BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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住之江グランプリTOPICS 初日

 

10年の薫陶

 

11R

①峰 竜太  08

②笠原 亮 08

③田中信一郎 09

④辻 栄蔵 11

⑤今垣光太郎 10

⑥茅原悠紀 10

 

 

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 さすがの集中力。美しいまでにスリットラインが揃った。こうなると、外の艇は仕掛けにくい。行き足を不安視していた峰竜太が、それなりにしっかり伸びて危なげなく逃げきった。差した笠原亮、握った田中信一郎が追随し、早々に本命サイドの隊形が出来上がった。

 残念無念だったのは辻栄蔵だ。4コースからの2番差しは、見た目にも鋭いものだった。レバーを握ったまま、ブイ際に突っ込んだ。が、ある意味、攻め過ぎだったのかもしれない。そのスピードと笠原の作った引き波がハレーションを起こしたかのように、辻の艇は横転した。選手責任の転覆で-5点。事実上、栄蔵の賞金王V2の夢は断たれた。

 

 

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 このレースで、もっとも光って見えたのは笠原だ。まずはパワー。スリット同体から1マークまでに峰よりも力強く伸びていたし、バック直線~2マークの信一郎との競り合いでも優勢に見えた。さらに、冷静さ。2マーク、4番手から切り返した今垣光太郎の奇襲に、焦らず騒がず行かしての差しハンドル。その分、信一郎の2番差しが威力を増したが、わずかに入った舳先をコツンと叩いて振りほどいた。10年間の臥薪嘗胆が、亮クンの内面を鍛えたに違いない。

 

 

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 一方、3着ながらも明日に望みをつなげた信一郎は、レース後に絶望的な裁決を浴びる。待機行動違反で-7点……9点の貯金が、2点に削られた。明日「1着を獲っても14点」という境遇は、限りなく赤信号に近い。ただ、他のレースよりも様々なアクシデントが発生しやすいのがトライアルでもあり、白旗を揚げるつもりはないだろう、「明日は太田の援護?」などと安直に考えていると、痛い目に遭うかも?

 それにしても、2日間の短期決戦で事故や減点の影響力がどれほど大きいか、改めて痛感させるレースでもあった。朝の選手紹介で、松井繁が自分に言い聞かせるように、ゆっくり噛み締めるように「最終日まで、落ち着いて、いつもどおり、全力でがんばります」と言ったセリフが脳裏をよぎった。ザッツ・サバイバル・バトル。

 今垣、茅原に関しては、あのスリットで5・6コースでは、いかにも分が悪かった。ただ、ピカピカに輝いていた笠原に比べると、パワー的にもやや劣勢に思えたのだが、どうだろうか。

 

明日の王者に思う

 

12R

①太田和美 16

②松井 繁 17

③池田浩二 22

④中島孝平 19

⑤坪井康晴 21

⑥原田幸哉 24

 

 

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 驚いた。脱帽だ。池田である。スリット隊形を見て、「池田はない」と思った。凹んでサンドイッチ状態だったし、そこから伸び返す気配も感じられなかったから。が、そこは艇界屈指のアスリートだ。松井が差しハンドルを入れた瞬間、覆い被さるようなツケマイのハンドルを入れて、王者を引き波にハメた。そして、そのまま舳先を太田の内に突き刺した。息を呑む峻烈なまくり差しだった。トライアルはサバイバル戦争であると同時に、トップレーサーたちの技の祭典でもある。改めて、そう思った。

 

 

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 ただ、舳先が突き刺さった=確勝ではない。相手は地元の怪物・太田だ。バック直線から太田VS池田の技の饗宴に推移した。ターンのたびに、先頭が入れ替わる。入れ替わって入れ替わって、最後は池田が太田をギリギリ競り落とした。パワー的にも、ほとんど互角だったと私は思う。ファイナルまで保管しておきたいくらいの熱闘、名勝負だった。

 

 

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 さて、気になるのは池田の強襲を浴びた松井である。あの1マーク手前、2コース松井の視野に池田はいなかっただろう。4コース中島孝平がはっきり見えて、それが直進するのを確かめてから、差しのハンドルを入れた。その初動が早すぎたとは思えない。見えない池田に対する1ミリほどの油断があったかもしれないが、その1ミリの油断を突いた池田が凄すぎた。そう評価するしかない。

 

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 よもやの5着で黄信号が点った王者は、レース後の枠番抽選でさらなる崖っぷちに立たされた。お約束、ともいうべき緑玉=6号艇。ボーダーを16点とするなら2着条件になったわけだが、私はこの状況を絶体絶命とは思わない。今日の松井の足色は、その逆境を克服できるものに見えた。一撃の奇襲でよろけたものの、そこから追い上げる足は随所に光っていた。独断の見立てでは、池田と太田より上だと思う。もちろん、明日の松井は遠慮なくコースを奪い、渾身のスタート勝負に出る。丸々1年が今節のためにあり、その最大の正念場なのだから行かないわけがない。先にも記した「最終日まで、落ち着いて、いつもどおり、全力でがんばります」という思いから、さらに1ランク上のモードに切り替えた王者。その恐さ強さは、多くを語る必要もないな。明日、多くの人々が「松井に流れがない、もう無理だな」などと軽視してオッズが跳ね上がるようなら、絶好の舟券チャンスになり得る、とお伝えしておこう。

 

「必殺仕事人」を探せ!

 

 シリーズ戦に関しては、前半はできる限り舟券に役立ちそうなことを探していきたい。12レース中の10レースを占めるのだから。まず、今日のインコースは10戦7勝。住之江&穏やかな水面という条件を踏まえれば、順当な強さだったと思う。で、インが飛んだ3つのレースは2万・4万・6万と大穴になった。この万シューの共通点は「センターからそれなりに強気で攻めた選手がいて、外の選手に展開が向いた」という点か。

 

 

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 これって穴が発生する典型的なパターンなのだが、今日のレースを見ていて「強気に攻めそうなレーサー」が何人か見つかった。まずは井口佳典。昨日の前検の見立てどおり、行き足~伸びを中心に足はかなりいい。今日の見立てでは、湯川より良かったと思う。成績としては川上剛との大競りで6着だったが、それで人気が落ちるならしめたもの。明日以降、どこかでドカーーンをやらかしてくれると確信している。狙いは井口本人と、それをマークする選手だ。同じくパワーで言うなら湯川、川上も要注意。前検で絶賛した吉川元浩は、今日の冷え込みが影響したのか昨日ほどの迫力はなかった。

 

 

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 それから、パワーは一息でも気合満々な選手も見え隠れした。岡崎恭裕、下條雄太郎の「暴れる君コンビ」(勝手に命名しました、はい)は今節もスリットから道中から元気いっぱいで、見ていて気持ちがいい。その勢いに便乗するレーサーを狙えば、どこかで大穴を召し取れるだろう。それから、鬼気迫る前付けを打った菊地孝平からも目が離せない。あの気迫&スタート力を加味すれば、間違いなく外の選手に勝機が生まれると思う。トライアルに比べて選手のモチベーションに上下の較差があるシリーズ戦だからこそ、こうした「必殺仕事人」を徹底マークしておきたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)