BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――夏の夕暮れの笑顔たち

 

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「今期、まだ1勝もしてないんすよ~~~」

 そう嘆いていたのは先月のグラチャンのピット。平本真之は、今年5月1日以降、未勝利でグラチャンを迎えたのであった。そしてグラチャンも未勝利。今日の開会式で本人も言っていたように「4月の丸亀周年以来、勝ってません」。前期の最終節が丸亀周年で、その最終走で1着。あれから3カ月、平本真之ともあろうものが、一度も先頭ゴールを果たしていないとは! といっても、今期は3節しか走ってないんですけどね。まあ、たまたまの部類だろうし、それが約3カ月にも及んだだけだろう。

 6Rは逃げ切り! 今期初勝利! おめでとう! これはもう、水神祭やるしかないっしょ。平本にそう煽ったら、「おかしいなあ。やるはずだったのに、誰も集まってこないんですよ~」ととぼけた。じゃあ、あっしが呼んできやしょう! なーんておどけ合って、平本は楽しそうに笑った。そして、こっからピンラッシュね! そう煽ったら、力強い表情になった。こういうきっかけは大事だし、その次のレースはさらに大事。明日は外枠デーだが、流れを変えた平本には期待したいところだ。

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 ピットでは、あちこちでこんな声を耳にした。「広島がいいね」。うん、今年もカープは強いよね。てな話ではもちろんなく、広島支部の選手たちが初日から好調ぶりを発揮しているという話題である。たしかに今日は、広島勢が舟券に絡みまくっている。というか、パーフェクトです! 5枠1回、6枠3回がありながら、すべて3着以内である。辻栄蔵は6号艇で1着だぞ。素晴らしい成績である。

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 10Rでも、辻が3着。これでオール3連対が完成したわけだ。辻は朗らかにピットに戻ってくることも多く、自然とエンジン吊りは笑顔が多くなるわけだが、好調広島軍団という背景を思えば、それは単にいつも通りの光景とは思えない。全員が気分上々で初日を終えている、その象徴のように見えてくるのだ。明日からも要注意!

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 選手たちの精勤ぶりは前半のピット記事にも書いたが、後半の時間帯ももちろん同様。後半はさらに、選手の執念深さを感じさせるシーンがいくつか見られている。たとえば、吉田俊彦だ。11R出走の吉田は、夕暮れが丸亀水面を包み始めた頃には試運転をしていたが、11Rのスタート練習が終わると、いったんボートを陸に上げている。そして手早くギアケースを外し、調整。調整を終えると手際よく装着して、ふたたび水面へと飛び出していった。時間があまりないなかで、しかし最善を尽くさんと急ぎ調整する。なんか気になるけど、このままでいいか、なんて発想は吉田にはなかったのだ。

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 ドリーム組も同様で、スタート練習を終えた後には1号艇と6号艇以外がボートを陸に上げて、大急ぎでペラを外すと調整室に飛び込んでいる。それまでの試運転、あるいはスタート練習での感触をもとに、ギリギリまで調整を施そうというわけだ。とりわけ、今日は1R発売前からプロペラ室にこもっていた桐生は、最後の最後までペラと向き合ったわけで、つまり今日は徹底的に時間を費やしてプロペラでの底上げを狙ったわけである。結果は出なかったけれども、その姿勢に桐生順平の強さを見る。今日のドリーム6着を受けて明日どう動くのか、楽しみになってきた。

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 さてさて、8R。峰竜太がインから逃げ込みをはかろうとした瞬間、2コースの新田雄史が握った。ツケマイで攻めたのだ。これはなかなか意外だった。いや、最近の新田には時折見られる作戦ではあるが、ここで繰り出すとは意表を突かれた。それはどうやら3コースの中島孝平も同じだったようである。レース後、新田は中島に歩み寄り、何度か頭を下げた。するとヘルメット越しに中島が言葉を返す。新田は途端に苦笑いとも照れ笑いともとれる笑顔を浮かべ、さらに何度か頭をペコリと下げている。おそらく、1マークのあの場面を語り合っていたと思われる。こうした展開の妙があるからボートレースは面白い。

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 同じレースの5コース濱野谷憲吾、6コース寺田祥も、それに類した絡みを見せている。濱野谷が寺田に気づいた瞬間、大きな苦笑いとともに「ごっめーん」と言ったのだ。それに対して寺田はずっこけたように、膝を折る。これ、何だろうか。考えられるのは、濱野谷が最内差しに構えたことで、寺田の展開が消えてしまったことだろうか。6コースから展開待ち濃厚の寺田としては、隣の濱野谷に握ってほしい。濱野谷も得意のまくり差しを放つつもりはおおいにあっただろう。ところが、4コースの松田大志郎が攻める気配を見せていたことで、濱野谷は差しに回った。握ればテラショーにも展開あったかもしれないのに……これがごっめーんの答えだと思うがどうだろう。明日、話せる余裕があれば聞いてみたいですな。もっとも、これもまた展開の妙。ボートレースの面白さであるし、舟券的にもこういうところを読むのが楽しいんですよね(読みが外れて野次を飛ばすのも含めて)。このレース、結果は峰が順当に逃げて、2コース新田が続いて、展開突いた濱野谷が3番手、というあっさりした結果のようにも思えるが、実はいろんな絡みが起きていた、滋味深いレースだったのである。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)