BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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GPトライアル ダイジェスト

 

太田、黄信号!

 

11R 並び順

①池田浩二(愛知)13

④太田和美(大阪)19

②笠原 亮(静岡)16

③守田俊介(滋賀)13

⑤篠崎元志(福岡)14

⑥中島孝平(福井)13

 

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笠原がピット離れで遅れ、大回りをしての3コース。太田が2コースに潜り込み、守田は4カドに引いた。スリットは太田がやや凹んで、他はほぼ横一線。すかさず回り足に自信のある笠原が、太田を叩いてまくり差しのハンドルを入れた。私の目には、この差しが届いたように見えた。笠原の足は、ターン回り~出口で押して行く部分が超抜だから。事実、わずかに届いた瞬間もあったかもしれない。

 

 

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 が、バック中間を過ぎたあたりで、池田はそれを振りほどいた。池田の足は、伸びを中心に今日がいちばん強力だったと思う。一方の笠原は、雨がそこそこ強めに降っていた朝の特訓=凄まじいパワー気配だったのが、雨が止んだ本番ではかなり気配落ちしたように感じられた。それとも、これが71号機の弱点なのだろうか。出足→行き足がトップ級だが、その先の伸びが売り切れる、という感じ。本人も気にしていた部分で、とにかく今日はそれが明暗を分けた。さらにさらに、“持病”とも言うべきピット離れの悪さが再発したのも、かなり嫌な材料ではある。明日はその部分も含めての“手術”が必要で、あれこれ気を使う1日になりそうだ。

 

 

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 2着は守田。2コースを嫌っていた俊介にとって、今日の笠原ピット遅れ→4カド選択はむしろ好判断だったもしれない。差して捌いて、あれよあれよと2着を獲りきった。パワー的には、可もなく不可もなくという感じ。すべての足が中~中の上でまとまっており、行き足が強めだからレースで後手を踏む危険性が低い。明日の課題はパワー面より枠番か。2コースを嫌う俊介がどんな戦略で臨むか、でレース全体の性質が変わる可能性もある。

 

 

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 4着以下で記すべきは地元の太田だろう。昨日の5着に続いて、今日も5着と重い着を並べてしまった。昨日はトップSを決めながら攻めきれず、今日はスタートで後手を踏んで笠原の強襲に散った。リズムの悪さが気になるし、明日の5号艇も有利な材料ではない。「1着を獲っても20点」という崖っぷちの状況で、どんなメンタリティで戦いを挑むか。浪花の怪物くんの底力に注目したい。

 元志と中島はそれぞれ4、6着に敗れたが、コースの遠さが響いた敗戦だと思う。

 

黄金のUターン

 

12R 並び順

①山崎智也(群馬)18

②桐生順平(埼玉)16

③峰 竜太(佐賀)19

⑤茅原悠紀(岡山)13

⑥石野貴之(大阪)09

④毒島 誠(群馬)18

 

 

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 ピットアウトからレースを激しく演出したのは、地元の石野だった。

 6コースでは話にならん。

 とばかり、小回り防止ブイをモンキーで旋回した。で、それに徹底抗戦したのが茅原だ。同じくモンキーターンで足合わせのように艇を追っ付け、身体を張って完璧にブロックした。ド迫力の進入バトル。毒島が「付き合いきれない」という風情で単騎がましを選択し、最終隊形は12356/4。結果論でいうなら、徹底抗戦して4コースを奪い取ったのが茅原の勝因だったか。スロー勢が100mを切るあたりで一斉に発進し、峰の艇がわずかに凹んだ。茅原は、そのわずかな“ホコロビ”を見逃さなかった。迷うことなく峰をツケマイ気味に攻め潰し、そのまままくり差しのハンドルを入れる。

「うわっ、すげえターンだな」

 

 

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 隣にいた元SGレーサーが、呆れたように唸った。確かに、それは素人の私でも呆れるようなターンだった。そして、妙な違和感も覚えた。「内にいるひとりの選手を攻め潰し、そのまま突き抜ける」というターンは、ほぼほぼ3コース選手の専売特許じゃなかったか。茅原は、それを4コースであっさり実現させた。元SGレーサーは、そのあたりも含めて「すげえターン」と評したのだろう。

 この「3コースまくり差しのような180度Uターン」で、思いきり割を食ったのは石野だ。5コースの石野も、艇をぶん回して同じスペースに艇を捩じ込もうとしていた。セオリー的には、その差し場は5、6コースの“猟場”なのである。が、茅原の常識外れの180度旋回で、その空間はすでに荒らされてしまった。ハッと驚いたように、石野は減速して艇を外に持ち出した。「相手が悪かった」としか言いようがない。

 

 

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 で、先頭争いだ。昨日は智也がギリギリ笠原の追撃を凌いだが、今日の茅原の舳先はキッチリ食い込んでいた。もう、ほどけない。茅原は智也の艇をブロックしてから、2マークを先取りした。

「すげえターンだな」

 再び元SGレーサーが唸る。同じセリフだが、今度はターンスピードと旋回フォームについて唸った気がする。一発のターンで、差しを狙った智也を5艇身ほど突き放していた。1マーク&2マークで魅せた、異次元の空恐ろしいターン。去年のこの季節、平和島の観衆を唖然呆然騒然とさせたあのターンが思い浮かぶ……ディフェンディング・チャンプが本気モードに突入した。そう思った。

 

 

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その茅原だが、王者・松井のように抽選運には恵まれない。6号艇、5号艇ときて、明日はまた6号艇。本人はうんざりだろうが、観る側にとっては大きな見所のひとつではあるな。明日はどんなサプライズターンをやらかすのか。「この若者が賞金ランク18位以内にいてくれて良かった」と、今さらながらつくづく思う。(photos/シギー中尾、text/畠山)