BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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丸亀レディチャン優勝戦 私的回顧

ほっこり女王

 

12R優勝戦 並び順

①大瀧明日香(愛知)21

②平高奈菜(香川) 21

⑥山川美由紀(香川)28

④細川裕子(愛知) 37

③滝川真由子(長崎)17

⑤中里優子(埼玉) 11

 

 

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 文句なしのニューヒロイン誕生、である。実のところ、ボートボーイ編集部の間で滝川真由子は『魔性の女』と呼ばれている。ピットで彼女と挨拶したり(ほとんど黒須田だが)、カメラを向けたり、ただ単に見かけたり、JLCなどで彼女のインタビューを観たりしたオッサン軍団が、あっという間に滝川ファンになってしまうから。もちろん、俺もそのひとりだ。単純に可愛いとかそういうレベルでなく、あのちょっと控えめで、はにかんだような笑顔を見ているだけで心がほっこりし、骨の髄まで癒され、「うん、これからも元気に生きて行こう、素敵な笑顔をありがとう」なんて思ってしまうのである。荒みきった舟券オヤジに、明日への活力を与えてくれる笑顔。

「ちょっと、滝川真由子に惚れちまったんだけど」

 いつだったか黒須田にそう告白すると、呆れたように首を左右に振った。

「やっぱり、シュー長も……そんなの、僕も含めてみんな惚れてますよ。出逢った男たちは、ほぼほぼみんな滝川のトリコです。シュー長なんか、もう手遅れですよ。いまさら言ったってダメです」

 何が手遅れで何がダメなんだかさっぱりわからんが、とにかく滝川真由子は「オヤジの心を一瞬にして鷲掴みにする女子レーサー」=『魔性の女』となった。

 そして今日、本場やネット、テレビなどで表彰式を見た全国津々浦々のドロドロ舟券オヤジたち(推定2万人)は、やはり一瞬にして心を奪われたに違いない。今日の滝川は、あのオヤジ心を狂わせる笑顔に加えて、奥ゆかしい涙まで見せてしまったのだ! あれは反則でしょ。

「同期の遠藤エミ選手がレース前に『優勝して、一緒に総理杯に行こうね』って言ってくれて、それで私も頑張ろうって……」

 一筋の涙が頬を伝った。嗚呼、もうっ! 笑顔のジャブが顔面にヒットし、涙のアッパーカットでノックアウト。全国のオヤジたちも、もんどりうってぶっ倒れたに違いない。

 

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 って、ちょっとした前振りのはずが、私はいったい何を書いているのか。そう、今日の滝川真由子は水面でも『魔性の女』だった。5カドからの絞りまくり。あの笑顔からは想像すらできない獰猛な攻撃。そして、2コースの平高奈菜が握ったとみるや、レバーを放ってまくり差しに切り替えた。昨日の1周2マーク同様、冷静な判断だ。たちまち滝川は先頭に立った。そのまま独走状態に持ち込んでもおかしくないまくり差しだった。

 が、その内側からひたひたと忍び寄る影があった。中里優子46号機。二番差しならぬ“二番まくり差し”で追随した中里の艇が、伸びる伸びる。2艇身ほどの差が瞬く間に詰まり、舳先が入り、逆に中里の舳先が突き出した。そう、これが46号機の底力だ。

 

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 2マーク、再逆転を狙った滝川の差しはまったく届かず、逆に突き放される。それでもしつこく喰らい付いて、2周1マークも差し。この差しはなかなかに鮮やかで、中里との差をぐっと詰めた。舳先が入るほどの“好旋回”ではあったが、直線でまた中里がググイと突き放す。如何ともしがたいパワー差。この渾身の差しが届かないのを見て、私は中里の優勝をほぼ確信した。これ以上、滝川にどんな逆転すべき攻め手があるというのだ。

 そう決め込んでいた2周2マークで、それは起きた。おそらく、中里も2度の差しを退けて優勝の2文字を意識したのかもしれない。それまで以上に、丁寧に慎重に回ったように見えた。そこに、滝川の3度目の差しが突き刺さった。あれはもう、中里のターンを責めるより、滝川の執拗な追撃と冷静かつ的確なスピード差しを褒め称えるべきだろう。再逆転してからの滝川のレースぶりも見事だった。先頭に立った奮えなど微塵も感じさせず、中里の追撃をシャットアウトした。

 

 

 

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「そんな可愛い顔して、ようがんばるなぁ」

 また表彰式に戻る。会場にいたオッサンが、感心したように言った。滝川はそのオッサンを真っ直ぐに見て、いえいえ、と首を振りつつとびっきりの笑顔を振る舞う。またひとりのオッサンがKOされた。こうして滝川は何万人ものオッサンを惹きつけ、味方にし、その声援を栄養分にして成長してゆくに違いない。でもって、来年はSG総理杯が待っている。半年後、何万人の男どもが骨抜きにされるのだろう。

 おめでとう、艇界のまゆゆ。そして、とびっきりのほっこり笑顔と胸キュンの涙をありがとう。明日からも元気に生きてゆくどーー!!(photos/シギー中尾、text/畠山)