侘び状
11Rシリーズ優勝戦
①中谷朋子(兵庫) 10
②山川美由紀(香川)16
③遠藤エミ(滋賀) 16
④長島万記(静岡) 21
⑤松本晶恵(群馬) 17
⑥竹井奈美(福岡) 26
レース本番の10分ほど前、いきなり住之江の風が変わった。ほぼ無風から、強いホーム向かい風に。大凪だった水面に、白浪が立つほどの荒れ水面にもなった。めちゃくちゃ危険な変化だ。シリーズ優勝戦を控える6人は、すでにスタート展示を終えている。つまり、そこで把握したスタート勘はまったく役に立たない。選手たちは、どこまで的確に補正できるか。
中谷が、いちばん危ない。
私は確信を持ってそう思った。6人の中で唯一のF持ち。今節もコンマ30はじめ、軒並み20前後だった。そんな慎重に過ごしたシリーズの最後に、激変した風。追い風になるよりはマシだが、それでも正確に対応するのは難しすぎる。一方、2号艇の山川美由紀は「今節は菊地クンが降りてきた」と豪語するほどスタートが見えている。S勘バッチリなら、風の補正もしやすいはずだ。中谷としては「じゃあ、山川と同じ起こしで付いていけばいいのか」と言うと、それでは全速スタート&行き足強烈な山川の餌食になるだろう。まさに、絶体絶命のピンチ。
中谷の優勝はない。
昨日から勝手にそう思い続けていた私は、さらにその意を強くした。12Rの軍資金を何倍にも増やすべく、中谷飛ばしの舟券をしこたま買った。そして……。
レース本番の中谷のスタートは、見事すぎるコンマ10!! しかも、山川に付いて行くどころか、それよりもコンマ06も早い断然のトップSだった。この瞬間、私の天邪鬼な舟券は、すべて紙屑になったと言っていい。外から誰も攻められない隊形から、中谷は1マークを豪快に回った。向かい風で、ガッチリとサイドが掛かる。そこからヒュン!とさらに前に進む。いや、今日のそれはヒュンではなくビュッッ。さらに歯切れのいい音を立てて、他艇を置き去りにした。強かった。文句の付けようのない強い勝ち方だった。
おめでとう、中谷朋子。
なんて、今さら祝福できる立場じゃないな。今日だけでなく、「今節の中谷はスタートが慎重だから買いにくい。パワーもイマイチ」と初日から公言して、舟券も買わなかった私に祝福する資格はない。ただただ、今日は詫びるしかない。
中谷朋子さま、申し訳ありませんでした。間違いなくあなたは、シリーズでいちばん強かった、です!!(photos/シギー中尾、text/畠山)