BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット@グランプリ――さぁ、2ndステージへ!

 

 

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 まずは、いよいよ明日から登場するベスト6組から。今日はここまでの調整、試運転をもとに得た手応えを話す記者会見が行なわれている。いわば“前検会見”だ。あ、一人だけ趣きが違うとするなら守田俊介か。だって、何もしてないから。本人も「だらけてます」と笑っていた。昨日も今日も、朝に置かれた場所にあったボートはまったく動かされていない。モーターもペラも装着されたまま。なにしろエンジン吊りにしか出てこないのだ。この2日間の守田俊介はまるで“プロエンジン吊り師”だ(笑)。

 

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 篠崎元志も「長いっす」と言っていて、こちらも調整や試運転などでは目立った動きをしているわけではない。守田と違ってやってはいるものの、ペラ小屋や水面以外で見かけることのほうが多い。ただ、それも「ペラを見たら、大幅に調整しなくていい感じだった」という確信があるからでもある。そしてもう一丁、「レースをしてみなければわからない部分がある」という思いもあったりするわけである。

 

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 一方、今日調整している姿をわりと多く見たなあという印象があるのは、賞金トップの山崎智也。会見では気になるコメントもあった。「プロペラをいろいろやっても伸びシロがないから、キャブレターを換える。ペラやってもラチが開かないし、足合わせはブスにだいぶ分が悪い」。レースをしてみなければわからんという言葉もありはしたが、どうも足は弱めの様子なのである。調整している姿が目立って当然である。会見のあとも、キャブレターを換えた後の試運転で気になるところがあったのか、ペラをかなりキツく叩いていたりした。これが事態を好転させればいいが、やや気になる様子ではあった。

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 桐生順平、毒島誠もペラ調整をじっくりとしていて、とにかくペラ小屋で二人の顔をよく見た。そして二人のコメントは「足はたぶん力強いと思う」(桐生「仕上がりがいい(のでコースは譲らないつもり、とコース獲りの質問に答えた)」(毒島)。ポジティブなのだ。時間がたっぷりあるなかで、たっぷりと調整に臨めた手応えなのか。智也と逆の意味で気になる言葉である。まあ、レースになると何もしてなかった守田が勝ったりするから、勝負事は面白いのだが。

 

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 石野貴之は「悪くないと思います」というコメントだが、「今日はうまく調整できた」という言葉が心強い。今日の石野は昨日に比べればずっと精力的に動いていたという印象なのだが、石野自身、レースを翌日に控えてしっかり“前検作業”を行なったという手応えもあるだろう。ちなみに、太田和美が「足合わせでは石野と同じくらいだった」と言っていた。石野が噴いているのなら太田もかなりのものだろうし、太田がそれほどでもないのなら石野もどうか、ということになる。

 というわけで、ベスト6組にもスイッチが入ってきたぞ。彼らの登場で、トライアルはぐっと濃密なものになってくるだろう。

 

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 トライアル1stが終わって、2ndに勝ち上がる6人も決まった。峰竜太は連勝! 結果は最高だし、エンジンも上向いてきているようだし、気分もぐっと盛り上がってきているようだ。「昨日のリング交換が効いているかもしれない」と、ひたすらポジティブに考えているあたりも心強い。

 太田和美は2着2本での1st突破。太田、そして松井繁は昨年はトライアル2ndから登場し、今年は1stを走った、ただ二人の選手。結果的に太田は、そのうえで1stを突破した唯一の男となった。その太田が「緊張感やスタート勘とか、先に走っていたほうが有利かな」と言ったのが興味深かった。他では「2ndから行ったほうが絶対的に有利」(池田浩二)「試運転だけだと不安もあるだろうし、レースを走って自分の状態が確認できる1st組が有利」(中島孝平)と、両方の意見があるなか、太田はただ一人、「2ndから登場」「1stを勝ち上がって2ndに登場」を経験しているのだ。

 

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 で、峰と太田が、他の件で別のことを言ったのもまた、興味深かった。

「初っ端から連勝できれば、去年の白井(英治)さんがそうだったように勢いに乗れる。これはいいスタートだと思う」(峰)

「明日からはリセットですから」(太田)

 つまり峰はこの勢いを2ndに持っていくつもりだし、太田はまた一から組み立て直すと考えているわけだ。どちらが正解かはわからないし、結果もどうなるかはわからない。ただ、太田にキャリアの重みを感じたのはたしかだった。それに峰くん、昨年トライアル1st連勝だった毒島がトライアル2ndで苦戦したという例もあります……。繰り返すが、どちらが正解かはわからないし、峰が一気の連勝劇を演じる可能性はもちろんある。

 

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 で、明日は完全に太田モードでいってほしいのは、中島孝平だ。1号艇で4着敗退。あの深インでは致し方ないところもあると思うが、本人はそうはいかない。ピットに上がってきたときから落胆の様子は見てとれたし、会見ではあらわれるなり深く溜め息をついたのだから、完全に気持ちが落ちている。

「今日はしっかりヘコませてもらって、明日切り替えます」

 と最後に語っていて、しっかり立ち直って明日は登場すると思うが、うん、こうなったら今日はとことん落ち込んでしまおう。1マークで競り合って蹴落としてしまった先輩・今垣光太郎も(中島はスタートで放った分、今垣がまくる展開になってしまった、自分が行けていれば今垣が差しに回ってワンツーもあったかも、と今垣に対して申し訳なさそうにしていた)、中島の気持ちを酌んできっと背中を押してくれるはずだ。

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 ともに1着2着という成績で勝ち上がった池田浩二と笠原亮は、それぞれに好感触の様子である。池田は、今日はペラをしっかり合わせられたようで、乗り心地も来て、そのことが気分を良くさせている感じ。会見でいつにもまして饒舌だったのが、その一端を示していると思う。笠原は「まだ合っていないけど、足は悪くない」と、課題が見えていることが大きいだろう。気分が良さそうでありながら、わりと地に足が着いた感じ、というのはこの東海2騎と、僕には見えた。2ndの台風の目かも?

 

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 最後の最後に滑り込んだのは茅原悠紀。グランプリ出場も他力の状況だったが、11Rを走り、3着というやや微妙な着順だったことで、1st突破も他力であった。茅原自身は「乗れないと思った。計算もしてなかった」と言うが、こちらとしては茅原の15点を誰が超え、誰が超えないかはおおいに気になっていた。いや~、今年の後半の茅原は、ほんとすんなりとはいかなかったな~。将来的にはきっと大きな糧になる15年後半ということにはなるだろうが。

 それだけに、台風の目というなら、むしろ茅原かもという思いもある。茅原曰く「初戦で6コースを経験しているのはアドバンテージ」。いや、6コース自体がアドバンテージじゃないだろう、とも思うのだが(笑)、ようするにどこでハンドルを切ったらダメなのかをすでに体験しているだけに、それを糧にできるのだという。なるほど。初戦の反省点を活かせる、ということか。ならば、なにしろ6コースから黄金のヘルメットをもぎ取った男だ。怖いよな~。ここまで来たのにはツキも味方したと考えるのなら、むしろ流れは向いていると言えるのかもしれない。

 

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 それにしても! 王者がシリーズを走ることになるとは、もちろんありうることとわかっていたとはいえ、やはり驚かざるをえない。5着に敗れて帰ってきて、本人もそれを充分認識していたはずだ。感情を表に出すことなく、しかし悔恨を明らかに発散し、口を開かず、誰とも触れ合わず、視線の多くが向いていることも意識しながら逃げることなく、一人黙々と控室へと歩を進める王者に、痺れました。王者の孤高というものが、だからこそ漂う色気というものが、はっきりと伝わってきた。王者には申し訳ないが、僕は敗者となったその姿にも、王者とは何かを見せつけられたのである。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)