BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――激戦連発!

9R 地元のムードが盛り上がる!

 

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 真っ先にリフトに駆けつけた平山智加が、もろ手をあげて、出迎える。つづいた山川美由紀も、バンザイをするような格好で後輩を称えた。

 準優一発目で、地元・平高奈菜が1着! これは盛り上がらなければおかしいし、平山も山川も「次は自分たちだ」の思いを改めて強くしただろう。

 先輩二人に笑顔で応えた平高は、その後はやや淡々とした様子ではあった。勝って兜の緒を締めよ、というところだろうか。共同会見でも、粛々と言葉を連ねている。

 

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 笑顔があふれていたのは、むしろ中里優子だ。中里自身もそうだが、岩崎芳美、水口由紀、角ひとみといった、長くともに戦ってきた同世代の同志たちが、中里のレディチャン初優出に沸き立っていたのだ。岩崎と角は、こっそり共同会見に紛れ込んでたくらいだ(笑)。中里が何かを言うたびにウケていて、「乗ったからには優勝だけ目指す」と中里が締めると、「キャッハハー」と声をあげていた。岩崎も角も、中里の苦労を知っているだけに、晴れ舞台に駒を進めたことが嬉しかったのだろう。

 

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 一方、やはり西村歩はうなだれ気味だった。スリットから伸びていったときには、アタマまで見えていただろう。1周2マークで鋭く差したときには、優出が視界に入ったはずだ。しかし、終わってみればまさかの5着。ズルズルと下がっていく様子は、精神的なものではなかったかと裏読みしたくなったものだった。

 その西村を、寺田千恵がねぎらっていた。百戦錬磨のテラッチには、西村の気持ちが痛いほど理解できたはず。西村がレース後の挨拶で頭を下げたとき、テラッチは西村の腕をそっとつかんで、温かい目を向けていたのだった。この敗戦、そしてテラッチの気遣いがきっと糧になることだろう。

 

10R 細川の気合!

 

 

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 レースを終え、カポックを脱いだ細川裕子が、それを見つめていた永井聖美のもとに歩み寄った。

「やっぱり難しい」と細川は苦笑。永井はそれに対して首を小さく振りながら、「いいよいいよ!」と返していた。1マークでは大瀧明日香らの後塵を拝した細川。推測するに、2コースでの攻め方が難しい、だろうか。この1マークは、ただただ大瀧明日香の「その狭いところに突っ込むか!」というまくり差しが凄すぎた。永井としても、細川を責めるつもりにはなれなかったはずだ。

 その細川の、会見での振る舞いに震えましたぞ。言葉ひとつひとつがハキハキと力強いし、「(前回のレディチャン優出より)今回のほうが気楽ですね。失うものが何もないですから。何も怖くない」という「何があったんだ?」と思ってしまうほどの決意表明もあったりした。コースについても、やっぱり感じるものがあった。

「明日はすべてのチルトを試して、面白みがあるのなら、いちばんいいのを選びたい。伸びるのだったら、6コースでしょうね。ただ、ダメだったら跳ねずに、今日のセッティングにする」

 2番手を獲り切った足を見てわかるとおり、今日の足もすごいのである。それを方針転換する可能性を示したわけだから、本当に腹が据わっているし、優勝への意欲がビンビン伝わってくる! 明日の直前情報やスタート展示を要チェック。細川の動向がカギのひとつとなるのは間違いない。

 

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 大瀧明日香はレディチャン初優出。レース後は淡々としたものだったが、共同会見ではよく笑っていた。なにしろ第一声が「嬉しいです、ニャッハハハッ」なのだ。報道陣がずらり並ぶ会見場で、ひとり注視を浴びているのに戸惑っている様子であり、ニャッハハハッは照れ笑いのようなものだったが、ようするに初々しい、というわけなのである。あのすごいまくり差しを突き刺した人とは思えなかったのだが、結果的に明日は1号艇! 明日もニャハハハッと逃げ切ったりして。

 

11R 水の上では!

 

 

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 まずは滝川真由子の冷静なハンドル捌きには脱帽だ。1周2マークのことは畠山も書いているだろうが、よくぞあの場面で二人を行かせて差せたものだ。キャリアを考えたら、焦って接触していてもおかしくない場面だ。

「内からスピードが速く来ているのが見えたので、自分のタイミングでターンしようと思いました」

 この冷静さを優勝戦でも持っていられるのであれば、怖いぞ! コース獲りについて「難しいです。一晩考えます」とのことだが、方針さえ決まれば、腹を決めて、そして冷静に、自分のレースをすることだろう。

 

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 もうひとつのポイントは、何と言っても、山川美由紀と平山智加のせめぎ合いだ。水の上では先輩も後輩もない! ボートレースの真理のひとつを、二人は最高のかたちで表現した。拍手するしかない。

 敗れた平山は、とことん悔しそうだった。モーターとハンドルをつなぐワイヤーを外す際に、思い切り顔をしかめた。力をこめてネジを外す、という表情に見えなくもないが、むしろ力を込めたときに本音があらわれた、というべきだろう。カポック脱ぎ場では、ヘルメットを脱ぎながら、放心状態のような表情にもなっていた。新田芳美が慰めの言葉をかけたときには、眉根を寄せて、渋面を作って見せていた。その表情には、最高に色気があった。色気とは変な意味ではない。奥深くからあふれ漂ってくる、人間的な魅力(勝負師的な、と言ってもいい)である。

 

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 勝った山川に関しては、本人も笑顔満開だったが、中里のときと同様、谷川里江や高橋淳美ら、同世代の選手たちが実に喜んでいた。やはり同じ時を戦い、ともに苦労し、時にはバッチバチにやり合った戦友が、いい結果を出せば我がことのように嬉しい! 山川の笑顔もより深くなろうというものだ。

 山川は6号艇だが、会見ではこんなことを言っている。

「平高さんが1号艇だと思ってたんで、動きにくいかなと思ったんだけど、2号艇なんですね。これなら動こうかという気になる(笑)」

 地元同士の共倒れは避けたいから、平高のインを脅かすのはなかなか辛い。でも、後輩以外が1号艇なら……というのは、まあ真っ当な心境であろう。というわけで、山川の前付けは決定的。今夜はどこまで動くかが最高の酒の肴になりますな。

 

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 それよりも、「平高さんが1号艇だと思ってたんで」という部分に、「俺も俺も!」「私も私も!」という方は多いのでは? 準優を勝ったのは、2号艇と3号艇と4号艇で、2号艇が平高である。普通の準優なら1号艇ですよね。

 実は、平高自身もそう思っていたようである。11Rの結果が出て、今井美亜が平高に抱きついた。平高の顔に複雑な笑みが浮かぶ。誰かが「1号艇」と言って、平高は自分を指さして、さらににこやかに笑った。今井も嬉しそうだ。平高奈菜、地元レディチャンVに王手! そのとき平高周辺に漂っていたのは、間違いなくそんな空気だった。

 ところが、準優進出戦が導入されている今節は、優勝戦の枠番は4日目までの得点率を反映する。準優1着組で最上位が大瀧だったのだ。

 うーん、ややこしい! 準優進出戦自体は、いろんな局面が生まれ、僕は実に面白いと思っている。勝ち上がりのルールは1種類である必要はない。ファンを楽しませるためには、いろんなルールがあって、むしろ当然だ。だが、現状は混乱を招いてやしませんかね。ファンもそうだし、平高のぬか喜びもかわいそうな気がする(ルールを把握しておけよ、と言われればそれまでだが)。まあ、それがまた、山川の前付け宣言や、これでむしろ燃えるはずの平高、といった事態を生んでいるので、それが巻き起こすスペクタクルを明日は期待しよう。地元勢が2人! 丸亀は大興奮必至!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)