BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優進出戦ダイジェスト

消え去った節イチ

 

9R

①三角哲男(東京) 01

②烏野賢太(徳島) 09

③川崎智幸(岡山) 05

④野長瀬正孝(静岡)03

⑤新良一規(山口) 03

⑥吉田一郎(長崎) 11

 

 

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 ほぼタッチSの三角はじめ、内5人がコンマゼロ台に踏み込んだ電撃スリット戦。とりわけスリットからの行き足が目立ったのは野長瀬だ。スッと半艇身ほど覗き、スピード任せに締めまくりを打ったが、その強攻策が裏目に出た。内から抵抗した川崎らと、もつれるように1マークへ殺到。川崎が落水(←準優の権利があったが負傷帰郷)し、烏野賢太のエンジンも一時停止状態となった。野長瀬、あえなく妨害失格。

 

 

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 事故艇が出たため、1マーク後のパワー云々については言及できない。つまり、このレースのパワー的収穫は「野長瀬の行き足は、おそらく今日がいちばんゴキゲンだった。鬼に金棒で文句なしの節イチ指名」って感じなのだが、66号機は優勝権利のない節イチ機になってしまった。うーーん、残念! こうなったら敗者戦のモノの違いを見せてもらうとしよう。

 勝った三角は玉突き事故をすんでのタイミングで交わし、そのまま逃げきった。事故とうねりとで正味の足はわからないが、コンマ01で残したし、事故からギリギリ脱出できたし、運や流れ的にはかなりのものがありそうだ。

 

究極の曲芸

 

10R 並び順

①今村 豊(山口)21

②藤丸光一(福岡)14

③大嶋一也(愛知)06

⑥倉谷和信(大阪)01

④江口晃生(群馬)05

⑤上田隆章(香川)10

 

 

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 ちょっと、ありえないレース。ミスター今村豊の奥義と呼ぶにはどこかユーモラスな、曲芸のようなレースだった。まず、スタートで完全に後手を踏んだミスターは、藤丸&大嶋のツープラトンまくりを浴びた。2艇にまくられたら、そりゃもうアウトでしょ。2-3を買っていた私は、そぞろときめいた。

 

 

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 が、1マークを回ってみたらば、ニョキッとミスターだけが抜け出している。まくられ差しというか、イン選手のイン替わりというか、ちょっと異様な光景だった。後でリプレイを観たらば、ミスターのターンの素晴らしいこと。まくり艇など意に解さず、絶妙のスピードでブイを舐めるように180度旋回していた。ミスターは本栖訓練所の時代に、「最強のターンはブイ際でウィリーよろしく舳先を持ち上げ、そのままくるり180度旋回すること」と信じ、その実験を繰り返して何度も転覆したという(=当時のニックネームは『ドボンキング』)。今日のターンを見て、その逸話を思い出した。実際、1マークを旋回するときピョンと舳先を持ち上げているように見えるのだが、どうだろう。

 

 

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 で、本栖時代のからの必殺技?で先頭に立ったミスターだが、パワー自体はやはり心もとない。2マーク、2艇身後方にいた江口のズブ差しを浴びた。瞬く間に1艇身ほど出し抜かれ、「今度はさすがに無理か」と思いきや、再び1マークで完璧な差しハンドル。この人、いくつになってもモノが違う。絶体絶命のピンチが2度もありながら、終わってみれば1着ゴールだ。

 うむ。あんな逆転劇を見てしまうと「少なくとも回り足は強めでは?」と思いがちだが、おそらくきっとそれは違う。ほぼほぼ100%天才的なテクニックだけで1着を獲りきったと思う。道中の足色自体は、どうにも頼りなかったから。むしろ、パワーではグイグイ追い上げた江口、さりげなく3着に入線した上田のほうがかなり勝っている。そして、伸び足は見ての通り、藤丸と雲泥の差だった。今日は強い追い風とうねりに泣かされた藤丸だが(あれだけ流れるあたり、回り足に見るべきものはなかった)、常にS一撃がありえる怖い存在だと再確認した。

 

三拍子インモンキー

 

11R 並び順

①田頭 実(福岡)26

②長岡茂一(東京)20

③小畑実成(岡山)13

④北川幸典(広島)11

⑥熊谷直樹(東京)11

⑤柳田英明(東京)15

 

 

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 ミスターに続き、このレースもインの田頭がドカっと遅れた。が、勝つときはすべての流れが味方する。もっとも怖い4カドの北川(直前のペラ交換には驚いたが、行き足は強烈だった)をカド受けの実成がブロック、その内で長岡が実成にやや抵抗し、それでも強引に握った実成は追い風で流れ、その間にブイ際をくるり回った田頭が先頭に立っていた。単なる運だけでなく、上々の機力&ターンスピードを同時に感じさせるインモンキーだった。

 

 

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 「スタートを溜めていったら起こしで泣いた」とドカの原因もはっきりしており、その部分を修正すればまた「ゼロ台の田頭」を見られるだろう。足は全部の足がいいバランス型か。現状でも申し分ないパワーだと思う。他では北川と小畑の直線足。特に、北川を受け止めきって、追い風を切り裂くように田頭に肉薄した実成の足に魅力を感じた。一方、北海の熊さんは……いったんは2、3着争いに絡みながらターンマークでずるっと下がる感じで5着大敗。やはり、準優には手の届かない残念パワーだった。

 

レアアイテム「伸び足」GET??

 

12R

①西島義則(広島)12

②平石和男(埼玉)11

③大場 敏(静岡)11

④山一鉄也(福岡)06

⑤生方厚成(群馬)05

⑥濱村芳宏(徳島)14

 

 

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 三角、今村豊、田頭に続いて、1号艇の西島がキッチリ勝った。その勝ちっぷりは、「薄氷の勝利」とも言えるし「見た目以上に強い勝ち方」とも言える。まず、大ピンチに見えたのは1マークの出口だ。平石の差しハンドルが入って、その舳先がガッチリ食い込んだ。昨日の4Rのような突き抜けるレース足ではなかった。が、これはパワーの変化というより、強い追い風の影響だと思う。ホーム追い風の1マークはインが流れ、差した2コースがキッチリ伸びる。今日の平石の差しは完璧だったし、追い風も味方に付けた。

 

 

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「お、こりゃ2-1か、まあ、明日は2号艇の西島を楽しませてもらうか」

 バック中間あたりまで、そんなことを思っていた。伸び足は平石が上、一度喰い込んだ舳先は二度とほどけない、と思っていたから。ところが、バック中間を過ぎてから西島の艇がじりじりと伸び、2マークの手前で平石の舳先を振りほどいた。競りを恐れた平石が抜いたとも言えそうだが、伸び足でヒケを取らなかったことに変わりはない。西島が2マークを先取りして、それで明日の12R1号艇が決まった。一度は平石の舳先を許したのだから「薄氷の勝利」だし、それをキッチリ振り払ったのは「見た目以上に強い勝ち方」だった。自慢の出足に、上位レベルの伸び足も付いたのか。だとすれば、インコースで戦うレーサーにとって、かなり理想的なパワーに仕上がったと言えるだろう。名人奪還に、また一歩近づいた。

 

 

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 ドリーム戦の1~4号艇が、まんま1号艇だった準優進出戦。その4人がすべて勝ちきり、明日の1号艇はドリームの1~3着まんま……「パワー相場的に、怪物エンジンのいない戦国シリーズ」となると、逆に強いレーサーがこれほど順当に勝ち上がる。それを痛感した4個レースでもあった。私が刺客として期待した北川、藤丸、山一、野長瀬らの「伸び~る軍団」は追い風の不利があったり事故したり、この4強の一角を崩すことができなかった。明日も流れ的には4強絶対のムードだが、隙あらば一撃の大穴を狙ってみたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)