BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――飽くなき調整!

 

 

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 瓜生正義が本体を割っていた。2日目を終わってみれば予選トップ。2勝2着1回の堂々たる成績だ。にもかかわらず本体を割るということは、何か異常事態が!?

 本人に聞かずとも、そうでないことはわかる。これはいわば瓜生のルーティンで、どんなに出ているときでも一回は本体を割って、点検をしたり、出ている場合はいろいろな数値がどうなっているかをチェックして次に活かす。出ているモーターは壊すのが怖いから分解したがらない、という選手の心理を耳にしたりするが、瓜生にはそうした発想はないのである(赤岩善生も同様のタイプだ)。

 で、現在発売中のBOATBoy11月号に掲載されている瓜生のインタビューで、瓜生は「最近は守りに入っていたかもしれない。本体を割って点検したりすることもおろそかになっていた部分がある」という旨の発言をしている。昨年10年連続だったグランプリ出場が途切れるなど、ここ1~2年の瓜生はらしからぬ成績となったりもしていたが、その原因にとしてあげたのがその言葉だ。そして今、そうした自分と向き合えたのだ、とも言っている。今日の点検はまさにその証しであって、瓜生らしさが本格的に復活してきたということも言えるだろう。となると、地元戦でもあることだし、このまま一気のぶっちぎり劇があるかも!? まずは明日12R5号艇の戦いぶりに注目するとしよう。

 

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 2日目終了時点で予選2位につけているのは池田浩二。池田は今朝、本体整備をしている。直前情報には部品交換はないから、大きな交換がない範囲の整備だ。調べてみると、今年のSGで部品交換はメモリアルのクランクシャフトだけ。池田の姿を見かけるのは圧倒的にペラ調整所というイメージだが、実はSG以外では部品交換も珍しいことではなく、本体ともしっかり向き合う男である。2R発売中には整備を終えて水面に向かっているが、今日の連勝で一応の成果は出たと言っていいだろう。

 瓜生と池田が上位独占、というと、あの“瓜池時代”とも呼ばれた2011年を思い出しますね。あれから5年、若手の台頭も著しいわけだが、ここぞというところではやはり強い2人だ。このダービーが最後まで瓜池時代再現の舞台となるのか、明日の10R2号艇にも要注目だ。

 

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 この2人が快走を見せるなか、毒島誠が珍しいほどの苦戦を強いられている。3走して5着6着5着。これまで抜群の立て直し力を何度も見せつけている毒島だが、今回ばかりはさすがに苦しいのか。今日も3番手浮上の目がありながらも、道中で後退。巻き返すことができなかった。

 それでも毒島は諦めない。3R1回乗りのあとも、飽くことなき調整を続けた。時折、茅原悠紀が心配そうに覗き込んだりもしていて、気が付けば帰宿バスの1便は毒島を乗せずに出発している。1便に乗るつもりはまるでなく、最後まで調整を続ける腹積もりだったようである。遅い時間帯はプロペラ調整に専念。力強い金属音を響かせていた。その一振り二振りが猛反撃へと近づいていくのか、明日7R6号艇の気配をチェックしたい。

 

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 さてさて、1便バスが出発した後は、当たり前だが、ピットに選手の姿が少なくなる。だから、11Rや12Rのエンジン吊りでは、新鮮な光景が見られたりするものだ。たとえば、11R3着の後藤翔之のエンジン吊りには、東京支部の齊藤仁のほかに、渡辺浩司や中島孝平や三嶌誠司の姿があったりする。なかなか見られない絡みである。他の関東勢は山崎智也のエンジン吊りに駆けつけていたために手薄になった後藤のボートの周りに、九州勢の出走がなかったので体が空いていた渡辺や、兵庫勢や大阪勢がわりと残っていたので近畿といえども余力のあった中島が、東京の助っ人に回った次第だ。

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 勝った菊地孝平の周りにも、寺田千恵や瓜生正義の姿が。中国では白井英治の出走があったが、寺田は菊地のエンジン吊りをヘルプしたあとにもちろん、白井のほうにも駆けつけている。また、菊地のエンジン吊りには当然、笠原亮と徳増秀樹が参加しているが、こちらを終えた後に二人は、同じ東海地区の井口佳典のヘルプにも向かっていた。少ない人数のなかで、こちらが終わったからそれで良しとはしないし、同支部同地区の選手がいないから参加しないなんてこともなく、皆が積極的に動きまくって、エンジン吊りは手際よくスピーディに進んでいくのである。

 水の上では先輩も後輩もない、という。でも実は、陸の上でも、このエンジン吊りなどに関しては、先輩も後輩もなく、皆が協力し合ってテキパキと動いている。違いがあるとすれば、水の上では敵同士、陸の上では同じ舞台で戦う仲間同士、ということか。そのメリハリもまた、水面の戦いを濃密なものにしていくのである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)