BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――いざ、勝負駆け!

 

 

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 さあ、勝負駆け。昨日の午後イチに比べると、ピットの音量はずっと上がっている。報道陣がじわじわ増えてきていることもあるが、選手の動きも昨日より激しくなっているように思える。プロペラを叩く音も、かなり大きく響く。そんななかでもひとつ、ガツンガツンとひときわ大きく聞こえてくる打突音があったので、その主を確認したら、中島孝平。今日は1着2着条件の勝負駆け。悔いのない調整で戦い抜こうという姿勢が見て取れる。この叩き直しが奏功するかどうか。7Rまでには試運転できっちり乗り込んで、臨戦態勢を整えていくだろう。

 

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 1R、茅原悠紀が道中逆転で2着。ツケマイで一気に内を交わしていく、茅原らしいニュージェネターンだった。茅原も今日は1着2着条件の勝負駆けだ。まずは第一関門クリアで、目元に笑みが浮かんでいる。カポック脱ぎ場では先輩たちに声をかけられて、笑顔がぐっと深くなった。その後は、ヘルメットを乾燥機のなかに入れ、青のカポックを手にして、休む間もなく、自艇のもとに向かった。すれ違いざま、「これで後半1着獲りですわ。っしゃっ!」と気合を入れつつにこやかに笑いかけてきた。その動きの素早さといい、次のレースへの気合という、まさに勝負駆けである。

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 2Rは、これまた1着2着勝負の池永太がイン逃げ快勝。他の福岡勢5人が口元をほころばせて出迎えるなか、にっこりと笑ってピットに上がってきた。勝って第一関門突破だから、気分がいいに決まっている。後半レースがあり、他艇の水しぶきを受けてもいないので操縦席から水を吸い取る必要はなく、ボートをそのまま装着場の空きスペースに移動して、あっという間にエンジン吊りは終了。それでもしばし6人は笑顔でレースを振り返り合い、池永は輪の中心で笑みを絶やすことがなかった。いい精神状態で、2着獲りの後半に臨んでいけるだろう。

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 1着2着条件といえば1Rの深川真二と江口晃生も同じ条件なのであった。この組み合わせは一昨日もあって、枠が外のほうが前付けして、内のほうが譲らず、という同じパターンになった。残念ながら揃ってほぼ終戦となってしまったわけだが、進入から盛り上げてくれた貢献度は大きい。ピットに上がってきたときにはそれぞれに顔を歪めていたが、エンジン吊りが終わって顔を合わせるとニッコリ。結果はともかく、真っ向から戦い合ったという感覚はあっただろう。その姿は、戦友が健闘を称え合う姿。一般戦でも再戦が実現したら、また火花を散らし合ってくれるだろう。

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 準優ボーダーを争う勝負駆けも熱いが、予選トップを争う戦いも熱くなりそうだ。3日目時点の1位2位が直接対決する11R。須藤博倫がSG初制覇のチャンスをつかむのか、石野貴之がSG2連続優勝にぐっと近づくのか、興味深い一戦だ。

 二人の様子はというと、特に石野貴之が普段と変わらぬ雰囲気。凛々しい顔つき、鋭い目つき、それでいて仲間とふれあうときには柔らかい笑顔。作業はギアケース調整からプロペラ調整で、バタバタすることもなく過ごしている。須藤博倫も、基本はいつもと変わらないように見えるが、すれ違いざまに挨拶を交わした際の表情が、この状況をしかと受け止めて気合を入れているかのような、普段以上に神妙なものに見えた。緊張しているとはあまり思わないが、しか特別な状況であることは自覚していると思う。

 

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 カギを握るのが3Rを走る……いや、先ほど走った菊地孝平で、得点率上位陣ではもっとも早く予選最後のレースを終えた。上位着順を取れば、その後に走る上位陣にプレッシャーをかけられるという状況で、気合もぐぐぐっと高まっている……かと思いきや、むしろ普段よりリラックスしているように見えた。個人的にわかりやすいのは、すれ違ったときの態度。足的に厳しかったり、調整にドタバタしているときには、歩いている最中でも脳内コンピュータフル回転だから、こちらにはまるで目もくれないというか、気づかない(だからこちらも、思索の邪魔しちゃいかんと声をかけない)。しかし今日は、菊地のほうから気づいて、目をぱっと丸くして、こんちわと言ってきた。足的にもリズム的にも余裕があるのが明らかである。3Rは2着。得点率は8・00をキープだ。須藤、石野が大敗すれば逆転充分なポジションで予選が終わるのを待つ。どんな思いで、残りのレースを見守るだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)