BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

津マスターズTOPICS 3日目

 

技ありの第1号ホームラン!

 

f:id:boatrace-g-report:20171230095338j:plain

 

 今日のMVPは文句なしに8Rの江口晃生!! その凄まじい気合は、昼のスタート特訓から水面に溢れ出ていた。1本目は4コース想定の70m起こしで、2本目はイン鈴木幸夫の隣にぴったり貼り付いての80m起こし!! 大先輩のイン屋に向かって「ゴリゴリ行きまっせ」と宣戦布告したのである。さらに、スタート展示でも激しく攻めたものの、内の5艇がすべて抵抗して横並びの枠なりオールスロー、80m起こし。つまり、レース前のスタート練習はすべて70~80m起こしを貫き通した。

 

f:id:boatrace-g-report:20171230095354j:plain

 

 8R本番、江口は満を持してエンジンを噴かした。全艇がブロックする姿勢を見せたが、あまりの激しさに乙津康志と倉谷和信が離脱。1236・4/5という並びで、内の4艇が横並びでずんずん深くなってゆく。12秒針が回って、その4艇は仲良く80m起こし。4コースの江口は、「横並びで動きにくいし、外からは助走距離のある2艇が来るし」という厳しいサンドイッチ状態を余儀なくされていた。

 が、深い起こしを貫いたスタート特訓が、ここで生きる。コンマ11、ほぼ全速。半艇身ほど遅れた3コース原田富士男を一気に叩き、握りっぱなしでインの鈴木幸夫まで引き波に呑み込んだ。その足色も、昨日までにはないものだった。不断の整備でパワーアップに成功したのだろうし、前検の54kg→51・1kg(差し引き2・9kgは52人中トップだ)もその背中を押したに違いない。初日からまくり勝ちゼロの水面を、しかも1Rからイン7連勝だった流れを、ウルトラE難度の一撃まくりで切り裂いた。名付けて、「モンキー前付け横並びサンドイッチ80m起こしトップSハイパー減量まくり」! なんのこっちゃ。

 

f:id:boatrace-g-report:20171230095408j:plain

 

 信念の人。それが12年ほど前からの、江口に対する私のイメージだ。2005年オーシャンカップの開催地が桐生に決まると、本番までの約1年間のほぼすべてをこの地元SGのために注ぎ込んだ。権利を得るためのGI戦線、トレーニング、減量……おっと、ここで多くを書くのはやめておこう。最終日の夕刻に、書くことになるかもしれないから。

 

f:id:boatrace-g-report:20171230095425j:plain

 

 流れというのは恐ろしい。江口のこのまくりが、イン絶対だった津水面をまくり水面に一変させた。続く9Rはミスター今村豊が同じく4コース一撃まくり。江口よりはるかに助走距離のあるスロー4コースではあったが、それにしてもスリットからの迫力は半端なかった。どこをどう整備したのか、完全に仕上がっていた。昨日からイン逃げ・イン逃げ・まくりの怒涛の3連勝で、“定位置”の予選トップへ……明日は4・6号艇という高いハードルが待っているが、今日のパワーを維持できれば上位着を並べることができるだろう。ちなみに暫定2位の江口の明日は2・4号艇。この2強の予選トップ争いは、白熱の好勝負、とお伝えしておく。

 

f:id:boatrace-g-report:20171230095726j:plain

 

 続く10Rは4号艇の烏野賢太が「差し」で1着だったが、11Rでまたまくりの大花火があがる。初日から伸び強烈な作野恒の4カドまくり。初日は6コースから絞りまくりでインまで捕えきれず、まくり差し決着。コースの近い今日は、4カドからすっきりと内4艇を引き波にハメ込んだ。お見事。初日にも触れたが、今節の作野は差し屋ではなく「まくり屋」だと思っていたほうがいい。同じく、節イチ級の伸びを争う乙津康志、山田豊、谷川里江も要注意。

 

f:id:boatrace-g-report:20171230095739j:plain

 

 1R~7Rがイン逃げ祭りで、8Rから一転して6・5・4・4号艇の外枠確変フィーバーに突入。最終12Rは……1号艇が昨日の転覆で「ピストン2個、ギヤケース、新プロペラ交換」の大手術を余儀なくされた西島義則だけに、波乱の流れを引き継ぐムードではあった。ゴキゲンだった昨日までに比べてスタート展示の気配も一息に見えたし、展示タイムも平凡だった。

 が、そこは稀代の勝負師だ。まだ体に馴染まないパワーをものともせず、コンマ15全速のトップスタートでインから押しきった。この10点増しで、減点の借金をキッチリ返済して勝率6・00。明日は6・5号艇という激辛の枠が残ったが、この男にとってこれくらいの障壁は蚊に刺されるレベル。気持ちもパワーも立て直し、あの手この手で準優の権利を鷲掴みにするに違いない。ミスター今村&江口の“2強”とは天地ほどの勝率差? うん、この男にはそれもまた愚問。6号艇にさえ食い込めば、十二分に大本命を脅かすことができるのだから。明日、西島がキッチリ予選を突破した時点で、“V戦線で甲乙つけがたい3強”と呼ばせてもらおう。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)