BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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グランプリ優勝戦 私的回顧

画竜点睛

 

12Rグランプリ優勝戦 並び順

①山崎智也(群馬)14

⑥茅原悠紀(岡山)16

②石野貴之(大阪)12

③毒島 誠(群馬)20

④池田浩二(愛知)21

⑤篠崎元志(福岡)25

 

 

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 やっぱり智也は強く、カッチョ良かった。パワーは平凡でも、進入が荒れても、3コースの石野がスリットで覗いても、まったく動じることなく完璧かつ華麗なインモンキーだ。『画竜点睛』。今年の智也の強さを、まんま象徴する4日間、そしてファイナルだった。今年だけでSG3V、獲得賞金は約2億3000万円。通算SG10Vは、植木通彦に並ぶ歴代3位タイ。ここ3年の強さを考えれば、この記録はさらに加速するだろう。

 しかも、「嫁さん」と結婚したときにシリーズV、「嫁さん」の引退&ご出産のときにグランプリVって。うーーん、凄い。でもって、いつものことながら、ちょっぴり憎たらしい(笑)。できすぎ君です、できすぎっ!!

 

 

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 うん、茅原のことを書こう。動いた動いた、2コース奪取。朝のインタビューからその予兆はあった。池田や元志が「自力で攻める足はない、他力で」と言ったのが引き金だった。茅原自身に6コースから自力で攻め潰す足があれば別だろうが、住之江の水面では「遠すぎる」と判断した。連覇をするためには、コースの利が必要と考えた。

 スタート展示で、その意志をはっきり示した。一度は元志に激しく抵抗されて諦めたように見えたが、そこからまた二段で噴かした。スタンド騒然。おそらくスタート展示史上、もっとも観衆のボルテージが上がった「二段噴射前付け」だ。

「ま、どうせ本番は6コースだろ」

 あちこちからそんな声が聞こえたが、私はそうは思わなかった。この激しい前付けによる「1・2コースの深起こし」=「少なからぬ勝機をもたらす」と他の4選手が考えても不思議じゃないから。行き足~伸びに自信のある石野にとっては、3カドにも近い絶好の3コースになる。4カド想定の毒島も、石野の動きに乗じて自力でも他力でも機敏に攻めることができる。そして、「自力では難しい」と泣いていた池田、元志も、内2艇が深くなるのは大歓迎のはずだ。たとえ、コースがひとつ外になったとしても。

 

 

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 レース本番、この4人の思惑は見事に合致した。少しだけ抵抗する素振りを見せたが、茅原の前付けをあっさり受け入れた。実は、これが4人にとってわずかな誤算だったかもしれない。「他の誰かしらが激しく抵抗して、スタート展示のように内2艇がかなり深くなる」と考えていた気がしてならない。自分が抵抗すると、それだけ不利になるから。

 智也と茅原の起こしは、スタ展ほどには深くならなかった。スタ展が95m起こしくらいで、本番は110mを切る程度だった。この差はでかい。「機力がぜんっぜん大したことがないから、スタートで勝負しようと思った」智也は、コンマ14全速でスリットを通過した。助走がある分だけ、しっかり伸びる。

 惜しかったのは3コース石野で、コンマ12ながら全速では行ききれなかった。それでも智也より伸びていく感じだったから、全速だったら突き抜けていた可能性は低くない。やや半端に伸びた石野の艇は、茅原に引っ掛かってその勢いを失った。

 

 

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そしてそして、コース取りに賭けた茅原の勝負手は、智也と石野のサンドイッチになることで失敗に終わった。ターンすべきマイシロがまったくなかった。この結果を踏まえて「だったら去年のように6コースから潔く勝負すべきだったのでは? その方がカッコ良かったのでは?」と指摘するファンもいるだろうが、私はそうは思わない。住之江の6コースは、カッコいいターンで勝ち切れるほど甘くない。茅原は「2年連続で6コースからグランプリ連覇できたらカッコいい」などという次元の低い思考を捨てて、本気で勝つために泥臭く2コースを奪いきった。その勝負師としての考え方と行動を、それなりに高く評価したい。今日の作戦変更=前付けを見て、この男はもっともっと強くなる、と確信した。あれだけのターンができて、さらに勝負に激辛となれば、「勝師」モンスター野中を超える可能性もあるだろう。

 

 

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 嗚呼、それも踏まえて、やっぱり智也はカッチョ良かった。SGをふたつカッパギ、早々に賞金ランク1位を決め、そのア

ドバンテージ+抽選運を生かしてファイナル1号艇をもぎ取り、若者の“奇襲”をモノともせずに逃げきった。今の茅原になくて智也にあるもの、それが2015年のあちこちに散りばめられていた。

「今年は僕の年にしたいです」(優出インタビュー)

 いやいや、今年はすでに「僕の年」だったし、今日は『画竜点睛』の仕上げをしたにすぎない。今年の智也は、憎たらしいほどカッチョ良かった。(photos/シギー中尾、text/畠山)