BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット@シリーズ――東都の夢

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220164948j:plain

 やっと東京支部からSGウイナーが出た。今日の午後4時前まで、東京支部でもっとも若い登番のSG覇者は3590濱野谷憲吾。濱野谷はもちろん現在でもファンタジスタだが、それにしても憲吾のあとに続く若者がなかなかあらわれなかった。東京在住のボートファンとしては、寂しい限りだった。

 正直に言えば、次が長田頼宗とはあまり想像していなかった。登番4266まで引っ張られるとも思わなかったし、その間に獲っておかしくない選手はたくさんいた。また、申し訳ないけれども、東京支部にあっても長田は決して派手な存在ではなかった。実力はもちろんわかっているけれども、いきなり濱野谷の次の大仕事をする存在とは、失礼ながら、認識していなかった。

 ピットに凱旋した長田に、東京支部勢はバンザイで出迎える。中野次郎がハイタッチで祝福する。齊藤仁も。ああ、僕もしたかった! 伏兵というべき長田の優勝は、東男としてはなんとも感慨深いものなのだ!

 

f:id:boatrace-g-report:20171220165002j:plain

「走りながら成長している実感が、今節はありました」

 そう、彼はこのシリーズを戦いながら、完全にSG覇者にふさわしい男へとなっていった。会見では、松井繁と話す機会も増えたと言っていて、それも長田をにわかに大きくさせたのかもしれない。そういえば、何日目だったか、松井と長田が話していたのを見ていて、メモにもたしかに残っている。支部も違えば年も違う二人の絡みが珍しいな、とメモしていたのだ。それをもっと重要視していれば、舟券ももっといっぱい買……いやいや、長田の優勝をもっと早い段階で予感できていたのかもしれない。

 いずれにしても、栄えあるSGウイナーとなり、東京支部を代表する選手の一人となって、長田にはますますの活躍を期待するしかない。帰り際、長田はニコニコとこちらに挨拶をしてくれたのだが、そんな姿にこちらが畏れ多さを感じるような、たくましい強さを持った選手になってもらおう。

 

f:id:boatrace-g-report:20171220165018j:plain

 で、SG初優勝だから、もちろん水神祭! 表彰式と記者会見を終えた12R発売中に、東京支部、さらには松井をはじめとする大阪支部の手で、雨の降る水面に投げ込まれている。いやあ、長田の嬉しそうだったこと! 田中信一郎に突き落とされて笑いを集めた齊藤仁に注目が集まった瞬間もあったけれども(笑)、ズブ濡れの仁ちゃんや松井らに祝福をされて、長田は笑顔を弾けさせていた。おめでとう! 考えてみれば、東京支部のSG制覇水神祭に立ち会ったのは、07年ダービーの高橋勲以来だ。本当におめでとう!

 

f:id:boatrace-g-report:20171220165029j:plain

 敗者で印象的だったのは、とにかく西山貴浩だった。まくりを放った松井と艇が合い、ボートが乗っかってしまって、ハンドルがまったく切れなかった。それがあの大競りの真相だ。それについては西山も松井も禍根を残してはいないが、しかしせっかくのSG初優出で何もできなかったのが、西山は悔しかった。

「あぁっ、ハンドルくらい切りたかった!」

 レースからしばらく時間が経ってから、西山は改めて悔しがった。レース直後は、仲間とじゃれるようなところがあったけれども、それは西山の本音ではない。12Rが終わって帰り支度を済ませ、他の福岡勢を待つ間には、いつもの威勢の良さはいっさいなかった。空気が抜けたように、「お疲れ様でしたぁ……」と力なく頭を下げて、去っていったのである。

 やはりこの男の根っこには、荒々しい勝負師が棲んでいる。来年にはふたたび優勝戦の舞台に立ち、この思いを吹き飛ばして、おおいに我々を笑わせてほしい。お疲れ様!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)