BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――モーター整備

 

 

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 オールスターの尼崎も、今回の蒲郡も、モーターを下して数節でSGを迎えている。尼崎ではモーター整備ができなかったが、蒲郡では許されているというのが、オールスターとグラチャンの違いだ。出走表のモーター整備欄には、多くの選手の名前と部品交換履歴がずらりと並んでいる。のべ21人。下ろしたてのモーターだから、そしてそれをSGレーサーたちが触るのだから、気配が一変するということもあるだろう。たとえば2Rで2着に入った原田篤志。3日目までゴンロクを並べ、3日目にピストン2本とキャブレター、4日目にギアケースを交換、4日目に2着2本で2Rも2着と3連続2着となった。明らかに動きがガラリ変わっているのだ。原田自身も違うモーターになっていると言っており、「遅すぎですよね~」と苦笑いを浮かべていた。たしかに2日目あたりにこの足になっていれば、巻き返しが利いていた可能性は高い。

 

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 完全に立て直した一人が、9R1号艇の毒島誠だ。ドリーム戦を見て、今節の毒島はかなり厳しいと思った。まったく毒島らしいレースができずに6着。毒島自身、かなりひどい足と自覚していた。2日目、毒島はピストン2本、ピストンリング4本、シリンダケースを交換して登場。これはいわゆる「セット交換」というヤツだ。ピストンがシリンダケースの中を往復して爆発力を起こすのがエンジンの超大雑把な構造だから、その大事な大事な部分を丸ごと交換するのがセット交換。言ってみれば、まったく別もののモーターになっているわけだ。毒島はこれが当たった。その後は3着、ピンピン、2着2着と積み重ねて、準優1号艇。毒島は「整備士さんのおかげですよ」と謙遜するが、それに踏み切る決断をしたのは毒島だし、その巻き返しっぷりがすごい。毒島といえばもちろん旋回力が図抜けているわけだが、もうひとつ、いろいろな意味を含めての“整備力”もすごいのである。毒島に、昨年一昨年とドリーム6号艇がグラチャンでは優勝している件を伝えたら、「あはは、そうなるといいですね」とさらりとしたものだったが、今の足なら3年連続が充分ありそうだ。

 

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 ただし、部品交換を施す選手というのは、基本、出てないんですよね。パワー劣勢だから活路を見出すべく交換をするケースが多いのは当然。原田も毒島も、もともとは劣勢であった。結局、部品交換をした選手で予選突破したのは毒島のみ。やっぱり毒島の巻き返しはすごいということにもなるわけだが、大きな整備もなしで準優1号艇の瓜生正義と魚谷智之は、やっぱり出ているのである。

 

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 今日の午後イチ、1R発売中には瓜生も魚谷も、入念に装着作業を行ない、凛々しい表情を見せていた。それが終わると二人とも、控室へと戻っていった。プロペラ調整室ではないのだ。おそらくレースが近づいてくればペラ調整を始めるだろうが、それは気候に合わせた微調整というやつだろう。ようするに早い時間帯にはかなり余裕の動きを見せているのである。パワー優勢の選手はこういうパターンが多いかも。毒島も今日は、早い時間帯にはペラ室にはいなかったし。ほかには山崎智也ものんびりした雰囲気で、そもそも今節を通して、プロペラ室で姿をあまり見ていない。微調整くらいしかしていないはずだ。

 

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 早い時間帯にペラ室で姿を見たのは白井英治、重成一人、池田浩二といったあたり。準優組の多くは、始動がそれほど早くはない。早々に着水したのは坪井康晴で、準優組ではやや苦しい足色か……とは限らず、これが坪井のルーティンというか、とにかく早くからペラ室にこもることが少なくないのが坪井だ。というわけで、午後イチのピットはなかなか静かな空気だった。どうやら全体的に気配良好と見える準優勝戦、誰が勝ってもおかしくない気がしてくるわけで、これは嵐の前の静けさなのか、などと考えつつ、人っ気の少ないピットを眺める私でありました。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)