BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@グランプリ――過酷な短期決戦

 

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「去年とは乗り物が違う感じですね」

 明るい表情で山崎智也が言う。機力に苦労した昨年と違い、今年はかなり好感触。だったら連覇確実じゃん、というほどグランプリは、というよりボートレースは単純ではないが、初めてのトライアル1st初戦を快勝で発進できて、智也はかなりの手応えを得ているようだ。

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「普通ですね」

 言葉を選ぶように池田浩二が言う。池田はそもそも“泣きの池田”である。求めるレベルが高いから、意識的にかどうかは微妙だけれども、自分の足に対する評価は厳しめになる。ということは、「普通」というコメントを微調整すれば、悪くないということになる。実際、レースで見せた足色はむしろ良く見えたものだ。池田もまたそれなりの手応えを得ているだろう。最高の結果を出すためにさらに上を求めるからこその、「普通」のはずである。

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 というわけで、トライアル1stは初戦1着なら2nd行きは無事故完走で当確。その位置を確保した二人は、気分が悪かろうはずがない。その2人以外に関しては、過酷な戦いは続行される。今日よりもむしろ明日がより過酷かもしれない。

 重成一人は、いきなり前付けに動いた。展示では誰も譲らなかったけれども、重成は諦めずに本番でも行った。結果は2コース。これがトライアル1stだ。ただし前付けを繰り出したのは勝つためであって、やるべきことをやったから5着で良しとはならない。というより、それを今日の段階で口にするのはまだ早いだろう。レース後は茅原悠紀に、重成は長く話しかけていた。両手をボートに見立て、外から伸びられたみたいなアクションをしていたから、カドに引いた井口佳典との足の差についても話していたか。それはもちろん、明日の勝負駆けを見据えての言葉である。落胆をあらわにしていたわけではなかったが、サバサバしていた雰囲気もなかったのは確かだ。

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 平本真之は呆然とした表情になっていた。1号艇を活かせなかったことは、逃げておけば2nd行きはほぼ手中に入っていただけに、痛手である。少し心配なの敗れた平本がこのような表情を見せたことが記憶にない、ということだ。平本は、勝っても負けても、感情を隠さない。勝てば笑顔が弾けるし、負ければ表情は思い切り歪む。前者は喜んでいるのが丸わかりだし、後者はどの角度から見たって悔しさが伝わってくる。それが今日、平本は表情を消したようになっていたのだから、それをどう捉えるべきなのかが難しいのだ。トライアルの魔を前にして立ち尽くしているのか。それともある種の成長なのか。呆然と書いたように、どちらかというと前者に見えるのが何とも不穏である。明日は気持ちをしっかりリセットできるかどうかが、まず大切になるのではないかと思う。

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 一方で、わりとスッキリして見えたのは篠崎仁志。まさかの6コース回りとなってしまったが、それを考えると3着は上々か。初めてのトライアル、初戦3着は平本と同じなのだが、レース後の雰囲気はまるで違っていた。で、仁志は岡崎恭裕に、トライアル1stの得点を尋ねていた。しっかり把握していなかったようなのだ。岡崎はさすが、「ドリームと一緒」と即答している。仁志、まあまあ呑気である(笑)。仁志がゲットしたのは9点。しかしこれは決して安閑とできる得点ではない。どうせ把握していないのだったら、ボーダーウンヌンなども考えずに臨んだほうがいいんじゃないかな。枠番も枠番だし、ただ勝つことだけを考えて臨めば、道は開かれるはずだ。

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 というわけで、岡崎は自身の明日の状況をきっちりと把握しているはずだ。ピット離れ遅れが響いたかたちでのシンガリ負け。ピットに帰還し、ボートリフトの手前で岡崎は、天を仰いでいる。6年ぶりのグランプリ、その初戦で最大に不本意な結果を出してしまった。その気持ちはよくわかる。明日は、もはや勝つしかない。それを岡崎は間違いなく理解している。そのために何をなすべきか、全力で考え抜くことだろう。BOATBoy1月号のインタビューでは、「2ndに行かなければグランプリに行ったかどうかも怪しい感じになるだろう」と語っている。そうさせないための明日の戦いは文字通りの背水の陣である。岡崎が何を繰り出してくるのか、明日はしかと見させていただこう。

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 さてさて、トライアル1st第2戦の枠番は、抽選で決まる。12R終了後には、注目の抽選会が行なわれている。A組、B組に分かれて行なわれ、A組から抽選が行なわれた。イの一番に引いたのは池田浩二。いきなり白玉が飛び出して、会場はざわついた空気になっている。初戦1着の人が次に1号艇って、そりゃそんな感じになるよね。去年も峰竜太が同様で(しかも2戦連続1号艇)、やっぱりおおいにざわついたものだ。こちらは、3番目に引いた平本真之が緑を出してしまい、表情が一瞬固まっている。今日の分を取り返したいところに6号艇。ここでテンション下げずに行けるかどうかもポイントである。

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 B組のほうは、3番目に引いた篠崎仁志が1号艇を引いたところで、やはりざわついている。やっぱり白が出ると、皆の注目が集まりますね。両組とも、1号艇は初戦上々発進の選手であり、勝負駆けとなる選手たちにとっては、あまり面白くない結果と言えるだろうか。特に、こちらで6号艇を引いた白井英治。緑が出た瞬間、立会人である選手代表の湯川浩司にメンチを切っている(笑)。もちろんジョークであり、お互いすぐに笑い合ってはいるが、5号艇の次は6号艇かよ、まったく……という思いがないわけがない。もっとも、昨年の茅原悠紀は、1stからぜーんぶ5か6で、優出してるぞ。今年は白井がその再現だ!……って、2nd行ったら、いい枠番のほうがいいけど。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)

 

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井口佳典も気分上々の様子。一昨年は1stから発進で優勝戦2号艇をもぎ取っている。今年も同様かそれ以上の活躍もおおいにありそう!