BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――勝負駆けの裏で

 

 

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 深川真二と魚谷智之が、肩を並べて装着場にあらわれた。1R後のことだ。着替えを終えて次の準備を始めるタイミングが一緒だったのだろう。二人はレースを語り合いながら、満面の笑みだった。スタート遅れてしまった深川、それをまくりに行った魚谷、どちらも勝負駆けとしては好結果を残せておらず、それに至る展開の綾などについても語り合っている。満面の笑みと書いたけど、よく見れば苦笑混じりだ。お互い、失敗を悔いながらの会話でもあっただろう。

 

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 その様子を見かけた平本真之が、魚谷のもとに駆け寄った。ペコリと頭を下げる。セオリーならば、魚谷のまくりに乗じての差し、という場面だったが、平本はさらに上を行ってしまった。魚谷は「俺がまくるの、わからなかった?」みたいなことを言っていて、平本はただただ苦笑いで頭を下げるのみだ。魚谷が平本に反応したおかげで、差し場が外からズボズボと2艇が飛び込んでいる。そんな展開にしてしまってすみません、の意味もあったか。そんな平本の肩を、平本はぽんぽんと軽く叩いた。ドンマイ、だったか、気にするな、だったか。ともかく、落ち込む平本を魚谷が慰めた格好だ。平本は「視野が狭い」とその後呟いてもいて、魚谷の慰めに癒されながらも、おおいに反省しているようだった。

 

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 2R、徳増秀樹が逃げ切った。あの妨害失格から2日。徳増の表情は一貫して冴えない。まだ引きずっているのか、勝負が終わってしまったことでテンションが上がり切らないのか、昨日も今日も、明るさや闘志などがうかがえない顔つきだった。

 1着を獲って、少しは気分が明るくなっただろうか……いや、あまりそうは見えなかった。ちょっと心配だなあ。どう見ても気配はいいだけに、残る2日も頑張ってもらいたいところ。人気にならないけど足抜群、というのは舟券買う側からすれば美味しいですから。今節中に徳増の少しでも明るい顔を見たい。

 

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 3Rは田頭実が差し切り。ここまでオール6着、しかしここで一気にリズムを変えてみせた。

 スタートも素晴らしく、観戦していた瓜生正義が「おっ、田頭さん、怒った!」と嬉しそうに口にしていた。怒ったのかどうかは知らないが、3日間の鬱憤を一気に晴らすかのようなスタート、そして差し。怒りの勝利と書けば、たしかに収まりはいい。

 ピットに戻ってきた田頭は、それこそ満面の笑み! やってやったぜ、とばかりに、誇らしげな顔を後輩たちに見せていた。足は間違いなく上向いている。明日からが、田頭らしいレースを爆発させる日になるだろう。そんな予感もあってか、田頭の笑顔はますます深くなるのであった。

 

 というわけで、序盤レースは「勝負駆け組が苦戦」「勝負駆けが終わっている選手が活躍」という流れになっている。4Rも平尾崇典が勝ってるし。そして、勝負駆け失敗で笑う人落胆する人もいれば、快勝で表情が変わる人変わらない人がいるわけである。もっとも、後半レースになれば、勝負駆けの成否でもっと明暗がくっきりするだろう。得点率上位組の多くは後ろのほうに出ているわけだから、着のひとつふたつをめぐる攻防が激しくなる可能性があるわけだ。

 ともあれ、勝負駆けというトッピングは、レースをエキサイティングにし、また選手の表情にも彩りをもたらす。後半のピットはどんな空気になるだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)