BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――12R やったぜ、初優出!

 

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 芝田浩治がSG初優出だ! 本来なら大騒ぎするであろうカマギーがF後だったせいか、あるいは同支部の魚谷智之が優出を逃したことへの気遣いもあったか、それほど沸き立ったわけではなかったが、しかし出迎える選手の顔には笑みが浮かんでいた。これまで派手な舞台で目立った活躍はなかった、しかし地道に好成績を維持してきた、さらには兵庫支部長として尼崎の支柱ともなった、そんな芝田がついにSGファイナリストとなったのだ。ダービーは一般戦主体の選手にも光が当たりやすいSGである。これがあるから、ダービーにはひとつのドラマが生まれる。

「みんな凄い人ばかりなので、精一杯頑張りたい」

 会見でそう言ったとき、会場には軽く笑いが起きている。自虐的に言ったように聞こえたのだ。これまでの芝田からすれば、そんな感覚に陥ることもあるだろう。しかし、芝田もその輪に仲間入りしたのだ。10年前の福岡ダービーでは、兵庫支部からニュースターが誕生した。今回、ニュースターと言うには少しベテラン気味かもしれないが、ならば遅れてきたヒーローが誕生してもいいではないか。5号艇で楽な戦いにはならないだろうが、個人的にはかなり気になる存在である。

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 勝った瓜生正義は、今日を緊張感たっぷりで過ごしたようである。ややスランプ気味ともいえたここ1~2年。今年に入っても、SG優出はグラチャンのみで、決して本領を発揮してきたわけではない。迎えた地元SG、瓜生曰く「まあまあ奇跡のような感じがします」という予選トップ。責任感も含めて、独特の心境になったとしてもまあ不思議ではない。

「奇跡」というのは、前検の手応えが悪かったから。苦しい戦いになると覚悟しながら、気づいてみればオール3連対で予選を切り抜けた。それは前検日にはまるで想定していない結果だったということだ。瓜生であれば充分に可能なことだと思うのだが、決して自分を大きく見せることを口にしない瓜生は、ともすれば大袈裟なほどの自分への過小評価を下したりする。つまり、機力不安があったとはいえ、「奇跡」という言葉は瓜生の“いつも通り”であり、そして本領発揮の証しのようなものでもある。

 優勝戦1号艇、瓜生は明日も緊張するのだろうか? ピットで確認したいところだが、きっとわからないだろうな。なぜなら、今日も瓜生が緊張しているようには見えなかったからだ。それを見せないのがまた瓜生らしさ。明日も瓜生らしく戦い抜くことだろう。

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 その瓜生が、カメラマンに囲まれてガッツポーズを求められた。応える瓜生にフラッシュがバシバシとたかれる。それを背中に見ながら、太田和美が右手をまっすぐ上にあげた。そしてちらりと振り向く。瓜生を祝福するアクションだったのだ。それに気づいた瓜生が、何度も頭を下げて感謝を示す。シブい笑顔を返す太田。

 次の瞬間、太田の顔が一瞬で険しくなった。後輩の勝利は称える。だが、そのとき敗退の悔恨はまだ太田の心中には渦巻いている。それを隠して瓜生を祝福したが、その“儀式”が終われば思いは自分の敗戦に向いていく。いったんは2番手を走っただけに、その心中はおおいに察せられた。太田は怒るかもしれないけど、そんな太田がカッコよかった。

 

(10~12Rすべて PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)