BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎オールスターTOPICS 4日目

THE勝負駆け①ボーダー争い

やったぜエミちゃん!

 

 

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 最大のトピックは、やはり女子レーサー遠藤エミの堂々たる予選突破だ。今日のエミは4・3号艇で④④条件。気持ちの悪い勝負駆けが残された。第一関門は、パワー相場の低い2R。「ここで2着なら、後半を待たずにほぼ当確」なのだが、果たして強気で攻めきれるか……エミは誰よりも攻めた。4カドから、コンマ12のトップスタート! そして、3コースの濱野谷憲吾が先まくりを打つと、慌てず騒がずマーク差しのハンドルを入れた。喉から手が出るほど欲しい2着、ゲット。この瞬間、オールスターでは2013年の田口節子以来、3年ぶりの女子当確がほぼ約束された。

 

 

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 で、さらなる拍手を送りたいのは後半10Rだ。2Rよりも実績、パワーともはるかに強力な面々が揃ったこの一戦。「無事故完走で当確」となれば、気持ちが守りに入っても不思議はないところ。だがしかし、エミは臆することなくコンマ08トップタイでスリットを通過し、ほとんどのコーナーを得意の全速マイでぶん回した。2番手の中島孝平を脅かすほどの勢いで、3着ゲット! 単なる予選ボーダーではなく「さらなる上」を目指したレースぶりは、高く高く評価したい。おそらく、去年のメモリアルでの悔恨(④条件でエンスト失格)が、今日の果敢な走りにつながっているはずだ。エミのような男子のトップ級にも通用する女子レーサー(ほんの一握りだ)は、どんどん記念で猛者たちと戦わせてほしいし、戦わせるべきだと強く思う。

 

 

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 予選ボーダー6・00を巡って、もっとも肝を冷やしたのは濱野谷憲吾だろう。昨日まで予選33位。このボーダーに①②着が必要だった憲吾は、2Rで3コースまくり1着、11Rでインから粘って2着と、とりあえずの条件をクリアした。が、11R終了時点での18位は、実は絶望的なポジションでもあった。12Rのメンバーが……あ、このレースは予選トップ争いにも大きな影響を与えたので、後に回すとしよう。

 

THE勝負駆け②予選トップ争い

崇高な集団玉砕

 

 

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 昨日までの予選トップは、3年ぶりにSGに復帰した西島義則。が、出走回数の関係で、自力トップの権利を有していたのは茅原悠紀だった。2走ピンピン連勝なら、トップ確定。その茅原が、3Rで2着に敗れてしまう。すると、自力トップの権利は王者・松井繁にスライドした。これまたピンピン連勝ならトップ確定。ただ、王者の初戦5Rは6号艇。この枠の遠さを克服できず、松井は4着に屈してしまう。

 

 

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 この瞬間、自力トップの権利はやっと暫定1位・西島義則の手に渡ったのである。西島は12Rの1回走りだから、6~11Rまで誰がどう活躍しても「トップ確定」とはならない。そんな中、こっそりと?暫定2位の座を奪い取った男がいた。平本真之。9Rでアウト6コースからシャープな根っこ差しで2着ゲット。この2着が、最終的に大きくモノを言うことになる。

 さてさて、いろんな意味で天下分け目の12R。それぞれの勝負駆けを記しておこう。

 

12R

①篠崎元志…①着&秋山が③着以下で予選突破

②秋山直之…②着で予選突破

③西島義則…②着でトップ当選

④笠原 亮…①着文句なし、②着で元志・秋山が③着以下なら予選突破

⑤松井 繁…①着&西島が④着以下なら3位(準優1号艇)確定

⑥峰 竜太…①着&西島が③着以下でトップ確定

 

 

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 入り組んでいるが、こんな感じ。ボーダー争いは篠崎、秋山、笠原の3人、予選トップ&準優1号艇争いは西島、松井、峰の3人……それぞれ立場は違えど、目的達成のためにはすべて①②着あたりが必要という血で血を洗うような残酷なカードになった。で、このレースに深く関わっているのが、暫定18位の濱野谷と暫定2位の平本だ。すでに己の闘いを終えてはいるが、彼らの境遇も記しておこう。

★濱野谷…元志が②着以下&秋山・笠原がともに③着以下で予選突破。

★平本…西島が③着以下&峰が②着以下でトップ当選

 とにかく、絶体絶命のピンチは濱野谷だ。12Rの枠番を考えれば、予選突破は針の穴を通すほどの確率に思えた。

 そして、その12R本番はまさにTHE勝負駆けと呼ぶべき凄絶なサバイバル戦になった。132/456の隊形から、レースを作ったのは4カドの笠原だ。コンマ07全速でスロー勢を圧倒し、あっという間に秋山・西島を呑み込んだ。おそらく、ここでまくり差しのハンドルを入れれば、笠原の勝負駆けは成功しただろう。が、この寡黙な勝負師は思いきる。インの元志まで攻め潰しに行った。作戦としては選択ミスかもしれないが、この思いきりの良さが笠原の強さの原点でもある。そして、こうした相手に徹底抗戦する気迫が、篠崎元志の強さの原点だ。元志は張った。張り倒した。もちろん、自らも準優圏内から遠く離れるブロックではあったが、元よりメイチの1着勝負。悔いはないだろう。

 

 

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 昔ながらの「水上の格闘技」を彷彿させる「インVSカドの大競り」は、もちろん大波乱を生んだ。笠原にガッチリ連動した松井繁が、ズッポリのマーク差し。さらに最アウトの峰もスピーディーに連動し、瞬く間に5-6のアウトセット。あまりの峻烈な決着に、2着で予選トップの西島には、もはや追い上げるべき力はなかった。予選突破を目指した3人も、この激闘の引き波に沈んだ。峰が松井を追い抜けば予選トップという状況だったが、それも叶わなかった。つまり、予選ボーダー突破&トップ当選という勝負駆けを成功させた選手は、誰ひとりいなかった。6人でこれだけの死闘を演じながら、なんという残酷さ! 結局、最後の1議席は濱野谷憲吾、予選トップは平本真之。“観戦組”が勝者となったのである。今日の12Rは本来の目的からすれば不毛な闘いだったが、だからこその崇高さを感じさせるレースでもあった。

 あ、ただひとり、予選ボーダーともトップとも無縁だった松井繁だけが、自分なりの勝負駆けを成功させていた。この奇跡的な1着で、予選3位=準優1号艇ゲット。やはり、この男はやってきた。機力劣勢でも5・6枠の勝負駆けでも、なんだかんだこの男はやってくる。今節も、やっぱりやってきた。なんだかんだ、松井。最低限のノルマを果たし、明日もまたなんだかんだと優勝戦の権利を手にするのだろう。脱帽するしかない。(photos/シギー中尾、text/畠山)