BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――流れを変えろ!

 

 

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 3Rの1周1マーク、平本真之が転覆し、乗り上げるかたちで毒島誠も転覆。その両者が、負傷により途中帰郷となってしまった。毒島は前節の下関周年でも帰郷しており、どうにもツイていない10月。その前がGⅠ2連続優勝だっただけに、勢いがそがれたのが惜しい。しかし、これを厄落としと考え、まずは傷を癒して、ふたたびリズムアップしてほしいものだ。

 

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 平本は左第3中手骨骨折の重傷を負ってしまった。12R終了後にピットから記者室へ戻る際、ちょうど帰郷する平本と出会った。左手には分厚く包帯が巻かれていて、痛々しい。大丈夫なわけがないのに「大丈夫?」とか聞いてしまったわけだが、平本は「大丈夫です!」と力強く言った。いや、ほんと大丈夫なわけないんだけど……。それでも、平本は「チャレンジには絶対間に合わせますから」と、無理やりにでも前を向いた。よし、芦屋で会おう。でも、焦りは禁物。毒島同様、まずはしっかり傷を癒してほしい。

 

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 今日もまたいろいろあった一日。ピットでも「続くときは続きますよね~」なんて会話が報道陣の間で交わされていたりする。この流れをなんとか断ち切ろう! 12R、まくり差しで快勝した山田雄太の勢いに託そうか。なんたって、SG初出場ながら、2日目までに2勝である。しかも今日は、1号艇の王者を破ってしまった。このインパクトはデカい! こりゃ明日から人気になっちゃうな……というのはともかく、14年間着々と蓄え、この1年間、派手ではないながらも爆発させてきた実力を、この大舞台で遺憾なく発揮しているのだから、たいしたものだ。

 ピットに戻ってきた山田は、あまり表情を変えることなく、淡々としていた。でも、仲間の気分は高揚する。笠原亮が、エンジン吊りに参加しながら、「やるじゃんっ!」と顔をニヤニヤさせながら何事か耳打ちしている。二人の様子からは、むしろ笠原のほうが嬉しそうにさえ見える。1号艇の王者を負かすのはやはり特別なこと。それをSG初出場の後輩がやってのけたのだから、周りは「おぉっ!」だし、本人も内心は手応えを感じているだろう。明日の5号艇は、ひとつの試金石になる。ここを乗り切れば、ニュースターの誕生の期待もますます高まろうというものだ。

 

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 エース機で大活躍の原田篤志は、11Rで連勝が止まっている。それでも、篠崎元志との3番手争いを競り勝ち、明らかなるパワーの差を見せつけた。今をときめく元志を競り落としたのだから、やはり手応えを感じていなければおかしい。展開的には大敗があってもおかしくないところだったのだから、足に自信をもたなければおかしいのだ。

 しかしながら、レース後の原田はひたすら悔しそうだった。そうかもなあ。2コースの上平真二がツケマイに出て、松村敏が差しに構えたのは想定外だったか。松村を待った分、展開はなくなった。足をまるで活かせなかった1マークは、3番手を取り切ったことよりも悔恨として強く心に残る。SGはこれがまだ2節目、だからその心意気や良し、であろう。明日は1号艇! やっぱり人気かぶるんだろうなあ……というのはともかく、山田とは反対の意味で、ここは試金石になるだろう。

 

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“いろいろあった初日2日目”の登場人物でもある、茅原悠紀も明日1号艇で、これは非常に大事な一戦になる。勝てば得点率6・00。ボーダー圏内に突入してくるだろう。昨日の頓挫を帳消しにするためには落とせない一戦。そうでなくとも、予選でただ1回の1号艇だ。必勝態勢に決まっている。

 今朝の茅原は、正直、いつもの茅原ではなかった。昨日の出来事は、明らかに茅原の心に影を落としていた。少し心配になるほどだった。11R発売中にたまたますれ違ったとき、少し変わったかな、と思った。ども~、お疲れ様です~、くらいの言葉は交わしたが、それがやや柔らかかった。11R、盟友の桐生順平が展開をズバリと突いた。その桐生を出迎えた茅原は、ニッコリと笑った。おぉ、昨日の12R以降、初めて見る茅原の笑顔だ。だいぶ本来の茅原を取り戻したかな、と思った。あと必要なのは、やっぱり勝利! 明日の9R後には全開の茅原悠紀になっていることを期待しよう。

 

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 さてさて、12R発売中、装着場には選手の姿が数多く見られた。前夜版が出て、各支部のいちばん後輩の選手が艇旗艇番の準備を始めたのだ。たとえば、大阪支部では石野貴之が動く。12R出走の王者以外の先輩艇に、あかくみ(スポンジ)を配ったりするわけですね。例外もあって、静岡支部は山田雄太が12R出走なので、笠原亮が率先して動く。菊地孝平も動いていたな。展示から戻ったときにそれを見た山田が恐縮するという場面もあった。

 

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 福岡も、篠崎元志が11Rで走ったばかりなので瓜生正義が動く……って、瓜生!? 瓜生が何枚かの艇番と艇旗、その上にあかくみを乗せて、すたすたと歩いていたのだ。まったくもう、この人は! 元志は着替えとかモーター格納とかあるから、空いている者がやればいい、というのを自然体でやってしまうのだ。もちろん、それを見つけた元志が慌てて駆けつけて、瓜生から準備セットをもぎ取ろうとする、という場面がその後に展開される。しかし瓜生は、いいよいいよと元志を制して、仕事を進めるのであった。ちなみに、瓜生が福岡全員の準備をしていたわけではなく、岡崎恭裕も一緒に動いてました。こちらも手が空いていたんでしょうね。というか、手持無沙汰そうにぶらぶら歩いている姿をその前に見かけてます(笑)。

 今節はここまで、機力に苦しんでいる印象の瓜生。朝は整備をしていたわけだし、明日も調整は続くだろう。そのかたわらで、何食わぬ顔で素敵な人柄を見せるのだから、この男はやっぱりすごい。福岡支部の後輩でなくたって、だいぶ年上で禿げ頭のオッサンだって、尊敬してしまうのである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)