BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

桐生メモリアルTOPICS 3日目

まだまだ王者

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221210814j:plain

 

 今日、うむむぅと唸らせたのが8Rの王者・松井繁だ。このレース、あまり足色の良くない下條雄太郎が4カドからスタート任せの絞りまくり。内3艇の舳先をかすめるようなギリギリの強攻だったから、まくられ3艇のダメージはそれなりに甚大だった。が、2コース松井の「まくられ差し」のハンドルの早かったこと。まくられた瞬間に戦略を切り替え、すぐに小回りの鋭角ターン。5コースから絶好のまくり差し展開だった原田幸哉をブロックする形で先頭に立った。あと1秒でも判断&アクションが遅れていたら、幸哉が一撃で突き抜けていただろう。

 さらに称賛すべきは、このターンを実現した整備力だ。昨日までのターン足だったら、あれほど俊敏には反応しなかったはず。この直前の展示航走で、私の隣にいた元SGレーサーが「松井の回り足がめちゃくちゃ良くなってるぞ!」と興奮していた(残念ながら、私にはそこまでわからないのです><)が、まさにそれを実証する小回りパワーだった。松井自身も勝利者インタビューで「このモーター(2連率26%)としては最高の仕上がり」とゴキゲンだったなぁ。何千回も記念1マークの修羅場をくぐり、地道に自分流の整備を貫いてきたからこその1着。この10点増しで、一躍5位に浮上したのも「なんだかんだ松井」らしい。匠シリーズの一員になった松井だが、まだまだ「王者」の称号は揺るぎなさそうだ。

 

シンデレラ・スリット

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221210829j:plain

 

 1マークで唸らせたのが松井なら、スリットで唸らせたのが11Rの菊地孝平だ。今さらながら、恐るべきスタート力!! まず、昨日までの3戦がコンマ07、07、08。数字だけを見ると「菊地なら当たり前」程度だが、今節はスリットからの伸び具合も素晴らしい。行き足~伸び自体は中堅上位レベルだから、つまりは全速で突っ込んでいる。

 なんか、今節のキックはいつもよりヤバイな。

 初日から、そんな警戒心を抱かせるスリットの勢いだった。私の勝手な三段論法は、こうだ。

①完全に諦めていた予備3位で、まさかの繰り上がり参戦になった。

②「はじめから自分の中にはなかったSG、強気の攻めが空振りしても元より失うものは何もない」と開き直った。

③で、「いつにも増して、自分の武器であるスタート力を生かそう、できる限り起こしから握りっぱなしで攻めよう」と決心し、実行している。

 って感じではないかなぁ、と思っていた。この当否はともかくとして、今日のスタートはまさに菊地の真骨頂。5コース、ダッシュ起こしからぐんぐん突き進んで、コンマ03!! 見た目ではっきり全速とわかったし、勝利者インタビューで「起こしから握りっぱなしでした」と本人も言いきった。なんちゅうか、怖いものなし、みたいなド迫力のスリットだったから、内の4艇はたまらない。「まくりブロック男」として有名な?井口佳典も、インコースから菊地のまくりに抵抗する素振りすら見せなかった。スタート一撃の5コースハコまくり。凄すぎる。

 初日から怒涛のスリット攻勢で予選4位に立った菊地。明日の3R2号艇でも一気にまくりきったりしたら、予選トップも十分にありえる。で、優勝でもしようものなら「予備3位からのSG制覇」という、絵に描いたようなシンデレラ・ストーリーが生まれてしまうぞ。そんなメイクミラクルをやらかした選手って、過去にいるのかしらん??

 

まさかのヒロリン

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221210843j:plain

 

 あれれ、いつの間に?

 須藤博倫には申し訳ないが、それが偽らざる実感だ。3日目を終えて、予選トップ! 初日はイン逃げ、2日目は4コースから道中粘って3着だからして、「まあ、艇番なりの活躍だな」程度の印象は仕方のないところ。やっぱ、大きかったのは今日の6・5号艇の2戦だな。これまたヒロリンには申し訳ないが、「展開がめちゃくちゃハマッた」という印象は否めない。

 まず6号艇6コースの3Rは、3コース篠崎元志が強引な絞めまくりで内2艇を大掃除。しかも元志自身はフライングに散り、ダッシュ勢の天下となった。6コースの須藤はセオリー通りの最内根っこ差し。内2艇が死に体だったためバックで楽々3番手に浮上し、2番手の元志が戦線から離脱した瞬間にほぼ2着が約束された。

 5号艇5コースだった9Rも、絶好の展開が生まれた。4カド桐生順平が締めまくりでスロー勢を大掃除。同県の後輩をぴったりマークした須藤は、ぽっかり空いた花道に差しハンドルを入れて先頭に躍り出た。「順平さまさま」の1着。

 なんだか「すべて他力」みたいな書き方になってしまったが、運も実力のうち。この超ラッキーな18点で暫定トップに立ったヒロリンは、明日、2号艇で1着ならぱ自力トップが確定する。で、トップを獲ってしまえば、残る2戦を逃げきるだけ(とりあえず、今は簡単に書いておこう)。

 いつの時代も、伏兵と呼ばれるレーサーが優勝するときには、それなりにビッグな幸運がいくつか重なるものだ。すぐ目の前に忽然と現れたチャンスの神様。ヒロリンはその神様の前髪を掴み取ることができるだろうか。そのための心の準備があるだろうか。明日の11R=2位・石野貴之や5位・松井繁との直接対決が、大きな大きな正念場となるだろう。

 

f:id:boatrace-g-report:20171221210857j:plain

 

 

 最後に……ヒロリンが勝った9Rで、遠藤エミは6着に敗れた。恐れていた重い着を取ってしまった。4カド桐生がまくった展開での6コース。もちろん、エミにとっても大チャンスだった。で、1マーク途中までのターンも素晴らしく速かった。ヒロリンの上を超えて全速で握ったまま、艇団に突っ込んで行った。うむ、ここからだ。私の目には、そのまま全速で突き抜けるべきスペースは、それなりにあった。そう見えた。しっかりハンドルを入れれば、一気にアタマまで突き抜けた、と思う。が、おそらく何らかの危険を感じた(または、入れるべき間隙を見失った)エミは、スッと減速して艇団から離れた。この瞬間、1着から6着に推移したと私は思っている。

 エミのターンは男子顔負けの速さだが、初動からそのターンを実現させるまでの判断が遅い。

 今節、私がエミに対して何度も感じた“弱点”が今日も露呈した。女子レーサーと走ってばかりいる弊害だ、と言わざるを得ない。この6着、残念すぎる。(photos/シギー中尾、text/畠山)