BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――終盤が沸いた!

 

 

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 終盤のピットのハイライトは、何と言っても今村暢孝だ。

 5カドに引いてのあざやかすぎるまくり差し! ピットで観戦していた人たちはみな声をあげていたし、青山登さんは「ノブがこんなレースできるんだ!」と失礼なことを言っていた(笑)。青山さんももちろん感動したのである。

 マスターズ世代のベテランが見せた、若者のような勝ちっぷりに、出迎えた福岡勢の顔もほころぶ。今村はわりと淡々としているように見えたが、後輩たちに称えられ、ヘルメットをとるとさすがに笑顔がはじけた。

 

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 その笑顔がさらに深くなったのは、川﨑智幸が祝福したときだ。ノブさんが59期、川﨑は60期。同世代と言っていい二人が、弾んだ様子で語り合う。来年からマスターズ出場の川﨑にとっても、心ときめく一撃だったのだろう。川﨑のほうがむしろ喜んでいるように見えたくらいだ。

 それから今村は対戦した選手たちにレース後の仁義を切りに回ったのだが、それを実に嬉しそうに見守っていたのが松井繁だ。松井も声をかけようとしていたようだが、今村は気づかずに対戦相手たちの間を回っている。最後に馬場貴也に頭を下げたとき、田中信一郎が呼び止めて、今村を称えた。ここでノブさんスマイルがいっそう深くなる。それを見た松井は、もうたまらんという感じで今村に歩み寄った。そして、今村のトレードマークとも言える、親指をピンッと立てるサムアップポーズをノブさんに向けて呵々大笑! ノブさんも松井にサムアップで応えて、二人はおおいに笑い合った。グーッ!なシーンであった。

 

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 今村の激勝に心を弾ませたのは、ベテラン世代の面々だ。長きにわたってともにSGの舞台で戦い、時に激しく剣を交えてきた戦友たち。銀河系とかニュージェネとかがぐいぐい台頭してきた、いつしか彼らはSGでは登番がずっと上のほうになっているわけだが、だからこそ今村が見せたあの若々しいターンが、我がことのように嬉しかったのだろう。松井も川﨑も、後輩が勝ったとき以上の笑顔だったもんなあ。

 エンジン吊りが終わると、今村は控室へと歩み出したのだが、JLCのカメラやスチールのカメラマンが今村の姿を追った。今村はすべてのレンズに向かってグーッ! サムアップポーズを連発していた。その後ろを歩きながら、松井がまたまたグーッ! これ、流行るかもなあ。

 いや、さらに流行らせるには、明日もまたこのポーズをノブさんに連発してもらわねばなるまい。優出したら、きっとまたやってくれる! これをご覧になった皆さんも、ノブさんが優出を決めた瞬間、どこでレースを見ていようとグーッ!と親指を立ててください。

 

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 12R後もまた、ピットはおおいに盛り上がった。峰竜太の周りだ。というより、峰自身が盛り上がっていたというか。

「ゼロ台狙ってたよ~。これで11とかだったら悔しいな~って」

 峰のスタートタイミングはここまですべてゼロ台! そしてここはコンマ04! 予選オールゼロ台だ。そのへんの話をレース前に仲間たちとしていたのかもしれない。

 まあ、本当にそれを考えて走っていたのかは、よくわからない。峰のことだから、それをマジで狙っていたのかもしれないし、ちらりと頭にあった程度かもしれないし、それは何とも言えない。ひとつ言えるのは、本当に狙っていたのは逃げ切りのみ、であろう。なにしろ、峰は12Rを迎えた時点で予選突破当確ではなかった。大敗を喫すれば、予選落ちもありえたのだ。もちろん1号艇だから、有利な状況ではある。だが、スタートで遅れたりして外から叩かれれば、一気に後方に下がる危険性はある。つまり、ゼロ台かどうかはともかくスタートで遅れることは許されなかったし、何よりこの1号艇で取りこぼしはできなかったのだ。

 

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 というわけで、勝った照れ隠しか、安堵の思いを隠したか、そんな意味合いもあっただろうな、と思った次第。ちなみに、この結果を受けて予選トップが決まった深川真二は、ただただ笑顔で峰を見守り、淡々とエンジン吊りに加わっているだけだった。その周辺も、エンジン吊りの時点では深川にトップうんぬんを言及してはいなかった。まあ、智也が失敗した結果ということもあるから、そこで騒ぐ気にもなれなかったのかもしれない。

 そう、山崎智也は一時、予選トップ確定のようにも見えていたのだ。深川が11Rで4着に敗れており、これで智也は12R2着以上で予選トップに浮上するという状況だった。そして、バックでは2番手を走った! オールスターにつづいて智也が予選トップ、という局面が確実にあったのである。

 

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 しかし、握って攻めてバックで粘っていた石野貴之と併走状態でもあり、その石野と2マークで競り合うようなかたちになった。石野が外を握ろうとした気配を察したのか、智也が激しく牽制したのだ。これがかなりの大回りとなり、内を重成一人と谷村一哉がズブズブと差した。これで智也は4番手に後退。トップの座は手から零れ落ちたのだった。

 智也がどこまで深川との相関関係を把握していたかはわからないが、レース後の智也は憔悴したような表情を見せている。ひとつのミスターンで逆転を許したこと自体が、落胆を生むものでもあり、何よりそれが悔しかったということはおおいにありえるだろう。まあ、カッコいい自分でありたいという智也だから、SG2連続予選トップというカッコいい状況を逃してしまったことを本気で悔しがっていた可能性もあるけど。

 

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 カポック着脱場で石野と顔を合わせると、智也はすぐに歩み寄って、両手を合わせながら頭を下げた。石野を弾き飛ばすような格好になっており、石野は5番手まで後退しているから、それについて詫びたわけだ。もちろん、お互いに禍根は残らない。二人ともが、ただただ悔しい結果になっただけだ。

 いずれにしても、深川真二と山崎智也、71期の同期同士が予選ワンツーを決めた。順当に優出すれば、二人は初めてSG優勝戦で顔を合わせる。登番1番違いの同期生の真っ向勝負。あさって、その対決を見られるだろうか。

 

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 あ、ぜんぜん関係ないけど、最後に。西山貴浩がこんなことになりました。まあ、ここで落ち着くのかな、今節は。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)