BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡メモリアルTOPICS 4日目

 

THE勝負駆け①ボーダー争い

SGの「闘争ボーダー」

 

 いやはや、激しかったと言うかなんと言うか、不良航法3人、妨害失格1人、待機行動違反1人、転覆2人、エンスト失格1人……毎レースのように事故が起き、そのたびボーダーは下がるわ、18位以内が猫の目のように入れ替わるわ、とにかくせわしない勝負駆けデーだった。

 

 

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 そんな中、特筆しておきたいのはふたりのレーサーだ。まず、非常に残念だったのが遠藤エミ。昨日、「とりあえず4着以内でOKか」と書いたが、その条件をクリアすることができなかった。うーーん、本人にどれだけプレッシャーがあったのかはわからない。少なくとも、スタートはしっかり行った。4コースからコンマ09。立派なものだ。ただ、両隣の相手が悪すぎた。3カド!の太田和美、5コースの瓜生正義がともにコンマ05!

「エミちゃん、これが超一流レーサーのガチの勝負駆けだ」と威圧するような踏み込みだ。そして、外の瓜生はすぐに内のエミを締めつけた。SG7冠×7冠の超豪華なサンドイッチ。が、両雄に挟まれたのは、わずか1秒ほどだったか。太田と瓜生がエミを置き去りにして1マークに殺到したとき、エミにはもはや4着を奪うだけのマイシロはなかった。正直に感想を言うなら、子供扱いされた。SGの真の厳しさを、エミは身体の全部で痛感したことだろう。うん、残念だが、今日のところはそれでいい。大事なのは、今日のこのスリットで身体が感じたあれこれを、忘れないことだ。今後、同じように厳しい局面は何度もやってくる。同じ痛みを喰らわないためには、何をすべきか。今日の貴重な体験が、さらなる高みに導いてくれるだろう。できることなら、ヴィーナスシリーズなどの一般戦でも、今日のスリットを「ボーダー」と考えて戦ってもらいたい。女子では別次元のレーサーになってもらいたい。

 

 

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 もうひとりは、何といっても山崎智也だろう。今日の智也は、予選ラスト12Rの1号艇を与えられていた。が、実のところこの12Rは“消化試合”的な意味合いが強い。1着で5・67。昨日までのボーダー6・00を考えれば、逃げきっても予選突破は難しい状況だった。他の5選手も、ほぼ絶望的な面々だ。

 が、さまざまなアクシデントと星の潰し合いによって、状況ががらり変わる。11R終了時点の18位ボーダーは5・50。智也が逃げきれば、手の届く位置まで下がったのである。同じく、3号艇の須藤博倫、6号艇の川北浩貴にも「ピン勝負」のチャンスが発生した。消化試合のはずが、鉄火場と化した。川北が凄まじい気迫で前付けに動いた。2コース奪取。勢い、インの智也も深くなる。須藤が艇を流して、4コースに構える。勝負駆けのラストバトルに相応しい、一触即発の隊形ができあがった。

 が、艇界屈指の持ってる男、稀代の千両役者が、この降って湧いたチャンスを逃すはずもない。1マークをくるり回ると、5秒足らずで独走態勢に持ち込んでいた。456321という成績で予選突破。流れ、勢い的にも不気味だし、このカウントダウンのような尻上がりの成績も不気味である。何より、こうして滑り込んだ男が山崎智也なのである。パワー的にも、徐々に気配がアップしているとお伝えしておく。

 

THE勝負駆け②シリーズリーダー争い

無敵のインモンキー

 

 

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 一方、V戦線でより重要な予選トップ争いは、レースが終わるたびに有力候補者が絞られていった。2回走の篠崎元志や池田浩二が、前半戦で自滅というか、遠い枠を克服できずに勝率を落としたのだ。9Rの下條雄太郎は、3号艇という好枠を生かしきれず4着に敗れた(今村豊のボディアタックを喰らうという不運もあった)。

 

 

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 これで俄然トップに近づいたのは、10R1号艇の峰竜太だ。勝てば「2位以内確定で、11Rの柳沢の結果待ち」という申し分のない境遇である。この千載一遇のチャンスを、峰はきっちりモノにした。今節の自己ベストであるコンマ07から、怒涛の逃げきり。2コース巧者・太田和美の鋭い差しが、まったく届いていなかった。ターンも速いし、出口から押して行くパワーも凄い。どっちも凄いから、無敵にも見えるインモンキーだった。

 こりゃもう、予選トップなら優勝までまっしぐらだな。

 マジでそう思ったぞ。

 

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 で、その前に立ちはだかったのが地元の柳沢である。11Rで2着以内なら自力トップ、3着以下なら峰。そんなわかりやすい勝負駆けだ。6号艇6コースの柳沢は、5コース元志の攻めに連動して差しハンドルを入れた。なかなかにゴキゲンなターンだったが、さずかに6コースは遠すぎた。道中で揉まれて5着に敗れた柳沢は、準優1号艇の座からも滑り落ちた。本人は悔しいかも知れないが、リラックスして走れるという利もあると思う。

 

 

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 この結果、予選1位は峰竜太。ついにというか、またまたというか、SGのテッペンに手が届く位置まで上り詰めた。今日の勝ちっぷりを見て、今まで以上にV確率が高いと私は感じた。体感的には70%くらいか。太田和美の激差しをまったく寄せ付けなかったのだから、今日と同じレベルのパワーを維持して、今日と同程度のスタート、ターンができれば、それを打ち負かせる敵はいないと思うのだ。今節は三国オーシャンほどのパワー差がない分だけ、予選トップの利がでかいとも思っている。うん、あとは……いつも書いてきたが、シンプルに己との戦いである。あまり考えすぎず、先輩の深川真二とバカをやって過ごしたりしていれば、むしろ優勝に近づくような気がするのだが、どうだろうか。(photos/シギー中尾、text/畠山)