BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト 一部私的回顧

 

薄氷の1着

 

10R

①山田雄太(静岡) 10

②今垣光太郎(福井)14

③石野貴之(大阪) 06

④田中信一郎(大阪)09

⑤川北浩貴(滋賀) 10

⑥茅原悠紀(岡山) 08

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220121815j:plain

 

 SG初出場初準優の山田雄太が、綱渡りのような1着で初優出までこぎ着けた。大ピンチは2度あった。まずは1マーク、3コースの石野貴之がトップSから怒涛の締めまくりに出た。その勢いは半端なく、今垣光太郎の身体を張ったブロックがなければ一撃で引き波にハマっていたかもしれない。

 なんとか石野の猛攻から脱出した雄太だが、大ピンチは続く。石野、信一郎、茅原が内からドカドカとやってきた。特に石野、信一郎の大阪コンビには完全に捕まっていた。このコンビが折り合って「雄太マーク」に徹すれば2着すらなかったかもしれない。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220121756j:plain

 

 が、2マークで石野と信一郎が敢然と競り合った。このふたりは去年のチャレカ最終日の2マークでもやり合った(どちらか競り勝ったほうが賞金王ボーダー超えという残酷な状況ではあった)が、今日もまたそれが起きた。石野も信一郎もガチで1着を獲りに行った。ボートレーサーの信条に則った、天晴れな「大阪競り」。が、競れば双方にダメージが発生する。2艇で外へ流れている間に、雄太がスパーーーンッと差し抜けていた。もちろん決まり手は「抜き」。ただ、大阪コンビの動向を察知し、しかも内から迫る茅原を引き波にハメるような差しハンドルは冷静かつ完璧だった。苦節14年の地元SGで、全力を出し切ったレースとも言えるだろう。

 1着・雄太、2着・石野。

 冷や汗ものの勝利ではあったが、雄太の足はレベルの高い上位級だと思う。2マークの差しで見せた鋭い切れ味、これが最大の武器。サイドの掛かりがよくて、しかも乗りやすさがある証拠だ。行き足~伸びはソコソコレベルなので、3号艇の明日はこの切れ味を最大限に活かすレースを目指すべきだろう。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220122247j:plain

 

 驚いたのは石野の足だ。前検でA級に指名したものの、予選道中の走りが物足りなくBに降格されていた。期待したほどの実戦足がなかったのが最大の理由で、今日の昼の足合わせでも原田篤志に直線で軽く1艇身はやられたはずだ。

「このままじゃ優出は無理!」

 そう決めつけて、予想と舟券から石野を外したのである。それがどうだ。スタートは気合一本だとしても、1マークで光太郎の抵抗を受けながら力ずくでまくり差しを打ち、しかもそれが先頭まで届いた足は、昨日までのそれとは明らかに違った。2マークで信一郎をねじ伏せた瞬間も、同じような力強さを感じた。だからといって、篤志や俊介より上とは思えないが、6コースから展開次第で突き抜けても不思議ではない足に仕上がった。

 

最強激辛コンビ

 

11R

①松井 繁(大阪)11

②太田和美(大阪)15

③上平真二(広島)11

④吉川元浩(兵庫)17

⑤菊地孝平(静岡)09

⑥吉田拡郎(岡山)19

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220122306j:plain

 

 やはり、浪花賞金王コンビの壁は、あまりにも厚かった。トップスタートは地元の菊地。さすがだ。選手班長の身の上で、最高級のスタートだった。が、悲しいかな、スリット後はさっぱり伸びない。それでも気持ちが先走ったように吉川に突っかかり、その反動で吉川が上平に突っかかり、上平が太田に突っかかり、それぞれ小さな玉突きを起こしながら1マークに殺到した。

 その間に、インの松井が1マークを豪快に回った。豪快に、と言うより、絶対にまくりを許さない握りマイだったかもしれない。いつもの松井のインモンキーより、かなり大きな航跡を描いていた。その間隙を誰が突けるか。もちろん、太田だ。小突かれながらも外をブロックした太田が、コースの利を生かして俊敏に差す。こうなれば、外の出番は望みようがない。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220122320j:plain

 

 松井が逃げるか、太田が差すか。

 松井のターンがやや膨れていたので、私は太田の差しが入ると思った。が、太田もまた玉突きのダメージでマイシロを失っていた。その分だけ松井の引き波を超える瞬間の勢いがなかった。機力的にも、その部分のパワーがちょっとだけ足りなかったか。

 1着・松井、2着・太田。

 さすがの両雄。別に出来レースという展開ではなかったものの、大阪コンビの独壇場だった。賞金ランク15位・松井、同7位・太田の少なからぬ上積みもほぼ約束された。ただ、現状の足は両者ともに中堅上位~上位の下くらいと見ており、自力で優勝するためには果敢なスタート勝負かパワーの上積みが必要だろう。この段階に及んでフライング覚悟の特攻は考えにくいとしたものだが、このふたりの勝負勘はちょぃと別格だからなぁ(汗)。

 

チェックメイト!

 

12R

①守田俊介(滋賀)06

②原田篤志(山口)08

③土屋智則(群馬)08

④笠原 亮(静岡)07

⑤中岡正彦(香川)03

⑥坪井康晴(静岡)05

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220122333j:plain

 

 守田俊介がSG初優勝へ、まずは第一城門を撃破した。いやぁ、なんだか信じられない。黒須田にほっぺたをつねつねしてもらおうか。昨日から舞い上がっている私に比べて、俊介は冷静にコトを運んだ。まず、進入がもつれたスタート展示で、深めの起こしからきっちりコンマ10でスリットを通過した。文句のない予行演習だ。

 いざ本番は、外3艇が睨みあうような形で枠なり3対3で落ち着いた。

「これなら逃げきり確定じゃぁ」

 スタンドの若いもんが叫んだが、私はその若者に「こら、そんな簡単に言うな、SG準優の12Rの1号艇なんだぞ!!」と怒鳴った。心の中で(笑)。第一、起こしの位置がスタ展と違う。楽になったわけだが、うっかりスタ展と同じタイミングで行ったらドカ遅れになるぞ。そんなことを考えていた。バカ親か。

 12秒針が回り、俊介が少し早めに起こした気がした。今度はフライングが気になって仕方がない。約20年、何度もここ一番での俊介のフライングを目の当たりにしてきた。何度もぬか喜びした。今日の私は、オーロラビジョン?に映る12秒針と俊介のスリット通過を同時に見るという、いつもまったくしないことをしていた。いつもしていないから、さっぱり分からず、むしろフライングを切ったように見えた。首筋と背筋がぞわぞわした。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220122350j:plain

 

 1マークは心臓が凍りつきそうになった。土屋智則の強烈なまくり差し!!?? 一瞬、入ったかに見えたし、事実舳先が食い込んだが、土屋の艇が流れてバランスを失いズルリと下がった。心臓バクバクで、他の艇を見回す。後ろからはなんにも来ない、そんな隊形になっている。だが、まだ気を緩めてはならない。17年前の7月、常滑周年のスタンドで万歳した瞬間に「2号艇、フライング欠場!!」のアナウンスを聞いた心の傷は、まだ癒えきっていない。数秒後、「スタート正常」の文字を見て、私はやっと俊介の勝利を確信した。確信したのだが、やはり、まだちょっと信じられない。これで明日優勝したら、信じられないどころか、すべて夢まぼろしだと自分に言い聞かせてまったく関係のない記事を書くかもしれない。いや、何も書かないかもしれない(笑)。

 1着・俊介、2着・篤志。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220122402j:plain

 

 

取って付けたようで申し訳ないが、篤志のレースぶりも素晴らしかった。いや、レースっぷりだけでいうなら今日のMVPだろう。地元の坪井と笠原のまさに鬼気迫る追撃&デッドヒートを、ことごとく冷静な判断で捌ききった。25号機の恩恵もあっただろうが、道中の判断と実行はすべて選手の力量である。篤志は完璧に立ち回り、その立ち回りに25号機がしっかり追従した。スタートからゴールまで見事な2着だった。

 そして、その25号機のパワーは総体的に俊介の19号機を上回っている、と思う。今日の枠番が逆だったら、篤志はもっと楽勝していたかもしれない。より正確にいうと、出足系統は一緒(ここはわずかに俊介が上かも)で、行き足~伸びでは篤志が圧倒という感じか。今日のスリット直後も、明らかに篤志の行き足のほうが軽快に見えた。実のところ、明日、私が俊介の最強の敵と見ているのは松井でも太田でもなく、この原田篤志25号機である。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220122417j:plain

 

もちろん、それ以前に「己との戦い」みたいなメンタル面が大きいのだが、なんだかそれは大丈夫な気がしてならないんだよなぁ。だって、20年ほど前から、あの子は本当はやればできる子だって分かってたから(笑)

(photos/シギー中尾、text/畠山)