BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――優出6人の表情 プラスワン

 

 

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①魚谷智之

 11Rの結果によって、優勝戦1号艇だ! 11Rのエンジン吊りに向かったときには、池田浩二に声をかけられ、さらに原田幸哉からは肩をモミモミされていた。もちろん祝福の意味がこもったものだっただろう。

 勝ってピットに上がってきたときには、エンジン吊りに参加した近畿勢からも祝福を受けていた。そのときには、ヘルメットの奥で目を細めているのが見えた。久しぶりの優出だ、やはりそれだけで嬉しさはあっただろう。それが結果的に1号艇をもらうことになったわけだから、9年ぶりのSG制覇も頭に強く思い描く優勝戦になるはずである。

 会見で気になった言葉は「新しい感覚でやっているので、SG初優出くらいの気持ちでおります」。新しい感覚について問われると、大きく笑みを作りながら「年も取ってきたんで、若い頃のように勢いだけではいけないですよ」と答えている。本当にそれだけなのだろうか? 10年前、メンタルトレーニングを取り入れることが飛躍のきっかけになり、SG制覇を果たした魚谷。そうした部分にこだわりがあるのだとしたら、何か別のものもあると思えてならないのだが。それはもちろん、優勝戦にポジティブに働くことだろう。

 

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②毒島誠

 スリットではややのぞかれながら、「いいターンができた」と文句なしの先マイで逃げ切ったことで、レース後はなんとも充実感あふれるものになっていた。劣勢機を立て直しての優出だから、それもまたひとつの達成感につながっていただろう。

 走破タイム1分47秒0は今節最速。それも「2周2マークのあと、危険信号灯がついていたので、事故艇を探しながら上体を起こして走っ」てのタイムだから、もし3周全力で走っていたら、さらにすごいタイムが出ていたわけだ。

 そうしたもろもろが、毒島の心にさらにプラスアルファを与える。メンタルは完全に仕上がっていると見た。

 

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③山崎智也

「スタ展から、そうだろうなと思ってました」

 なんと、太田和美の3カドを予感していた! それを予測していたのは、智也と畠山だけかも!? まあ、もっとたくさんいるだろうが、3カドならカド受けとなる智也は心の準備ができていたわけで、これは大きかっただろう。足に対する信頼もあっただろうけど。

 そう、智也は足に絶大なる信頼を置いている。「ほぼほぼノーハンマー。ヒマです」と笑うほど、智也はペラを触っていない。ピットでも智也の姿はあまり見ないし、調整をしている姿を見ることのほうが珍しかった。優勝戦でパワー最上位は、もしかしたら智也かもしれない。

 それにしても、レース後の智也はゴキゲンだったぞ。智也は負けた時ほどよく笑い、勝った時は淡々としている……というのは長く当欄をご覧いただいている方には、読んだ記憶があると思う。Sports@NIFTYの頃から何度か書きました。智也は笑うことで、悔しさを押し隠すのだ。しかし今日は、ヘルメットの向こうから「アッハッハ」と呵々大笑する声が聞こえるほど、笑っていた。SG優勝後はもちろん満面の笑みを見せるが、それ以外ではけっこう珍しいことだと思う。メンタル的な仕上がりもいいんだろうな、きっと。

 

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④瓜生正義

 内心はかなり複雑だったはずだ。スタートで後手を踏んだことが敗因だと瓜生は言っているが、山崎智也とはほぼ同タイミング。3カドにした太田和美にはのぞかれているが、実際には智也に伸びられてまくられているのだ。太田と同じくらいのタイミングだったらまた展開も変わってはいたが、しかし智也との足の差は感じたことだろう。

 また、1マークで篠崎元志と接触したことが、審議となっている。「篠崎選手に迷惑をかけてしまった」と語っているし、場合によっては賞典除外になっていた可能性もあったのだから、平静ではいられなかったに違いない。

 14年15年とグランプリシリーズで2年連続優出を果たしているが、それ以外の通常SGでは14年オーシャンカップ以来の優出である。SGではなかなか結果を残せなかったわけで、本来なら流れを変える優出のはずだ。勝てば1号艇だったのに、いろいろなことが降りかかってしまった準優。ここでどう切り替えられるのかがポイントだと思う。

 

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⑤重成一人

 エース機といわれた35号機については「普通に毛が生えた感じ」。エース機ではないと思いますよ、とまで言った。それでオール3連対で優出を果たしたということは、自身のテクの賜物? あるいは今、乗れているということだろうか。だとするなら、モーターの地力がないわけはないので、優勝戦でも怖い存在ではある。

 それにしても、オールスター優出時もそうだったのだが、ただただ冷静で、淡々、訥々としたレース後の様子は、どんな意味を持つのだろうか。会見で力強いメッセージを、と振られて「優勝できるよう頑張ります、って言ったほうがいいんでしょうね」と交わすあたりにも、重成の内面になんらかの変化があったような気がしてならないのだが。それが結果につながっているのだとしたら、やっぱり怖い存在である。

 

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⑥池田浩二

 うれしそうでした!「ホッとしている」という言葉を使ったが、やはり地元SGでの優出に安堵と歓喜の両方を味わっただろう。「最近になってパッとしないレースが続いている。これで流れが変わったのだと思いたい」という、悪いリズムを断ち切れたかもしれないという感覚が生じたのも、気分を高揚させるものだろう。

 6号艇になったことで、進入も注目だぞ。まだ6号艇と決定する前、いずれにしても5か6かという状況で、前付けの有無を聞かれたとき、「あぁ、そっか! それがあるか。あるわ、ある」。と返している。「ここは蒲郡なので、おとなしくしておきます」と笑って続けたが(純ホームの常滑ならわからんよ、ということでしょう)、地元であることは変わらないわけで、しかも緑になったことで不気味さはいや増す。今節は気合がはっきりとうかがえる様子だし、おおいにありうると思うのだが……。

 

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 最後に、落水失格の茅原悠紀。体は大丈夫そうです。というより、9Rをご覧いただいた方は、事故艇を目にしなかったはずだ。なぜなら、ボートに這い上がって再乗し、自力でピットに戻っているからだ。落水した時点で失格なのだが、「レースに復帰させてくれたら、たぶんゴールできたと思いますよ」と笑っていた(先頭のゴールから30秒以内にゴールできなければ時間切れ不完走失格。つまり、それより早く復帰が可能だったということだ)。ナイスガッツだ! 不完全燃焼ではあろうが、その鬱憤は明日晴らせ!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)