BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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常滑ヤングダービーTOPICS 4日目

 

THE勝負駆け①予選トップ争い

大志郎、奮迅の逃げ

 

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 現在、この原稿を書きはじめたのは午後3時18分。つまり、現時点で今節の予選トップレーサーがすでに決まっている。桐生でも仁志でもなく、松田大志郎。まずは、今日のトップ争いの流れを簡潔に記しておこう。

3R桐生5着=自力トップ消滅→自力権利は宮地元輝へ

5R宮地3着=自力トップ消滅→自力権利は松田大志郎&小坂尚哉へ

 そう、先の中間速報で「自力権利は大志郎へ」と報告したが、実は小坂にも自力チャンスがあった。9Rが直接対決なので小坂が勝てば暫定トップ大志郎は2位以下。ギリギリ逆転できるのだ。

 

 

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 で、その9R。進入から大変なことになった。5号艇の曲者軍団・山口達也(準優へピン条件)がガチでイン強奪に動き、大志郎は敢然とそれを受け止めた。その瞬間にスッと緩める達也、ひとりスタート方向に舳先を向けた大志郎。ずんずんずんずん、深くなる。もはやこの時点で、深イン大志郎と5コース小坂のトップ期待値は同じくらいになったかも知れない。

 

 

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 12秒針が回ったとき、すでに大志郎は100mラインを軽々と跨いでいた。90、85……ジャスト80m起こし!! しかもしかも、2コースの曲者達也は完全に踏み遅れている。勢い、3コース上條のスピードが神がかって見える。絶体絶命に見えた大志郎だったが……深インを覚悟していた大志郎は、非常事態のリーサルウェポンを心の倉庫から取り出した。電撃スタート。そう、この男には命知らずSという武器があった。コンマ04! 3コースの上條が13だからして、半艇身以上のアドバンテージ。その利を生かして、大志郎は1マークでケリを付けた。予選トップ、確定。

「優勝は大志郎で決まり!!」

 隣の黒須田が叫んだが、確かにこのイン逃げの意義は大きい。単に予選トップと言うだけでなく、この度胸満点の勝ちっぷりが明日以降の流れ、リズムにも関わってくるだろう。F1持ちではあるが、田頭実の後継者候補?である大志郎にとってこの程度のハンデは蚊に刺された程度にも感じていないだろう。

 

THE勝負駆け②予選ボーダー争い

曲者コンビ、プチ暴れ

 

 

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 9Rであっさりケリが付いたトップ争いに比べ、準優ボーダー付近は最後の最後まで大激戦。とは言え「ピンピン連勝で大逆転」みたいなド派手なパフォーマンスはなく、逆に「5着だけどギリギリ生き残った」的なちょいと粘っこいクリンチ合戦のような様相ではあった。その代表格が西山貴浩だ。7R6号艇の西山は④着で6・00だったが、1マークで決めきれずに道中はギリギリの4番手。さらに、5番手の樋口由加里にジワーージワーーと詰め寄られ、あろうことか最終ターンマークで逆転の差しを喰らってしまった。勝率5・67でピットに帰還した西山は、ボートの上で大の字になって横たわり微動だにしなかったとか。まあ、その後のボーダーを行ったり来たりの西山泣き笑い劇場は、ピット班に譲るとしよう。

 こんな感じでスッキリ決めきれない面々が続出し、レースが終わるたびに6・00前後の選手が増えてゆく。その最低ノルマを守りきれずに脱落選手も多く、ボーダーは細かく変動しつつもジリジリ下がっていった。最終ボーダーは5・50。一度は舟上でフリーズした西山も、17位でなんとか息を吹き返した。

 

 

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 今日、もっとも勝負駆けっぽい気合を見せてくれたのは、やはり曲者軍団の山口達也だった。メイチのピンピン勝負だった達也は、まずは1Rで4号艇で3カドに引いた。その3カドまでの経緯が、まさにクセモノ臭プンプン。6艇の中で真っ先にホーム水面に入り、いかにも「ちょいと、私にスローの3コースをくださいな」みたいな腰の低い感じでゆっくり艇を流し、3号艇の青木玄太が「はいはいどうぞ、じゃあ僕は4カドにしまーす」と艇を引いた直後にガオーーーッと達也も舳先を翻したのである。好プレーか珍プレーかはようわからんが、赤ずきんちゃんのお婆ちゃん(狼)か、あんたは!

 が、いざ3カドに入ってからの達也は男前の一語。バチッとコンマ12全速でスリットを超え、ほぼ同体に近かった内2艇をダッシュの勢いでまくりきってしまった。進入から起こしからスリットから1マークから、すべてに勝負駆けのソウルが溢れていた。

 それでもまだピン勝負が残る達也は、後半9Rも曲者パワーをフル稼働した。待機行動では小回り防止ブイを強烈なモンキーターン(全速かも??)でかっ飛ばして大志郎に襲い掛かり、抵抗されるやレバーオフ(笑)みたいな。ここまでは見事な陽動作戦ではあったが、画竜点睛を欠いた。スタート、ドカ遅れ。これにて達也のヤンダビVの夢は散ったわけだが、「今日の俺様はメイチのピンピン勝負だ!!」というオーラがはっきり水面に投影されて、やっぱこの男は面白い(=『艇界の暴れる君』PART2に相応しい)と再確認させてもらった。お疲れさん、達也!

 

 

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 あ、そうそう、道中で西山に冷や汗をかかせた樋口由加里は、曲者キラーができるくらいの足に仕上がっていたと思う。気合もパンパン、待機行動では西山にコースを譲らなかったし、道中では西山に対して切り返しなどの荒業も繰り出した。すでにアウトの身の上で勝負駆け選手以上の気迫を感じたのだから、おそらく明日も下りることはないだろう。3・5号艇という枠も魅力たっぷりで、ちょいと舟券に絡めようなどとこっそり考えている。(photos/シギー中尾、text/畠山)