BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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津マスターズTOPICS 4日目

THE勝負駆け①ボーダー争い

還暦の長州桜、散る。

 

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 今日はまず、惜しくも準優に届かなかった選手から。今年のマスターズには特殊な事情が秘められている。来年から、年齢制限が45歳以上に。1年後のマスターズ水面には王者・松井繁や今垣光太郎、服部幸男などなど現在のSG常連レーサーが目白押し。60代の古豪が技巧を尽くした「名人戦」のワビサビはもはや今や昔の夢物語、来年は周年記念レベルの52人が集結することだろう。おそらく、選考ボーダーは6・50前後か……。

 もちろん、そんな事情を踏まえて「今年がラストチャンス」と意を決して参戦した大ベテランやA2常連レーサーも少なくなかったはずだ。今節、唯一の還暦超えレーサー新良一規は、どんな思いで津へと足を運んだか。それは私にはわからないが、私の心情的には最終日まで優勝争いで奮闘する雄姿を見たいと思っていた。

 

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 今日の新良は9Rの1回走。1号艇という絶好枠で逃げきれば準優3号艇あたり、3着でボーダー圏内という勝負駆けだった。が、ほぼ同体に見えた2コースの平石和男が、意表の強襲を繰り出した。平石の2コースはほぼほぼ差しとしたものだが、外から被せてきた艇を防ぐために握ったのかもしれない。この“奇襲”がものの見事に決まって、新良はよろけた。よろけて立て直して、バック4番手。準優へ、ひとつだけ着順が足りない。で、道中、目の前を走るのは同県の2期後輩の今村豊だった。ミスターの脳裏にもなにかしらがよぎったかも知れないが、無論それで緩めるような男ではない。2周ホームで新良の前を絞め込むように通過し、2周1マーク、伝家のスピードと仕上げきったパワーで還暦の先輩を一気に突き放した。新良は4着で5・60。準優の切符を手に入れるには、わずかに1ポイント足りなかった。

 

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 私がボートボーイ誌で冨好和幸さんの長期連載を手掛けていた頃、イン屋の神様の口から「新良」の名前を何度か聞かされた。46期のまとめ役で、卒業後も何かしらの集まりごとがあるたびに率先して幹事を務め、長きに渡って同期の絆をつなぎ続けてきた。冨好さんが癌と闘っているとき、同期に声をかけて京都の鴨川で激励会を開いてくれたのも新良だった。新良には頭が上がらない。冨好さんはそう言って、目頭を押さえた。

「新良や瀬尾には、僕の行けなかった名人戦でまだまだ活躍してほしい」

 そんなセリフも覚えている。今日の敗戦が残念でならない。

 寂しい話になってしまったが、もちろん、これで新良のマスターズへの道が閉ざされたわけではない。60歳を過ぎて勝率は6点オーバー。さらにもうひと踏ん張りすればボーダー超えも夢ではないし、マスターズリーグ優勝で権利を得るチャンスもある。現在の新良の実力を考えれば、パワー次第で十分にありえると思う。

 60代の猛者たちが何人も集い、陸の上では同窓会のように寄り添い、水面では古の進入争いと巧みな捌き合戦でファンを唸らせ続けた“名人戦”。その面影がついぞ失われる時が近づいている。来年の話はともかく、新良には「最後の48歳以上マスターズ」の宴を心行くまで堪能していただきたい。

 

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 一方、見事に勝負駆けを決めたレーサーも多数いる。まずは1Rの藤丸光一。6号艇でメイチ1着勝負の藤丸は、前付けに動いたが5コース止まり。スタートでもやや凹んで絶体絶命に見えたが、伸び返しながらの俊敏なブイ差しで先頭に肉薄。その前を行く吉田一郎にフライング欠場の裁決が下されたため、絶対十分条件の1着に躍り出た。恵まれ突破? ノンノン、進入から1マークまで諦めずに最善を尽くした結果の自力1着。それを後押ししたパワーも不気味なほど強力に見えたので、明日の準優でも軽視は禁物だ。実力、パワー、運。今日の藤丸は、優出への3大要素をすべて持ち合わせていた、と思う。(明日の10Rは「びわこ天皇vs博多天皇」のエンペラー対決です)。

 

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 それから……西島! 綱渡りのような展開だったが、なんとか最低ノルマを突破した。前半2Rは、6号艇から動いたものの鈴木幸夫と新美恵一にブロックされて4コースまで。スロー4コースと言えば、昨日の今村と江口が鮮やかな一撃まくりを決めたものだが、「そんなの、俺にだってできるんだぜ」ってな感じで豪快にまくりのきってしまった。うーん、まさに3強揃い踏みって感じの大花火だった。

 が、後半8Rは打って変わって大ピンチ。5着で6・00の西島は、ゴリゴリ動いてイン奪取。やや深めの起こしになったところを、今度は伸びーーる作野にまくられてしまった。しかも、1マークの手前で他艇の艇尾をちょこっと突いたり、ターンの途中で他艇にぶつかったりで「まさか、不良航法??」と青ざめるシーンが続いた。結果はセーフでしかも5着に食い込みボーダー争いもギリギリセーフ(最終的には6着でもOKだったが)。波乱万丈の4日間を終えて、しっかりと準優チケットを受け取った。昨日も記したように、このハードルを通過した以上は「3強揃い踏み」と呼ばせてもらおう。まず、明日の10Rでは江口との直接対決。しかも、大嶋一也という大敵も同席しており、大乱戦になりそうな番組だ。ピットアウトからこのマスターズでしか味わえない一戦を堪能するとしよう。

 

THE勝負駆け②予選トップ争い

やはり、この2人!!

 

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 ボーダー争いに時間を費やしたので、こちらは簡潔に記しておきたい。実際、数字的な予選トップ争いに紛れらしい紛れはほとんど存在しなかった。まずは前半3Rで、前日トップの今村豊が昨日に続くスロー4コースまくり。相変わらず、惚れ惚れするような行き足だった。

 一方、5Rの江口晃生も2コースジカまくりという大技でトップに食らいつく。2人の得点差は昨日と同じ3ポイント。

 

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 で、先に予選のラストレースを走ったのは9Rの今村だ。2着以内で自力トップ当選が決まるミスターは、スロー5コースからまくりに行った。が、地元で勝負駆けの森竜也にブロックされて後手を踏む。先に書いたとおりミスターは新良先輩を押さえて3番手を走っていたのだが、凄まじいパワーとスピードで2番手の日高逸子まで追い抜いてしまった。その瞬間、予選トップはミスターの手の中にすっぽりと納まったのである。うん、今日のところはこんな淡白なもので許していただきたい。ミスターについてはレースや他のことや、明日もあさってもあれやこれや書くことになりそうなのだから。ほんのちょっとのネタであっても、温存させてもらおう(笑)。

(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)