BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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津マスターズ準優ダイジェスト

差し一閃

 

10R

①三角哲男(東京)15

②山田 豊(滋賀)25

③大場 敏(静岡)11

④矢後 剛(東京)15

⑤藤丸光一(福岡)27

⑥川崎智幸(岡山)22

 

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 焦点を優出争いに絞るなら、スタートがすべてだったかも知れない。もっともパワー上位の3コース大場がトップスタートで、その内の山田がほぼ1艇身遅れ。インの三角はしっかり踏み込んではいたが、これだけの凹凸があれば大場の包丁さばきを見守るしかなかった。スリット後も軽快に伸びた大場は、スリット手前で山田を2艇身近く出し抜いていた。インの三角がそのまくりを警戒して強めに握った瞬間、高みから柳包丁を真っ直ぐに振り落とすようなまくり差しが突き刺さった。

 

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 バックでは必死に逃げる三角とほぼ同体。だが、ターンの出口から力強く伸びて行ったのは、内の大場の方だ。見た目には接戦のようでいて、実はすでに大勢が決している。そんなオーラを感じさせるほど、大場の足は迫力と安定感があった。優出2艇はほぼスタートで決まったが、その1・2着を分けたのはパワー差だったと思う。

 

本命宣言

 

11R 並び順

①江口晃生(群馬) 01

⑤西島義則(広島) 08

⑥大嶋一也(愛知) 01

②野長瀬正孝(静岡)02

③作野 恒(愛知) 04

④西山昇一(愛知) 09

 

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 5・6号艇に居並ぶ稀代のインファイターふたり。どこまでもつれるか、どこまで深くなるか、まったく予断を許さない進入予想。スタート展示はオールスローの152346(大嶋が6コース!)だったため、さらに本番は予測が難しくなった。が、そこは百戦錬磨の大ベテラン。本番ではそれぞれが優出しやすいであろうポジションを模索し、156/234という考えられうる最もオーソドックスな隊形で落ち着いた。そして……

 スタートはご覧のとおり!! 江口、大嶋、野長瀬らが、あわや集団Fかというキワまで踏み込んでいた。コンマ08なのにかなり凹んで見えた西島を同期の大嶋がすかさず絞め込む。小回りで抵抗しようした西島は、大嶋の引き波で万事休す。一方の大嶋も、その西島と逃げる江口に挟まれて失速した。この時点でもはや江口の一人旅。明日の2号艇以内の権利を手中に入れた。

 

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 で、2番手に浮上したのは、二番差しで鋭くブイ際をすり抜けた野長瀬58号機だった。やや展開の利もあったが、3本の引き波を超えるパワーはやはり只物ではなかった。作野の追撃を寄せつけることなく、野長瀬は4番目の切符をゲットした。もちろん、エース58号機だからして明日も軽視は禁物だ。ただ、レース後、私はエース機のパワー云々とはまったく関係のないことを考えていた。

 もしも12Rでミスターが逃げきったら、優勝はまんま今村で不動だろう。

 と。今節の今村は(も)ほとんどまったく死角のない存在になっている。唯一、この大本命が優勝戦の1号艇で敗れるとしたら、進入のもつれしかない。昨日の9Rで予選トップが確定した段階で、私はそんなことを思った。そして今日、この11Rで波乱の可能性を秘めたふたりの選手が揃って脱落した。優出とは無縁の水面を走るふたりを見ながら、さらにぼんやりこう思った。11Rが終わった段階で。

 明日は優勝戦以外で、穴を狙おう。

 

太陽と月

 

12R並び順

①今村 豊(山口)12

②渡邉睦広(東京)15

③鈴木茂正(東京)18

⑤倉谷和信(大阪)15

④烏野賢太(徳島)18

⑥市川哲也(広島)21

 

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 ミスターが勝った。倉谷が前付けに来たが4コースまで。インから110m起こし、ほぼ横一線でインがちょいと覗いたスリット隊形……この条件で、今節の今村が負けるわけがない。1マーク、睦広の差しも倉谷の全速マイも、ぜんぜんまったく届かなかった。明日も同じ1号艇。11Rの時点で明日の方針をほぼ固めてしまったので、ミスターについて深く考える必然性を失っていた。このレースは明日の1号艇の切符を手にするのをただただ見届けていた。

 2着争いは準優でいちばん熾烈だった。常に自力で握って攻め続けたのは倉谷だ。1マークは全速でぶん回し、差した睦広を1艇身ほど出し抜いていた。が、バック直線で外からジリジリ睦広が伸びる。少し遅れた最内からは烏野がじわりじわりと差を詰めていた。2マーク、倉谷は再び全速でぶん回した。凄まじい気迫。睦広はまたまた差し構え。その舳先を横切って、烏野がふたりのど真ん中に突っ込んだ。が、倉谷の引き波に耐えられずに転覆、2周ホームは外・倉谷と内・睦広の一騎打ちだ。

 

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 2周1マークの一発勝負、睦広が先マイし、やや態勢が有利だった倉谷は満を持して差しハンドルを入れた。ホーム追い風も含めて差しが入りそうな流れだった。が、その舳先はまったく入らなかった。明らかに睦広70号機のパワーがそれを許さなかった。ミスターの引き波を軽々と超えて、しかも先マイだというのに流れることなく回った瞬間に舳先が真っすぐピット方向に向かっていた。今節、2・3着を量産している抜群の回り足。サンスポの小出記者が「渡邉選手はとにかく乗り心地のいいペラの作り方を掴んでいるみたいです。舳先が向きたいところにすぐ向くような。それが最近の絶好調の秘訣ですかね」と教えてくれたが、優出を決めたこのターンはまさにその言葉を証明するターンだった。

 

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 1着・今村、2着・睦広。

 片や2700勝、デビュー数期で勝率7点を超えてから7点を割ったことなく、記念制覇は数知れない伝説の男。片や950勝(4期下の市川哲也が2100勝)でデビュー通算勝率5・47、このマスターズまでに参戦した記念は3度(すべて関東地区選)で今年の地区選ではじめて優出(5着)した下積みの男。

 こんな両極端なふたりが1・2着を分け合い、揃って優出を決めた。関東のオールドファンなら頷くと思うのだが、一般戦での1着よりも2・3着取りが巧い睦広は、正直、マスターズなどとは無縁のレーサーと思っていた。それが、48歳にして地区選~プレミアムGIで優出するとは……西山昇一も真っ青の大器晩成レーサーではないか。レース後のインタビューで「僕だけ通算の勝ち数が極端に少ないんですよぉ」と自虐的に語ったそうだが、今の強さは記念常連レベルと肩を並べるほどだと思う。

 

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 結局、このふたりは優勝戦の1号艇と6号艇に振り分けられた。大器晩成、下剋上の勢いで、睦広が雲の上のレジェンドレーサーまで撃破する!? 穴党としてはそんな夢を描きたいのだが、残念ながらその可能性は非常に非常に非常に低いと思う。11Rでどちらかのインファイターが生き残れば、話はまったく違ったのだが。それでも……、明日は2、3着の可能性を真剣に模索しつつ、こっそりバラ券で6-1を買っておこう。何年かに1度は、小さな月が巨大な太陽をすっぽり隠しきることだってあるのだから。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)