BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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クイーンズクライマックス優勝戦 私的回顧

 

REGEND QEEN

 

12Rクイーンズクライマックス優勝戦

①日高逸子(福岡)01

②平山智加(香川)10

③鎌倉 涼(大阪)07

④平高奈菜(香川)09

⑤三浦永理(静岡)13

⑥守屋美穂(岡山)18

 

 クイーンを引いたのは、25年前に第2回のクイーン=女子王座を戴冠したグレートマザー日高逸子だった。いやあ、強かった。昼間の無風から一転して強いホーム向かい風に変わったというのに、コンマ01の電撃スタート。本人は「そこまで行ってたとは……ピットで後輩から01と聞いてのけぞりました」と振り返るが、運も実力のうち。四半世紀に渡って女子のトップに君臨し続けた“女レジェンド”ならではの、肝っ玉スタートと言えるだろう。私と同い年に男女揃って怪物級のレジェンドがいるなんて、ある意味ものすごい幸せ者だなあ、私は。

 

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 レースについては、このコンマ01がほぼすべてだったと思う。平山智加のコンマ10は過不足のないスタートだったが、到底マザーには届かない。と言うより、差しハンドルの初動が早すぎて1マークに接触して流れたようにも見えた。昨日の敗戦が、尾を引いていたか。

 地元での戴冠に燃える鎌倉涼の気迫は、余すところなく観衆に伝わった。コンマ07まで踏み込み、迷うことなく全速で平山の上を叩きに行った。もしも日高が平山と同体だったら、ふたりまとめて一撃で仕留めていただろう。だが、日高のコンマ01はここでも無敵だった。鎌倉の渾身のターンは、日高の艇尾を掠めて虚しく流れた。この瞬間に、黄金のティアラと賞金女王の座は日高逸子のものになった。平高奈菜や守屋美穂も猛追したが、節イチ級のパワーを脅かすことさえできなかった。

 

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 トライアルも含めて、勝者と敗者の分岐点はどこだったか。昨日の12R、平山VS日高の直接対決。これに尽きる。海野ゆかりにまくられた瞬間、日高は平山を叩きに行った。あの迅速にして激辛の「まくられまくり」で、トップと2位が入れ替わった。あのとき、海野のまくりを浴びて小回りの差しなどを選択していたら、平山を抜くことはできなかっただろう。三浦永理の気迫溢れる前付けも含めて、このレースが私にとってのダントツのベストバウトだった。

 

 

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「引退も考えたこともあった」

 勝利者インタビューで日高は静かにこう言った。どうやらそれは最近のことらしいが、、この勝利で再びねじり鉢巻を巻くことだろう。総理杯参戦はもちろんのこと、来年のクイクラの開催地は地元・福岡なのだ。ミスター今村豊が「中年の星」なら、グレートマザー日高は「熟女の星」? 私も含めた全国のオッサンオバサンのためにも、辞めてもらっては困る。通算2000勝、女子のSG参戦の最年長記録、宿敵・山川美由紀との通算V&賞金対決、枠なりばかりの女子戦への喝入れ、そして地元での連覇へ……さらなるレジェンドを築く要素は、まだ山ほどもあるのだ。(photos/シギー中尾、text/畠山)

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