BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――笑顔、溜め息、安堵、驚き

 

 

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 一昨日、松本晶恵と土屋千明のかわいらしい光景を見、昨日は同じ組み合わせの落胆した表情を見、そして今日はまた一昨日と同様、「土屋が話しかけ、松本がニコニコッと笑う」光景が見られた! 一日ごとに、松本のレース後の群馬コンビの表情がころころと変わる。今日は2コース差しで快勝だから、そりゃあ笑顔があふれる! やはりこっちの光景のほうが、見ているこちらも幸福感を味わえる。

 今日はそこに平山智加も加わっている。平山と松本は同期生。ピットでは絡みをたくさんたくさん見かける。お互いに、同支部以外ではもっとも多く絡んでいる間柄ではないかな。平山はその前に2着に終わった山川美由紀のエンジン吊りに参加し、それを終わらせてから松本に合流している。先輩の敗戦は悔しいが、しかし勝ったのが同期なのだからそちらも祝福したい。松本の笑顔に合わせて、平山もニコニコッと笑っていた。

 

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 レースは飛ぶが、意外だったのは、10R終了後に平山と平高奈菜の絡みが見られなかったことだ。10Rは香川ワンツーである。もちろん平山は自分が勝ちたかっただろうけれども、自分が勝てなかった場合の最高の結果なのである。で、平山自身はそれを実感しているのか、レース後は極めて穏やかな表情だった。松本と絡んだときのように、笑顔が柔らかかった。では平高は、というと、こちらは気持ちのいい勝ち方にもちろん爽快な表情! さまざまな選手に祝福されて、実は童顔な笑顔を満開にしていた。つまり、二人とも結果には一定以上の満足感を得ていたわけである。

 

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 だからこちらとしては、平山と平高のハイタッチ、みたいなシーンを期待していたのだが、完全に空振り。言っておくが、二人は仲いいっすよ。今日もレース前には係留所で話し合う姿を見ているし、BOATBoyではかつて対談もやっていて、お互いを尊敬しあっている様子がはっきりと伝わってきた。まあ、勝利者インタビューから戻ったあとの控室でハイタッチしていたかもしれないですけどね。僕的には、あえて快挙を喜び合うまでもない、信頼感が二人の間にはあるように思えた。ある意味、真のライバル関係とでもいうような。

 

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 8Rに戻ります。このレースでは、スタートの時点でピットに溜め息が充満した。谷川里江が後手を踏んだのだ。「あぁぁぁぁぁ~」と何人くらいが言ったんだろう。ドアが締め切られたペラ室からも聞こえてきたのだから、そこにいた全員がそう言っていたのかもしれない。

 

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 同じように溜め息が聞こえたのは、9Rの1マーク。細川裕子が差されたのだ。パワーは申し分なかっただけに、逃げ切り濃厚という見方も強かっただろう。中里優子がふところをたっぷり開いて渾身差しを突き刺した瞬間、声があがったというわけだ。中里は、同世代=70期・水口由紀や71期・岩崎芳美などと仲がいいわけだが、彼女たちはテンションを上げていたでしょうね。ピットでは細川への溜め息が優勢だったという次第である。

 

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 10Rは、ワタシのテンションが上がりました。日高逸子の3カド! そしてスリットでは(というより、そのだいぶ手前から)ワタシが溜め息をつきました。スタート行き切れなかったか~。しかし、さすがグレートマザーである。この人はやっぱり素晴らしい! 詳しくは畠山も書いているはずなので僕が書かないが、後輩たちはぜひこの人の戦う姿勢を学んでほしい。

 レース後は、珍しくと言っていいのかわからないが、かなり複雑な表情を見せていた。3カドに引いてのスタート遅れは恥ずかしい、と今垣光太郎が言っていたが、同じ気持ちだったか。結果が出なかったことも、不完全燃焼感を強くしていたかも。敗れたあとも、内心は悔しいに決まってるのに、わりと飄々としているイメージのある日高。だからこそ、勝負に出て実らずのモヤモヤを隠せない様子が印象に残ったのだった。

 

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 11Rは、あえて言えば、滝川真由子がピット離れでズッたときに「あら~」的な声はあったが(というか、僕も言った)、まあその程度であった。ただ、香川素子は強かったな~。それまでにインが負けまくっていただけに、予選トップの確固たる逃げ切りは、強さをより引き立てていたように思う。

 何レースころだったか、香川の耳にイヤホンがささっていたのを見かけた。今節はそんな香川を見た記憶がなかったから、予選トップで勝ち上がり戦に臨む今日は、とりわけ精神統一の必要があるのかな、と思ったりしたものだ。それを、緊張、と受け取るよりも僕は、気合、と感じた。もちろんいろいろな思いはあるだろうが、メンタルを万全に持っていくべく、己の世界を作っていたのだ。明日からはさらに重圧がかかる局面になってくるわけだが、それに怯まず立ち向かっていくだろうな、と思う。2年連続滋賀支部クイーン誕生。今日でけっこう確率が高くなったと思うが、どうか。

 

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 さて、準優進出戦のシステム、なかなかややこしいですよね。1~3着は問答無用の準優出だからわかりやすいが、問題は4着以下。その12人のなかで比較するのは「初日から4日目までの得点率」。つまり、準優進出戦の得点も計算に含まれる。3日目までなら、準優の枠番で判断できるが、進出戦も含まれるとなるともう、算数苦手なワタシはアップアップしながら計算することになる。幸い、資料が手元にあるので、どの選手が何着で得点率ナンボ、というのはわかるが、11Rを前にして「誰が何着なら、誰と誰が準優行きで、この人が何着なら誰と誰になるのか……」というのは、まるでわからんちんなのであった。

 資料とにらめっこしている我々でもそうなのだから、選手も同様だったと思う。11R、竹井奈美が6着に敗れた。なんたって6着である。得点は1点加算されるだけなのである。というか、シンガリ負けなのだから、準優への道は閉ざされたと思ってしまって当然。竹井のレース後の表情は実にカタく、大敗と進出戦敗退のダブルショックを受け止めているように思えたのだった。

 

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 だが、竹井は残っていたのである。4日間の竹井の得点率は5・20。池田紫乃、茶谷桜と同率だが、上位着順差で竹井が最上位。ここが準優のボーダーだったのである。実は報道陣も半ば自信が持てないまま「竹井だよね?」「たぶん」みたいな会話をあちこちでしており、竹井自身が準優進出と認識できているはずがないのであった。

 カポック脱ぎ場でリプレイを見ていた竹井に、その事実が伝えられると、竹井は目を丸くしている。そして、複雑な笑みを浮かべた。リプレイで大敗のまさにその場面を見ているわけだから悔しさは消えない。だが、予想だにしていない結果が知らされて、安堵の思いと「マジで!?」という驚きも浮かんだだろう。それらがごちゃ混ぜになったような笑顔。リプレイが終わり、報道陣に囲まれるとだんだん安堵が強くなっていったが、そう、このネガティブからポジティブへのドラスティックな転換は、かえってプラスになるのではないかと思った次第だ。去年も小野生奈が同様の結果で、同様の表情の変化を見せていたが、結果として優出である。今年も同じことが起きたりしないかな~。ちょっと注目してみよう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)