BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――光ちゃん、めげるな!

 

 

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 なんともはや、ツイていない。ツキに見放され、思い切り足蹴にされて、水面に叩き落とされたようなものだろう。

 今垣光太郎、選手責任の出遅れ。9Rの1号艇は、昨日の選手責任転覆with不良航法の大減点を巻き返すはずの一戦だったのだが、起こそうとした瞬間にエンジンが止まった。再始動したときにはもう手遅れで、返還欠場となってしまったのである。

 今年は早くもGⅠ2V。実にいいリズムで最初のSGを迎えていた今垣。それが、大一番のはずのこの舞台で、一気に奈落に突き落とされたような格好になってしまった。今垣にはこういう星回りが少なくないような気がする……。

 言うまでもなく、その後のピットでの今垣は肩を落としていた。整備室では整備士さんたちと言葉を交わしながらモーターを点検していたが、その姿にも悲壮感が漂っている。整備室を出て報道陣に囲まれると、質問に言葉を返しながら何度も首を傾げていた。ちょっと見るに忍びないくらいの表情だった。

 残念なことに、負傷により途中帰郷となってしまった。最悪のかたちでSG初戦を終えなくてはならなくなってしまったのだ。今夜の今垣は、暗鬱な時間を過ごさなければならないだろう。おそらく何度もため息をつくはずだ。

 とはいえ、今垣はこれまでに何度もこうした苦境から這い上がり、ふたたび今垣光太郎らしい走りを見せてきた。これをまたバネにして、より激しく楽しいレースを見せてくれるだろう。オールスターで再会するのを楽しみにしていよう。笑顔の光ちゃんに会えるのを信じつつ、5月、大村に向かおう。

 

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 今節はじめて原田幸哉と話した。やっぱりこの人はSGにいてくれなければ困る。SGに足りないピースがようやくひとつはめ込まれた感じだ。

 興味深い話を聞いた。今、どの場でもエンジン差が大きくなっているのではないか、ということだ。新プロペラ制度が導入されてもうすぐ3年。選手たちもそれぞれに方向性を探し、それなりに手応えを掴んできているはずだが、しかしそうした部分では埋めきれないエンジン自体の差というものを感じるのだそうだ。また、他の選手もそれを口にしているという。現在4場で導入され、今後は全場で切り替えられていくことになる「出力低減モーター」はもっと差が激しいそうですよ。前節の常滑周年で、幸哉もそれを実感したという。尼崎の現状は常滑も含めた他場に比べればまだ差は小さいほうだというが、出ている選手との差を埋めるのはなかなかの難易度のようだ。

 しかし、「そんなことは関係なく、レースで魅了しなくてはいけないですよね」と口にするのが原田幸哉らしさ。そう、原田幸哉のレースとは、まさに見る者を楽しませ、気持ちを動かし、ワクワクさせるものではないか。今日は不本意な結果に終わってしまっているが、前半2Rは5カドから一気にまくっていって展開を作った。あれが原田幸哉だ!

「今節、あれをもう1回やりますよ!」

 そう宣言して幸哉は去って行ったが、ならば期待してその瞬間を待とうではないか。見逃し厳禁!

 

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 安達裕樹が好調だ。昨日は1走2着。今日は1走1着。10R、先マイする仲口博崇のふところに2コース差しをビシッと入れて、予選前半をオール2連対とした。過去3回のSG参戦では予選突破を果たせなかったが、今節はSG初準優に視界良好、であろう。

 

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 ピットに帰還した安達に駆け寄ったのは毒島誠。二人は92期の同期生である。かたや5年ぶりのSG、かたや今をときめくポイズンキラー。安達にとって毒島の活躍は刺激満点であろうし、毒島にとって安達の活躍はやはり刺激を受けるものであろう。嬉しそうに安達を祝福する毒島に、目を細める安達。安達にしてみれば、後輩の新田雄史がすでにSGウイナーとなっているのだから、追いかけるべき相手が身近に2人いるわけである。今節は彼らの存在に近づく大チャンス! このリズムを維持して、明日以降に臨みたいところだ。

 

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 ピットに戻った選手を出迎えたシーンといえば、11R2着の瓜生正義を太田和美が出迎えていた。このレースには近畿の選手が不在だったので、瓜生のエンジン吊りに参加しようとしたのだろう。まあ、不自然なシーンではない。

 で、太田、戻ってきた瓜生にいきなり口撃(笑)。

「なんや、あのスタートは!」

 瓜生のスタートタイミングはコンマ26。ひとりポッコリと凹んでいた。でも太田選手、F2になったばかりなんだから、仕方ないっすよ~。ニヤニヤしながら瓜生を責める太田を見ながらそう思っていたのだが、そこで太田のレースを思い出す。今日の前半、太田もフライングに散ってしまっている。だというのに、後半10Rはコンマ11! はい、モンスター、あなたには言う資格があります(笑)。

 

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 太田の愛がこもった口撃を受けて、瓜生はニッコニコで言葉を返していた。なんかいいシーンだったなあ。お二人とも、明日からもスタートには気をつけて、そのうえで太田らしい、瓜生らしい、レースを見せてくださいませ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)