優勝戦組は、とにかくゆったりとした動き出しである。それぞれのボートにモーターは装着されているが、水面に出ていく様子はない。昨日、篠崎元志が言っていたが、今節は12R頃に気温が下がり、日中との差が大きくなっている。篠崎は「明日はサバ読んで調整しなければ」と語っており、いずれにしても早い時間からの調整は必要ない。これは同時に、優勝戦メンバーは機力に不安がないということであり、リラックスして過ごすのが最適ということだろう。
よく見ると、岡崎のモーターとハンドルをつなぐワイヤーがつながれていない。正確に言うと、岡崎はモーターをボートに乗っけただけで、まだ装着もされていないのだ。岡崎らしいな、と思う。優勝戦の日の岡崎はいつもこんな具合だ。昔は、モーターを乗っけるのもかなり遅かった。あの2010年オールスターの優勝戦の日も、そうだったのだ。つまり、Vモードである。
装着場でずーっと姿を見たのは宮地元輝。彼だけは、ほかのメンバーと行動が違った。ボートに乗り込み、ハンドルを何度も切って感触を確認するなど、丁寧な装着作業を延々と行なっていたのだ。そこに、JLC解説者の納富英昭さんが歩み寄る。二人はやまと学校時代の恩師と教え子。納富さんは実技教官として、今節出場している多くの選手を育てた。宮地もその一人で、しかも佐賀支部の先輩後輩でもある。取材だったのか、それとも“同窓会”だったのか、あるいは先輩からのアドバイスが授けられていたのか。納富さんが去ったあとは、宮地はハンドルに背をもたれかけて、ソファにでも腰かけているような態勢になった。そのまま動かず、装着場の天井を見つめている。精神統一か、それともボートと自分を一体化させようとしているのか。宮地は相当に長い時間、ボートの上で過ごしていたことになる。
1Rのエンジン吊りには、西山貴浩と丹下将が語らいながらあらわれている。97期の同期生。まあ今さら丹下が同期を激励しているとは思えないが、ともに行動すること自体が、エールを送っていることにはなるだろう。やはり同期の存在は心強い。
その後は、西山、岡崎、篠崎の優勝戦トリオで、時に笑いながら、時にはしゃぎながら、エンジン吊りに参加している。西山は水面際でしゃがんでいる篠崎を落とすふりをしてみたり。とにかくリラックスしたムードだ。
同期と絡んでいたのは、松田祐季も同様。こちらは98期生で、寄り添うのは同じ近畿地区の西村拓也だ。2R後には、そのレースに出ていた船岡洋一郎とカポック脱ぎ場の前で笑い合うシーンもあった。船岡も同期。やはり大一番の日は、いつも以上に同期の絡みとか、よく目にしますね。ちなみに、少しだけ松田と言葉を交わしたが、昨日と同様、プレッシャーを感じているふうはなかった。飄々とした笑顔は、なんとも爽やかだった。
では、渡邉和将は同期=103期生と絡んでいたかというと、こちらは茅原悠紀である。渡邉は朝からペラ室にいたようで、そこには茅原もいた。二人並んでペラを叩いていた、あるいは茅原のアドバイスを受けていたということだ。同期も心強いが、強くてたまらない先輩もまた、めちゃくちゃ心強い。渡邉も心にパワーを得て、優勝戦に臨むはずだ。
優勝戦メンバー6人、いずれも実にいい雰囲気!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)