BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡グラチャンTOPICS 3日目

シリーズ企画・鳴門行き最終便③

田村、終戦。市橋、崖っぷち。

 

★田村隆信/9R1号艇=3着

 

 

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 鳴門のエースの挑戦が終わった。今日の9Rで逃げきれば明日への夢がつながったのだが、4カド坪井康晴の一撃まくりに屈した。節間4・00、明日1着でも5・20……事実上の終戦である。ここ半年、GI戦線を中心に頑張って頑張って頑張って、地元のオーシャンカップに届かなかった。この企画の主旨「オーシャンカップへの可能性がある限り、応援し続ける」に則って、これ以降は田村本人について触れることはないだろう。今はただ、おつかれさま、という言葉を贈りたい。

 

★市橋卓士/1R3号艇=3着、10R6号艇=6着

 

 

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 田村が敗れた瞬間、鳴門オーシャンカップ参戦の可能性を持つ徳島支部レーサーは市橋卓士だけになった。1Rは3号艇で5カドを選択、コンマ11のトップスタートで果敢に攻めようとしたが、カド受けの白井英治がこれをブロック。そのまま白井が強引に握ってまくりきり、差しハンドルに切り替えた市橋は3着がやっとだった。それでも節間成績は6・33。残り2走の成績次第では、準優の好枠も狙えるポジションだ。

 後半10Rは、胸突き八丁の6号艇。田村の結果を知っていたであろう市橋は、どんな思いで水面に降り立ったか。本人に聞かずとも、スタートタイミングが代弁してくれる。フライング持ちでコンマ09、おそらく全速。が、その気迫は、着順には結びつかなかった。一時は4番手あたりに付けたものの、ターンするごとにズリ下がる。明らかにパワー不足だったし、気持ちとハンドルがシンクロしていないようにも見えた。最後は、10艇身ほども後方にいた茅原悠紀にも抜かれて6着……。

 この激痛の6着で、一気に崖っぷちに立たされた市橋。だがしかし、まだまだチャンスは十二分に残されている。明日、4号艇で1着を獲りきれば予選勝率6・20。枠もパワーも厳しいのは百も承知。ラストサムライ。最後の鳴門戦士の意地と気合を見せてくれ、市橋!

★明日の市橋卓士/3R4号艇=メイチ①着条件

 

因縁の?大競り

 

 

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 初日の11Rで抜きつ抜かれつのボートチェイスを繰り広げた篠崎元志と茅原が、今日の10Rでも激しくやり合った。今回は道中ではなく、1マークの一発勝負。4カドからコンマ04!で豪快に絞めまくった茅原を、インの元志がこれまた豪快に張り飛ばしたのだ。茅原にはまくり差しの選択もあったと思うが、委細構わず握り潰そうとした。おそらく、茅原は知っていたはずだ。インの元志は、たとえ相手が王者であっても張り飛ばすことを。それでも行った。そして、元志は当たり前のように艇を押しつけて完全ブロックした。

 ザッツ・キョーテイ!

 昔は日常茶飯事だった、インVSカドの大競り。それを近代ボートレースの申し子たちが迷うことなくやってくれるのだから、気持ちがいい。うん、選手の勝ちたい思い&負けず嫌いの気性は、昔も今も変わるわけがないのだな。

 もちろん、この大競りはV候補のふたりに相応のダメージを与えた。インで確勝を期した元志は3着で予選15位止まり。まくりきれば準優ボーダー圏内に突入したであろう茅原は5着で32位に後退。この痛み分けを「無理心中っぽい愚かな行為」と思うファンがいるかも知れないが、私は違う。だからこそ、このふたりは強いし、さらにもっと強くなってゆくのである。

 

 

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 で、この大競りを目の当たりにして、私がもっとも心配したのは審判の裁定だった。これまでインでまくり艇を張った元志は、何度か不良航法を食らっている。衝突の激しさだけでいうなら、それらの“判例”が適用されそうなアタックに見えた。が、今日の元志に、罰則や減点が課されることはなかった。素晴らしい。審判に拍手、拍手。そうでなくっちゃボートレースは面白くないし、選手たちが委縮&自粛してまくりもブロックもない競技になってしまうぞ。賛否両論はあれど、私はまくり艇VSイン選手の大競りを強く支持する。そこで遺恨が生まれるとするなら、その遺恨がまたボートレースをさらに面白くする、とも思っている。

 今節の茅原VS元志は、元志の1勝1引き分けといったところか。負け越している茅原には、是非とも超厳しい勝負駆けを乗り越え、準優や優勝戦でリベンジマッチを挑んでもらいたい。伝説や名勝負物語というのは、往々にしてそういうところから生まれるのだ。(photos/シギー中尾、text/畠山)