BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――強豪勝ち抜く!

10R 地元優出!

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 ピットに帰還した瞬間、村上純が肩を並べた。2着でゴールした茅原悠紀に笑顔で声をかけると、ヘルメットの奥で茅原がにっこりと笑った。村上の言葉は、間違いなく祝福の言葉だろう。

 地元SG優出!

 茅原としては、ひとつのノルマ達成の瞬間であろう。前回の児島SGは12年チャレンジカップ。出場していた茅原は、平尾崇典先輩の優勝を目の当たりにした。児島関係者の歓喜も肌で感じたはずだ。今節、茅原は選手班長。地元からは茅原と村上のみの出場。平尾先輩はもちろん、吉田拡郎先輩など、SGをともに戦ってきた先輩たちは不在である。あれから4年数カ月が経ち、その間にグランプリを制して、この児島クラシックでの己の使命を自覚していたことだろう。最終日最終レースのピットに立つ。茅原は、その使命を立派に果たしたのである。自身の成績は不本意となっている村上先輩も、後輩のその姿を頼もしく思っただろう。笑顔を交わし合う二人には、地元選手の責任感のようなものが、また地元で優出を果たすことの喜びが、間違いなく見えた。

 地元SG優出ということの重みは、多くの選手が知っている。だから、服部幸男が茅原を祝福していたのも自然なことであろう。服部はまるで静岡の後輩が優出したかのように満面の笑みを浮かべ、茅原を称えていた。茅原も大先輩からの祝福に、恐縮したような笑顔を返す。茅原にとっては喜びが膨らむ一瞬だったに違いない。その後も茅原はさまざまな選手に声をかけられ、笑顔を振りまいていた。それはとても幸せな光景だった。

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 勝ったのは石野貴之。ピットに戻ると、まずは出迎えた湯川浩司に苦笑いを浮かべながら首を傾げてみせた。その後、太田和美の出迎えに回っていた松井繁にも、同様の仕草。何か不満なことでもあったのか? あるとすれば、スリットでのぞかれたことくらいなのだが……。

 その後の共同会見では、石野は力強い言葉を並べた。メンタルもいい感じで集中力を保てる状態にあるという。それだけに、ピットに戻った直後の仕草が気になった。あれはいったい何だったのか。

「ああ、②はフライングちゃうんか、って(笑)。早すぎるんちゃうか、って」

 2コース・松村敏はコンマ02のスタート! 全速だったというから、なんたる度胸。石野もいいスタートを決めたという手応えがあったから(コンマ11)、「あれはフライングやろ」という苦笑いだったわけだ。SG準優であんなスタート行くか? みたいな。逆に言えば、その隊形から伸び返して松村に差し回りさせたのだから、さらに足色に確信を持ったかもしれない。その話をしているときの石野の表情はなんとも力強かった。今日の勝利を経て、さらに凛々しさが増している。

 

11R いい経験

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 長嶋万記、史上3人目の女子SG優出ならず。まあ、これがSG2回目で、準優も4号艇。それでいきなり寺田千恵や横西奏恵に肩を並べたら大快挙なのであって、そんなに落胆する必要もないだろう。

「みんなが速すぎて一瞬で終わっちゃった」

 長嶋はそう振り返ったが、それがSGだ。それを体験できたことは大きい。そして、一瞬で終わってしまったからこそ、もう一度同じ舞台に立たねばならない。それが実現する可能性はもちろん少なからずある。これを体験できたことが、そこに一歩も二歩も近づく原動力になったはずだ。

 スローにこだわる5号艇の安田政彦を入れずに4コーススローになったわけだが、入れての5カドもあったのではないか。

「考えましたけど、安田さんに張られるんじゃないかと思ったんですよ」

 安田も足は良かっただけに、内に入れると攻め筋を潰される恐れがあったわけだ。まあ、どちらが正解だったのかは誰もわからない。待機行動も含めての約3分を大きな糧として、前へ進め!

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 勝ったのは菊地孝平。コンマ09のトップスタートでの逃げ切りだから、完勝! レース後の表情は実に力強く、完全無欠の勝者の姿であった。会見でも「とても自信があるので、本気で優勝を狙います。できそうな気もしています」と強気一辺倒だった。足合わせで井口さん(と菊地は言った)、石野には分が悪いと言ったあとに、「でも自信はあるので、足負けはしない」と言い放つのだから、多少の足の差は自分が何とでもしてみせる、という強い気持ちが伝わってくる。石野とも互角の、メンタルの仕上がりである。

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 2着の瓜生正義は、淡々としたものだった。というか、優出くらいでどうこうという存在ではない。今日は調整がズレていたそうで、それを自覚できていれば、明日はしっかりと調整してくるだろう。コースは「6コース以外」。地元の茅原が結果的に6号艇となり、前付けがあるかないかがひとつのカギとなってくる。5号艇が一緒に動いてくれば、もちろん譲らないというのが「6コース以外」ということだ。このあたりをどう読むのかが、推理のキモになってくるぞ。

 

12R 本当にいい

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 まず、2着で5号艇になった井口佳典。茅原の前付けの可能性を会見で問われて、「単騎になるでしょうね」とほぼ即答した。「瓜生さんは入れないだろう。でも自分は入れる」ということだ。瓜生や石野が入れる可能性もあるだろうが、井口としては6コース上等といったところだろう。コースに頓着せずに自分のレースをするだけ、というのは井口らしい潔さだ。

 その井口は、ピットに戻ったときには、やや硬めの表情となっていた。そして、すぐにリプレイを見たがった。これは、地上波放送のインタビューに呼ばれてかなわなかったのだが、何か気になった点があったと思われる。会見ではネガティブな発言は出ていなかったが、優勝するための修正点が見つかったとするなら、たとえ6コースでも決して侮れない存在となる。なにしろ「特別競走3節連続優勝を狙っている」ときっぱり断言したのだ(GⅠ地区選V→GⅡMB大賞VでSGに乗り込んだ)。明日は強気なレースを見せてくれるはずである。

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 予選トップの桐生順平が逃げ切って、優勝戦も1号艇を手にした。クラシック2度目のVに王手だ。レース後の桐生は、喜びをあらわすわけでもなく、もちろん不満を表明したりするわけでもなく、淡々としたもの。優勝戦も自然体で臨むことだろう。

 2連対率84%の47号機に関する表現が印象に残った。今日の感じはかなり良かった、としたうえで、「すごい本当に良かったです」「バランスとれて全部がいい」「すごいいいと思います」など、ただただ「いい」「良かった」を繰り返したのだ。具体的な言葉は「バランスとれて全部が」くらいで、あとは実に抽象的な高評価を繰り返すのみである。これをどう捉えるべきかを僕は考えている。乗り手に恵まれてきた47号機は、実は数字ほどのパワーはないのではないか、という声は聞かれた。実際、桐生も試運転では目立つことはないのだという。しかし、レースでは確かな感触を桐生に与えている。そのあたりの不思議さが、具体的な言葉が出てこない理由なのではないか……。

 いずれにしても、桐生は今日と同じレースを明日するのみ、である。メンタル面は不安なし。優勝に最も近いのは、改めて言うまでもないことだが、この男だ。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)