試練の香川コンビ
11R
①山川美由紀(香川)03
②平山智加(香川) 06
③竹井奈美(福岡) 13
④小野生奈(福岡) 07
⑤遠藤エミ(滋賀) 07
⑥海野ゆかり(広島)09
コンマ03。1日早い勝負駆けのイン山川がスリットのキワまで踏み込んだが、残念な結末が待っていた。逆にもっともスタートで後手を踏んだ竹井が、見えないところからの強ツケマイ。平山をガツンと引き波に嵌める“奇襲”となったが、ここは山川がギリギリで受け止めた。バック直線は1-3態勢。このまま山川がゴールまで逃げ込めば、昨日の6着からボーダー圏内に食い込んだはずだ。
2マーク、紛れが起こる。3番手の小野が内に切り込んでの先マイ狙い。これを避けるように大回りした山川の艇は、バック追い風を浴びてわずかに流れた。2艇のやり合いを尻目に、竹井が差し抜ける。もちろん偶然の産物ではあるが、小野の勝負手が同県・小野の助け舟になった。
山川の“災難”は続く。2番手を死守して差しハンドルを入れた2周1マーク。なぜか山川の艇は外へ外へと流れ、エンジン部分が後続艇の舳先に引っ掛かった。相手はまたしても小野。この不慮の接触で大きくバランスを崩した山川は、今度は内にもたれるようにふらついた。小野が、平山が一気に抜き去って5番手まで後退した。ターンの出口で外に膨らんだのは小野をブロックしようとしたのか、ハンドルを戻しきれなかったのか? 理由はわからないが、この先頭→5番手の後退をあえて一言で表現するなら「わずかに機力が劣勢だった」ではないか。突き抜けるパワーさえあれば、2マークでもっとシンプルに小野を競り潰していただろう。
竹井の1着は、思いきりの良さと展開の利が大きかった。ただ、パワー面の裏付けや信頼がなければ、これほど大胆(1マーク)にして冷静(2マーク)なターンは難しかったかもしれない。超抜かどうかはともかく、12人の中では中堅~上位のレベルはありそうだ。
昨日、素晴らしい伸びを見せた小野64号機は、今日も存分にその特長を見せた。バックで伸びて伸びて先マイまで持ち込んだのがその証だ。ただ、今日は混戦の只中を走って「回り足は平凡かも」という印象も感じた。レース前の竹井との足合わせでも内からキャビって失速し、併せにならない光景も見かけた。「伸びはトップ、他の足は一息」が今日のデッドヒートを見ての私の評価だ。
昨日から2着3着と無難にまとめている平山は、やや劣勢なのではないか。2日連続で接戦の中で着を押し上げてはいるのだが、猛追したというより道中の展開に恵まれた感も否めない。贔屓目に見て「バランスが取れて中堅レベル」、辛口で言うなら「小さくまとまっていてパンチ力に乏しい」となるのだが、どうだろう。
渾身の踏み込みが実らず、限りなく赤に近い黄信号が点った山川。だが、明日①着なら届く可能性はあるし、どんなアクシデントでも起こりうるのがトライアルだ。メイチ勝負駆けの平山ともども、香川の女傑コンビが6号艇からどんな勝負手を放つのか、それが大きな見どころになりそうだ。
パワーの衰勢
12R
①寺田千恵(岡山) 09
②松本晶恵(群馬) 08
③中谷朋子(兵庫) 08
④日高逸子(福岡) 10
⑤長嶋万記(静岡) 16
⑥樋口由加里(岡山)18
テラッチが鮮やかに逃げきった。この勝利にはいくらかの“運”もあった。直前に強めのホーム向かい風がぱったり止み、イン戦向きの大凪水面になった。内4艇のスタートがぴったり揃って仕掛けにくい隊形でもあった。まあ、このアドバンテージを加味したとしても、今日の寺田のイン逃げは完璧だった。特に評価したいのはターンの出口からの加速感。差した松本と握った中谷を、まったく寄せつけないレース足だった。間違いなく、今節の13号機は節イチを争う有力な一基だし、そうである可能性は高い。
一方、秋口まで平和島の絶対エースに君臨し続けた中谷70号機は……スリットの行き足から道中の追い上げ足~から、まったくの“普通の人”にしか見えなかった! 今日は朝から抜群の気配に見えた長嶋60号機にも、なす統べなく競り負けた。昨日の段階では「レースをしなかった、底は見せていない」と強がりを言えたが、今日は明確に認めるしかない。
今の70号機は、昔の70号機とは別物だ。
明日の中谷は山川と同じく①着でもかなり厳しい勝負駆け。しかも、この心もとない足色では「ほぼ赤信号」という状況なのだが、まだ、まだ、明日になって回転が合ったり気候が合ったりして大化け=最覚醒するのではないか。心のどこかでそう思っている。
そして、枠番的にもっとも有利な立場をゲットしたのが松本15号機だ。昨日も触れたが15号機は「昔の名前で出ています」的なエンジンだと思っていたのだが……昨日のズブ差しに続いて今日も2コース差しから危なげなく2着を取りきり、明日の第3戦は1号艇。平和島の1号艇はさほど楽な艇番ではないのだが、昨日今日と同じようなスタート、ターンができれば1着=ファイナル1号艇の可能性は高い。15号機の優勝が現実味を帯びてきたわけだ。ちょっと意外な展開だが……「70号機崇拝者」である私は、明日以降もこの15号機に厳しい目を注ぎ続けるだろう。で、実はここまでとんとん拍子できた松本は、パワー云々だけでなく自分自身との戦いにも重きを置かれるだろう。パワー&メンタル。第5代の賞金女王に見合うだけの逸材か、明日からの2日間が真の正念場になる。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)