勝負なのである。(photos/11Rシギー中尾、12Rチャーリー池上、text/畠山)