BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――やるべきことをやり尽くす

 

 

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 ヤングダービーを挟んで2カ月ぶりのSG。若手選手の瑞々しい前検作業を見た後に、トップスターたちの作業を眺めると、やはりこちらには重厚さが漂っているように思える。若武者たちももちろん、手も気も抜かずに作業をしているわけだが、この舞台ではさらにそこに大きな意味が見出せるような気がするのだ。

 福岡の整備室には、整備状況が示される大きなパネルがある。最上段は「パワーユニット分解点検」、すなわち本体をバラしての整備をあらわすが、早くも「66」というモーター番号にその印がついている。66号機は西島義則。前検から本体をバラして素早く整備を行なうというのは、西島のルーティン。7班あたりのスタート練習&タイム測定の頃にはすでに作業を終えて、余裕の表情でたたずんでいるのだから、なんとも仕事が早い。この積み重ねが西島義則を形作ってきたわけで、トップに立つということの意味を教えてくれる。

 

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 もう1基、「64」にも本体整備の印がついていた。これもルーティンだ。赤岩善生。今回は数字のないモーターを引いた赤岩だが、仮にエース機を引いたとしても最低でも本体の点検は必ず行なう。今日は何しろ、最後の最後まで、16時を過ぎても整備をしていたから、作業の内容や感触については尋ねることができなかったが、今日も今日とて赤岩スタイルを貫いたのはさすがである。明日は10R1回乗りだから、きっと前半の時間帯には整備室で姿を見かけることになるだろう。

 

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 2連対率70%を超えるエース機を引き当てた菊地孝平。SG2連続優勝への期待が一気に高まっている。前検航走を終えたあとはプロペラ調整所に陣取り、ペラ調整。これ自体は何にも不思議なことではなく、当たり前の光景なのだが、驚いたのはかなり強力にガンガンとペラを叩いていたことだ。70%超のモーターなのに! それについているペラなのに! この思い切り、もしくは「とにかくやるべきことをやり尽くす」という姿勢が、菊地孝平の信条ということだろう。もちろん、70%の手応えがなかったから叩いたのかもしれない。しかし、好感触だったとしても、菊地はきっと己の信念に沿っていたことだろう。賞金ランクトップ快走はたまたまだとしても、そこの位置にいておかしくないだけの理由を、今日の菊地に見たような気がした。

 

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 ペラをギリギリまでやっていた一人が茅原悠紀。茅原は、前検航走を終えて整備室に入ったあとは、最後まで一度たりとも整備室を出ることがなかった。まずは本体整備テーブルに向って、おそらくはキャリアボデーの交換。話しかけるスキがなかったので本人に確認はしていないが、整備後に整備士さんがキャリアボデーを手にしていたから、交換した可能性アリと見ている(明日の直前情報をご確認ください!)。その後はギアケース調整をし、それを終えてペラ調整室に飛び込むと、最後の最後までひたすらペラを叩いていた。あのスーパーターンは、もちろん茅原のテクニック、身体能力がなせる業ではあるが、この徹底的な調整の下支えがあってのものでもあるわけである。

 

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 さてさて、びわこ周年で久々のGⅠ制覇を果たした湯川浩司が、勢いに乗ってSGに乗り込んできた。昨年12月、僕は湯川にまさにびわこでインタビューしている。掲載はBOATBoy2月号で、これは1月11日発売。今年一発目のBB誌で、湯川に今年の意気込みを尋ねたものだ。そこで僕は、湯川に「2016年の公約を示せ」と迫っている。湯川が口にしたのは「GⅠ優勝」。SG制覇がもちろん目標ではあるが、最低でもGⅠは勝つのだと湯川は宣言したわけだ。お見事! 見事に公約をクリアしました!「奇跡やね」と湯川は笑うが、マニフェストを忘れてるような政治家より何倍も偉いぞ。もちろん、あとは年末へ向けてスパートをかける。「頑張りますわ」と笑う湯川の表情はひたすらに明るい。

 

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 あ、あと、好モーターを引いた鎌田義の表情も悪ない、悪ない。いいモーター引きましたね、の問いには、「そうみたいやね」とクールに返すのみだったが、顔つきはかなり明るかった。SG復帰戦を華麗に戦うカマギーが見られる可能性は充分と見た!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)