BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――忙中笑あり

 

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 前検、無事に終了! 台風接近のなか、どうなることやらと気を揉まされた前検日だったが、特に何事もなくスケジュールは消化された。終わるころには雨も上がり、その少し前には西の空が夕焼けに染まってもいた。それぞれにイレギュラーな時間を過ごしたりということもあったが、何はともあれ、戦いの準備は整った。明日からはいつもと変わらぬSGの熱戦が繰り広げられるだろう。

 選手の動きも、取り立てて変化はなかった。水面一番乗りの常連・田中信一郎が残念ながら不在なので、辻栄蔵が着水一番乗り、井口佳典が試運転一番乗りというのが、なかなかレアなシーンではあったが、別に彼らがそれを意識して動いたわけではない。重鎮・江口晃生も素早い動きを見せていて、これはよく見る光景なので、誰もがいつも通りに前検のルーティンをこなしたということだ。

 

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 全体の雰囲気は、空模様とは違って、和やかに思えた。もっとも、前検からピリピリしているなんてことはありえないことであって、これもいつも通りではある。もちろん誰もが慌ただしく動いてはいる。装着作業が始まったのは17時前後、1班(ドリーム組)のタイム測定とスタート特訓が18時からと、特に前半組(1班から5班。登番でいえば4024井口佳典まで)。は時間が極端に限られている。その間に、丁寧な装着作業、試運転、選手によってはペラ調整とこなさなくてはならないわけで、のんびりしている時間などないのだ。そうしたなかで、たとえば同期同士の中野次郎と市橋卓士がモーターを挟んで談笑したり(中野のモーターは番号が黄色プレート=上位機であり、それを市橋がからかっていた)、篠崎元志が報道陣に笑顔を振りまいていたりしており、眺めているだけでも楽しくなってくる。

 

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 1班がタイム測定とスタート特訓を終えて陸に上がってきたときには、こんなシーンがあった。ボートのカウリング部分にヘルメットを置いていた山崎智也が、関東勢のヘルプによりエンジン吊りを終了。ありがとうございましたぁ~!と大声をあげたとき、「先輩、ヘルメット忘れてますよ」と須藤博倫がヘルメットを取り上げている。智也は、ありがと、とばかりに受け取ろうとするのだが、須藤はなかなか手渡さず、ヘルメットを両手で大事そうに持ち、表彰式で賞状を渡すかのように厳かに差し出した。いきおい、厳粛に受け取る智也。それを見ていた長田頼宗が、パチパチパチパチパチ!と大きく拍手したことで、表彰式というよりは勲章か何かの授与式のような光景になっていた。何じゃこりゃ、とでも思ったのか、3人同時に大爆笑! エンジン吊りの喧騒のなかで、即興のコントが展開されていたわけである。

 

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 すべてのタイム測定とスタート特訓が終わったのは19時15分頃。1班のそれが終わったのが18時10分前くらいだから、ものの1時間ですべての前検航走は終了する。順次、それを終えた者から調整作業などに入るわけだが、19時50分頃までには作業をすべて終えなければならないので、やはり時間がふんだんに残されているというわけではない。だから、その間も慌ただしい空気は消えることはない。

 松井繁はかなり粘ってペラ調整をしていたほうだと思う。1班だからもっとも早く前検航走を終えているわけで、最終9班が陸に上がったあとも、まだまだペラ室を出るつもりはないようだった。松井の引いた28号機は2連対率26.4%。会見では開口一番、「正直わからない」と言っており、また「モーター勝率との兼ね合いで、どこで妥協するかということですね」とも言っている。翻訳すれば、モーターの素性からすると抜群までには至らないだろうが、回転を合わせるなどして可能な限り引き出したい、ということになるだろうか。ボートレースは“誰が超抜か競走”ではないのだから、戦える足になりさえすれば、あとはレース次第、ということにもなるか。そのための調整を、前検からびっしりやる。この時間をのんびり過ごすわけにはいかない。

 

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 同じくドリーム会見の開口一番が「悪かったですね」だった森高一真も、その後はもちろんペラ調整。前検はペラの形を見ることもなく、もらったままで乗ったそうだから、改めてペラをチェックした後に、まずは自分なりの理論で叩いていくということだろう。で、その森高がなぜかゴキゲンなのだった。昨年のメモリアルもドリーム出走で、6号艇で1着。3連単4マンシュウを叩き出している。今年は5号艇での再現あるか、というところで、本人も「今年も大穴あけるつもりで明日はやります」と言っているのだが、コース獲りを聞かれて「前付けしたら配当安くなるからねえ」と満面の笑み。締めは「明日は4~5万めざして頑張ります」とまた笑顔なのだから、コワモテキャラではない森高の“素”が出まくりなのである。

 というわけで、作業を終えた森高に「明日、5マンシュウ、ごっつぁんです!」と話しかけたら、「おぅ、5万もつけりゃ充分やろ!」。「去年の4万は獲ったんか? 獲ってない? クロちゃんは獲ってないんか! へぇ~」と凄まれもしたわけだが(笑)、ゴキゲンであることには変わりはない。ドリーム戦、⑤から4~5万つくところを本当に買ってみようかな……。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)