BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――金言

 

 

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 昨日終盤の時間帯、青木玄太がボートに試運転のプレートをつけて、係留所にいた。しかし、試運転に向かう気配はない。エンジン音はずーっとしていて、青木自身は操縦席でじーっとモーターを見つめている。ボートを係留所につけたまま、エンジンをフル回転でひたすら回し続けているのだ。そして今日も、同じ様子が見られた。もちろん理由がある。

「新品のスリーブを出してもらったんです。新品のスリーブに交換すると、時を経たほうが足の上積みが来るんですよね。トルクはすぐ来るんですけど、足の上積みには時間がかかるんです」

 ようするに、モーター全体に馴染むのに時間がかかるということだろうか。そのため、青木はエンジンをとにかく回し続け、長く使うのと同じ状況に持っていこうとした。試運転よりも、係留所につけたまま全開にしたほうが、長く使ったのと似た状況に早く近づく。ハマってくると伸びる感じになるそうだが、青木も実際、感触は良くなっているそうだ。

 昨年のヤングダービーでは、強い追い風のなか2コースからツケマイを決めている。あの追い風でよく握りましたね、と尋ねると「追い風が強いからインは落としますよね。だから、かかりをとにかく来させる調整をして、インが落とした瞬間に握ったんですよ」と答えている。青木玄太、なかなかの理論派である。青木に話を聞くのは実に楽しいのだ。

 

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「○○と思ったらダメなんだよ」

 桐生順平のそんな言葉が聞こえてきた。○○が聞き取れなかったが、どうも後輩にアドバイスを送っているらしい。相手はと見ると、これが菅章哉。期は違うし、支部も違う。そんなことは関係なく、桐生は話をしていたわけだ。

 

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 二人の接触した場面を見逃しているので、どちらが声をかけたかはわからない。時は2R発売中で、菅は1Rを走り終えたあとに7Rの準備をしたのだと思われる。そこで二人が顔を合わせたのだろう。どちらから声をかけたのだとしても、いずれにしても天晴な姿勢。菅にとって、今をときめく桐生とこの舞台でふれあうことができたのは大きな経験のはずだ。桐生にはトップを走る者だからこその思想、理論、哲学があるはず。それは、追いかける者にとっては間違いなく金言である。

 

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 さて、昨日は初日の大暴れからややトーンダウンしてしまった曲者軍団。2Rでは西川昌希が1号艇で2着。1マークでまくり差されたものの、2マークでは差し返して勝ち筋ができていただけに、2周1マークでツケマイを打たれたのは痛かった。その相手が、嗚呼、因縁のニュージェネ・深谷知博。いちばん負けてはいけない相手にやられて、西山貴浩が「あかんわあ。お手手の差や」と嘆いていた。ピットに戻った直後は、その西山と笑えるやり取りを繰り広げていた西川だが、一人になるとスーッと顔が曇る。1号艇を活かし切れなかったこと、深谷に力の差を見せつけられたこと、その両方が悔しさを募らせるものになったのだろう。2着だから、勝負駆けには残った。明日はさらなる曲者ぶりを発揮して、昨日と今日の鬱憤を晴らせ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)