BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝負駆けの朝は意外と穏やか

 

 

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「妨害以外、ピンピンピンじゃないっすか!」

「ああ、どうも。後ろの走り方、忘れちゃったよ~」

「うおぉぉぉぉっ!」

「……また敵を作っちゃいました」

 2Rを観戦しながらの会話。片方はもちろん、原田幸哉です。そしてもう片方は毒島誠。ともにモニターを見ていた報道陣はみな大ウケでした(笑)。毒島、ナイス!

 

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 毒島は1Rも装着場のモニターでレースを観戦していて、“和メタル”こと平石和男のことを「ボス」と呼んでいた。支部は違うが関東地区の重鎮的存在ともなっている平石を、毒島は敬意をこめてそう呼んでいるのだろう。そのボスは、1Rは展開なく4着。1マークで毒島のため息が聞こえてきたのだった。もっともそのあとは、ニュージェネの盟友である平本真之に声援をおくっておりました。

 

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 SGの勝負駆けデー=4日目というのは、朝はわりとのどかなムード。トップクラスは仕事が早いというか、調整のキモを早くつかむから、この日に大きな動きをしている選手はあまり見られない。だから装着場は静かな空気が漂う時間が大半で、それもあってかリラックスした雰囲気と感じられることも多いものだ。もちろん、レースが目前に迫った選手、特にノルマを抱えている選手はピリピリしてるけど。

 1Rが終わってエンジン吊りに参加する選手がリフトのほうへと移動するなか、松井繁は泰然として装着場にあらわれた。出走表でモモをぴしゃぴしゃと叩きながら、満面の笑顔を見せている。視線の先には太田和美。太田はモーター課題に腰かけて、松井をニコニコと見ていた。すると松井は、突如ハンドルを操作するような手振りを見せる。太田は「わからないっすけど」と返す。ん? 何のやり取り?

 

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 和美、家から車で来たの? わからないっすけど。うーん、おかしい。和美、ハンドルの入り方はどうや? わからないっすけど。これも違うだろう。リフトのほうをふっと覗き込む松井。そして、ふたたびハンドルを操作するアクションを見せると、太田は立ち上がって歩き出し、ちょうど戻ってきた西村拓也のボートのほうに向かった。なるほど。西村のボートにはすでに「試」のプレートがついている。今日はもう試運転をしないのなら、モーター架台が必要になり、太田はその担当を買って出たのだろう。しかし、試運転をするなら架台は必要ない。したがって、両者のやり取りの正解はこうなる。和美、ニシタクは試運転するの? わからないっすけど、とりあえず架台も用意しときます。だから何だというわけでもないが、松井も太田もリラックスした雰囲気だったというわけであります。

 

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 さてさて、1Rで平本真之が1着。今節はまくって張られ、2マークで弾かれと、どうにも展開に恵まれていない。昨日までで厄は落ちたか、今日は反対に展開ドンピシャ。西村拓也が2コースからまくった内ふところに差しをねじ込んで、今節初勝利をあげた。ただし、平本はどちらかといえば苦笑い含みで、展開に恵まれた感たっぷりだ。ここまで恵まれてなかったのだから、喜んでもいいと思うのだが、そういう気分にはなれないか。勝利者インタビュー後に、やったねと声をかけたら、「やっと……」とつぶやいてまた苦笑い。どうにも納得できない予選道中、ということか。残りのレースで少しでも鬱憤を晴らせればいいっすね。

 

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 2Rは濱野谷憲吾がまくり差しで1着! ここまでの調整および試運転がようやく実ったかたちだ。こちらは平本とは対照的に、実に嬉しそうにしていたぞ。中野次郎から声をかけられると、装着場じゅうに響き渡る呵々大笑。濱野谷本来の得意技であるまくり差しが決まったことも、気分を爽快にしたことだろう(最近の濱野谷の決まり手はまくりが圧倒的に多い)。石渡鉄兵に粘られたあたり、足はまだまだ仕上がり途上と見えるが、少なくとも気分は乗ってきたはずだ。もう一丁!があっても不思議ではないぞ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)