BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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福岡オールスターTOPICS 2日目

四花繚乱

 

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 オールスター予選前半の風物詩? 今日は女子レーサーの奮闘ぶりが目についた。まずは4Rの日高逸子。池田浩二や田中信一郎など厳しい相手と組まされたが、コンマ13のトップSから命からがら逃げきった。道中でピッタリ追走したのは若手の急成長株・中田竜太。旋回力で上回る中田がターンマークごとに舳先を突っ込み、わずかな伸び足の差で逸子ママがその舳先をギリギリ振り払う。そんなテイルトゥノーズが何度も繰り返されるスリリングなイン逃げだった。パワー的には昨日よりやや落ちた感じもしたが、中堅上位はあるだろう。明日以降もメンバー次第で穴を開ける可能性があるので、常に注意を払っておきたい。

 

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 続く5Rの中村桃佳も道中でキラリ光るものを見せた。1マークは6コースから最内を差してバック4番手。着順確保で手いっぱいかと思いきや、前を走る守田俊介を追うわ追うわ! 何度か内に切り返す素振りも見せ、最終ターンマークでは突っ込み気味の切り返しで俊介の3着を脅かした。うーん、気が強い! 自称「心臓に毛が生えている」(byスポーツ報知)度胸っぷりは、すでに現時点でSG級だな。6号艇での4着は、SG初参戦の女子レーサーとしても大健闘と言えるだろう。

 

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 ただ……後半9Rは経験の浅さを露呈してしまった。1マークは枠なり3コースからしっかり握ってバック3番手。ここまではGOOD。が勝負どころの2マーク、差し場を探して落とした瞬間に後続艇が殺到して完全に行き場を失った。走り慣れた女子戦ならどこかしらに美味しいスペースが空くだろうが、ターン自慢の猛者たちが揃ったSGではそんな甘い空間は生まれない。前を横切る艇団を待って待って待って差したときには、3番手から5番手まで陥落していた。この2マーク、着を落とさないためには全速でぶん回すしかなかった、と思う。しっかり走れば昨日から343着のはずが345着……SGでのこの差はあまりにもでかい。予選突破に黄信号が点ったが、明日以降も心臓に毛が生えたレースで全国に名を広めてもらいたい。

 

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 さてさて、続く6Rは長島万記オンステージだ。まずは1マーク、2コースから鋭角ターンでイン西島義則をズッポリ差し。完全に舳先を貫いたが、ここで大勢が決しないのがSGだ。2マーク、内から太田和美が切り返し気味に艇を寄せたため、握りマイで応戦。判断としては正解も、やや流れている間に西島のリベンジ差しが突き刺さる。その差は2艇身ほどで勝負あったかに思われたが、万記の2周1マークのターンが絶品だった。わずかにフトコロを開いてから、ほとんどスピードを落とさず水が流れるような無駄のない放物線で西島の内をえぐった。現在、男顔負けの全速スピードを誇る女子レーサーは何人かいるが、こんな絶品の捌きターンができる女子は万記だけかも? その後、西島の猛追を丁寧に封じきって待望の1着ゲット。もちろん決まり手は「抜き」だが、より正確に言うなら「差し差され差し返し」という激勝だった。今や女子レーサー界では無敵モードの万記にとって、SGは敷居の高い舞台とは思えない。昨日の6着5着のビハインドはあまりにでかいが、3月のクラシックに続く予選突破を目指してもらいたい。

 

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 最後は8Rの小野生奈。これがまた強い勝ちっぷりだった。2コースの生奈はまくりが主体としたものだが、今日はイン中島孝平を回してからの差しハンドル。さらに3コースまくり差しの池田浩二が割って入って、バック直線は3艇の舳先が並ぶ大激戦。ただ、そこからの伸び足は生奈が他を圧倒し、2マークまでに得た1艇身の利を生かして素早く先マイ、賞金王コンビを一撃で置き去りにした。生奈は2マークでの判断やターンが女子の中では抜けて正確かつ早い、と私は勝手に思っている。今日のこのターンも、SGで互角以上に戦える旋回に見えた。捌き達者の万記と、「迷ったら握る」が身上の生奈。SGに参戦する女子レーサーは「予選後半から成績を落とす」という顕著なパターンが見られるが、今節は尻上がりの成績で男どもをギャフンと言わせてもらいたい。

 

Vモード、突入!

 

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 今日、男レーサーをひとりピックアップするなら、この男しかないな。石野貴之。5Rはスリット横一線の4コースから、内2艇を力ずくで叩き潰してのまくり差し、圧勝。11Rはコンマ01!!のドッキリスタートから、影さえ踏ませぬイン逃げ。この男の場合、4&1号艇でのピンピン連勝は驚くに値しないが、その勝ちっぷりは他を圧するオーラに満ち溢れていた。スリット同体からでも突き抜けそうな迫力、バックで並走しても「すぐに先頭に立つな」と思わせる雰囲気……何から何まで抜けて見えた。

 

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 もちろん、そう思わせる要因には28号機のパワーがあるだろう。モーター抽選で29号機を狙っていた石野は1番違いの数字に顔をしかめたが、どっこい28号機も超抜だった。今月のBB誌のモーター鑑定で、チョイ穴の28号機に◎を打った私もホッと一安心だ(←自慢)。で、「エース級の輝きを見せるエンジン×近年の石野貴之」と言えば、もうその答は「SG優勝」しか考えられない。今日の凄まじいオーラといい、いつでもどこでも突き抜けそうなパワーといい、2日目にして完璧な「貴之Vモード」に突入した、とお伝えしておこう。

 あ、そうそう、エース級のエンジンと言えば……下馬評断然の29号機を引き当てたあの男が、9Rのイン逃げで1分47秒9という猛時計をマーク!!!! 石野の連勝も含めて他の11勝のそれが1分49秒台~だったことを考えると、ケタチのスピードと言うしかないな。“あの男”については明日以降に主役として登場するはずなので、今日はこれくらいにしておこう。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)