BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――空気が変わっても、変わらないもの

 

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 終盤のピットは、エキシビションに完全に主役を持っていかれていた。関係者や報道陣はもちろん、出場選手たちも嬉しそうに楽しそうに、先輩たちの様子を眺めているのだから、空気はエキシビションに支配されて当然。レースを控え、緊張感が高まっている選手にしても、目を細めて先輩たちを見守る。12R1号艇で闘志高まる西島義則も、気合の入った表情ではあったものの、目元が少し緩んでいた。かつてバチバチにやり合った強豪たちの顔を見て、懐かしい気持ちは当然湧き上がっていたことだろう。

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 整備室やプロペラ調整所の中から、窓越しに様子を見ていた選手もたくさんいた。ただ、彼らはそこから装着場のほうへは出てこようとはしていない。そう、そんな空気のなかでもやることはやる! すでにレースを終え、作業も終えている選手たちは和やかなムードのなかに身を置きにいったが、それよりも優先するべきことがあるなら、それを決して疎かにはしないのである。先の記事で、モンスター野中と谷川里江のツーショットを掲載しているが、その谷川とて、先輩たちとのふれあいの時間を終えると、すぐに整備室に入って本体整備を続けるのである。なにしろ、鈴木弓子さんは同県の先輩女子レーサーですからね。しっかり義理は果たしてから、自分の作業に集中したというわけだ。

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 今日は大きな着を並べてしまい、予選突破が絶望的になった熊谷直樹も、本体整備をしていた。準優への道が閉ざされたとしても、まだ戦いは終わっていない。いや、可能性がわずかでもあるなら、決して諦めない。そうして30年以上も戦い続け、さまざまな試練を乗り切って、今があるのだ。前進をやめようとしないのは、当然のことだ。

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 プロペラ調整をしている選手も多かった。先輩たちの様子を室内から眺め、すぐにペラを叩き始めた選手も多かったわけだ。たとえば山室展弘。盛り上がる装着場を目を細めてしばらく眺めると、すぐに座り込んでプロペラに目を向けている。エキシビション組が眼中にないわけではないが、まずは明日のためにプロペラを叩くほうが大事なことなのだ。

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 11R発売中には、平石和男がペラをかなり強めに叩いていた。平石は10Rで1号艇を活かせずに3着。着替えを終えると、すぐに調整に向かっている。エキシビション組はもちろん気にならないではなかっただろうが、それよりも1号艇で敗れたことと向き合わねばならない。平石は明日、連勝条件。厳しい勝負駆けだ。それだけに、とにかく自分の作業に集中したかっただろう。賑わうピットに気をとられてなどいられないのである。

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 もちろん、ピットの空気が変わっても、レースは変わることなく行なわれる。10Rでは烏野賢太が今節初勝利。4コースから気持ちのいい差し切りだった。レース後、烏野の周りは発売中とは違うかたちで、と言いつつ、いつものレース終了後の勝利者の周囲と同じように、華やいだ。烏野の表情もぐっと柔らかく、勝負駆けにつなげられたことへの安堵の思いもあったことだろう。明日は、エキシビションが行なわれ、おおいに盛り上がった直後に1号艇で出走する(11R)。またピットの空気に変化はあるだろうが、まるで関係なく、グイグイと勝負するだろう。

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 さてさて、今年の“新人”の目玉の一人であった三嶌誠司が11Rで6着大敗。予選突破はほぼ絶望的な状況となってしまった。レース後の三嶌はやはり落胆した様子で、レースを振り返り合うときには、先輩たちにあわせて笑みも浮かべていたけれど、ひとり着替える際には憂鬱な表情を浮かべ、敗戦をつらく受け止めているようだった。“同級生”として、僕自身も本当に残念! しかし、明日以降も変わらずに全力投球を続けていくことだろう。あと3日、どこかで一矢報いる走りを!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)