BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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福岡ダービーTOPICS 初日

価値ある12点

 

 

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 ドリーム1号艇の平山智加が女の意地を魅せつけた。今日の“敵”はレーサーだけではなかった。まずは、プレッシャー。女子レーサーでSGドリーム1号艇は、それだけで半端のない重圧だろう。ファンの中には、「女子戦のシード番組で稼いだトップ勝率」と辛口の見方をする人(正直、私もそのひとりだ)も少なくないはずで、そんな“風圧”も心の重荷になりかねない。

 さらには、イン受難として有名な福岡水面。夕暮れ時に多発しやすいと言われる博多特有の「うねり」。それを助長するような潮流(干潮→満潮で博多湾から潮が流入)。そしてそして、2~6号艇はSGドリーム戦を走り慣れた屈強な男たち。さすがにSG優勝戦の1号艇(過去に寺田千恵が経験)ほどではないだろうが、それに準ずる難関だったはずだ。

 そんなあれやこれやの逆境を、智加はすべて蹴散らした。スタートは腹を括ったコンマ03、おそらく全速!! 超男前の踏み込みで主導権をしっかり握り、1マークのインモンキーも120%完璧なターンだった。プレッシャーやうねりへの恐怖心、それらをまったく感じさせない絶品ターン。回った瞬間、「逃げきった」と確信させる旋回だった。

 

 

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 たかがイン逃げ、されどイン逃げ。

 今日のイン逃げの意味はかなりでかい。とりわけ女子レーサー界にとっては、金字塔と呼ぶべきほどの重みがあったと思う。逆にスタートで遅れて大敗でも喫したら、辛口のファンから「やっぱりね」と冷笑されたかもしれない。大げさでもなんでもなく、今日の智加は「絶対に負けられない戦い」で自分自身に勝ったのである。

 とは言え、女子レース界に与えた影響が大きいというだけで、このダービーでは「点増しの1勝」に過ぎないのも事実。自力で勝ち取った12点=暫定トップを、どこまで最終日まで活かしきることができるか。かつてのテラッチのように、今日よりももっともっと過酷かつ有意義な1号艇を目指してもらいたい。心を込めるだけ込めて。

 

ピンピン順平、万券ラッシュ

 

 

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 桐生順平が異次元ターンで開幕2連勝を飾った。前半2Rは5コースからのまくり差し。一撃で突き抜けたわけではなく、バックで逃げる上平真二に数十センチほど舳先を掛け、そのわずかな“命綱”を頼りに強引に2マークを先取りした。マイシロはないわ、上平のツケマイを浴びるわ、並の選手なら流れて飛んで終わったかもしれない。が、桐生のターンはしっかり水を噛みしめ、真っすぐ前に突き進んだ。

 後半8Rはさらなるサプライズだ。まずは1マーク、2コース今村豊のまくりに乗ってのマーク差し。これはわずかに届かず、早々に2-3態勢が固まった。今村との差は、2周ホームで軽く3艇身以上はあっただろう。が、“逆転の桐生”はもちろん諦めない。2周1マークは全速でぶん回して2艇身差。そして2周2マーク、これだけの差がありながら、一撃の鋭角ターンでミスターの内懐を突き抜けた。そのターンの初動の光景は、今も網膜に焼き付いている。やや極端に言うと、ミスターの舳先がまだスタンドに向かっているときに、桐生のそれはスタート方向に向いていた。2艇身遅れだったのに!

 

 

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 うむ……ミスターを応援する私としては、この大逆転劇を単純に「ターンスピードの差」と片付けたくはない。2Rもそうだったが、今日の桐生54号機のパワーはサイドの掛かりが強力なのだ。見るからに乗りやすそうで、思ったところに舳先が向く軽快さも感じた。だからしてパワー差もあったと思うのだが、うん、それにつけても凄まじいターンではあった。

 5号艇と3号艇でピンピン連勝スタート。桐生の実力を踏まえれば、この20点のアドバンテージはかなりでかい。パワーも回り足を中心に上位レベル。初日にして、ダービーキングの有力候補になったとお伝えしておく。

 

独断パワー診断

 

 初日の全レースをつらつら観戦して、現状のパワー相場がそれなりに見えてきた。やはり、「スリットから一撃でピンラッシュV濃厚」みたいな怪物級は見当たらない。不動のエースと目された菊地孝平59号機も4着に敗れ(スリット付近の行き足は上々、今日は回転が合わずにキャビっていた。今後の良化は間違いなさそう)、前検で大評判だった石野貴之39号機も5着大敗(いきなり笠原亮の引き波をモロに食らったので、正味のパワーは不明)。確固たる主役不在の戦国ダービーだと思う。

 そんな中、「A+」の評価を与えたいパワーが3つほどあった。簡潔に紹介しておこう。

★坪井康晴=68号機

 

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 前検の見立てどおり、行き足~伸びがゴキゲン。スリットから存分に主導権が握れる足だ。ターン回りもソコソコしっかりしていそうで、スタート遅れやターンミスがない限り舟券から外れないと思う。

 

★白井英治=29号機

 

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 前検では「悪くないな」という程度だったが、実戦足が凄まじい。ストレートよりもターン回りが力強く、引き波を超えるときにギュンッと伸びて行った。2戦連続、そこの足で逆転しているから、見間違いはないだろう。この足を維持したまま直線を強化できれば、文句なしのV候補だ。

 

★守田俊介=15号機

 

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 坪井に似たタイプで、行き足~伸びが強力。ぐんぐん追い上げが利いたから、俊介が常に追い求めている乗り心地も上々だろう。坪井よりやや直線で劣り、その代わりにターン回りは強め、という感じか。しっかりと51キロまで落として、ダービー連覇を目指してほしい。パワー的には十分にありえると思う。

 

 今後の仕上がり次第で、この中からSSまたはS級に昇格するモーターが出そうな気がしている。で、このトップ3と僅差で「A」に推したモーターが鈴なりだ。短評とともに列挙しておこう。

★鎌田義75号機…出足~行き足中心に全部が強めのバランス型

★湯川浩司26号機…伸びは坪井と同等かそれ以上、ターン回りがやや甘そう。

★平山智加45号機…伸び型だったはずが、やはり出足~行き足の部分が強力。

★魚谷智之53号機…5着大敗も道中の追い上げに光るものあり。回り足が強い。

★山口剛42号機…前半は上々で後半はチグハグ。合えば行き足が強力。

★岡崎恭裕46号機…これも前半良くて後半ダウン。バランス型。

★後藤翔之58号機…意外な鬼足? ターンの出口からスッと伸びるレース足◎。

★桐生順平54号機…前出。直線は中堅レベルも回って力強い。混戦向き。

 これらに、巻き返し必至の菊地59号機、石野39号機も加わるはずだ。まさに群雄割拠、ことパワー相場に関しては「V戦線は大混沌」とお伝えしておく。(photos/シギー中尾、text/畠山)