BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――3日目の係留所

 

 

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 3日目ともなると、朝のピットもまあまあ静かになる、というイメージがあるのだが、今朝はなかなか賑やかだった。気温がさらに上がったり、かなりムシムシとしていたり、そんな気候と関係があるだろうか。

 装着場には、エンジンを回す音が響いている。係留所はほぼ埋まっており、エンジン音にじっと耳を澄ませる選手たちの姿が複数見られる。轟音のなか、いったんエンジンを止めた松井がボートのかたわらに立って、じっと考え込む姿があった。腰に手を当て、モーターを見つめながら微動だにしない王者。どうしたら相棒のパワーを引き出せるのか、頭の中ではこれまで築き上げてきた引き出しを開けまくっていたに違いない。

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 足合わせをした選手同士が情報交換を行なっている姿も随所に見かける。辻栄蔵は西山貴浩と合わせた。ボートを係留している場所は離れていて、西山がボートを降りて辻先輩のもとに駆けていく。そして、どちらのどの足がどうだというようなことを話し合っているわけだ。で、エンジン音は依然として響いていたのに、辻のガッハッハッハという爆笑が耳に届いてくる。情報交換でも先輩を笑わせている西山貴浩。もっとも、辻の爆笑する声はピットのなかではいつだってひときわデカいのであるが。

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 1R後、篠崎ブラザーズの競演が係留所で見られている。1Rは仁志がまくり差しで快勝。レース後に勝利者インタビューなど一連の行動を終えると、係留所でやはりエンジンを回していた元志のもとに仁志が駆け寄ったのだ。元志はボートに乗艇しており、仁志が元志を見下ろすかたち。仁志は両手を膝に当てて腰を折り、兄の言葉に耳を傾けていた。しばらく見ていたが、言葉を多く発していたのは明らかに元志のほう。レースの感想を仁志が尋ね、それに応えていたのだろう。もっとも気安い存在がそこにいる。これは仁志にとっても元志にとっても、大きなパワーになる。

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 ほかにもさまざまな選手、組み合わせを係留所で見たぞ。松田祐季と平山智加の98期コンビとか。遠藤エミと小野生奈のはつらつナデシココンビとか。もちろん単独で調整に集中している選手も多かった。瓜生正義とか太田和美とか石渡鉄兵とか、メモにはいろんな選手の名前が並んでいる。3日目の朝に、こんなにも選手名をたくさん書くのはやっぱ珍しいんじゃないかな。これが戦況にどんな影響を与えていくだろうか。

 

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 さてさて、1Rで4着に敗れた池田浩二。クールなイメージのある池田だが、ピットでは笑顔も多く、敗戦後には仲間に苦笑いを見せたり、体をよじっておどけたり、という姿を時折見かける(黙々と悔しがっているほうが多いだろうけど)。そんな池田が、仲間と離れて一人になると、脱いだグローブをバシッと右の腿に打ち付けたのだ。こんなにも素直に、激しく、悔しさをあらわにした池田を見たことがあっただろうか。成績は振るわないが、気持ちは萎えていない。予選突破は厳しくとも、その奮闘を応援したい!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)