BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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芦屋レディチャンTOPICS 初日

衝撃デビュー

 

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『青い大豆』の価値が、たった1日で急騰した。と言っても、先物取引の話ではない。大豆生田蒼、22歳。GIデビューの4Rは天晴れすぎる猛攻だった。まずはスタート。直前の3Rでふたりの選手がフライングを切ったというのに、5コースから他艇を気にすることなく唯我独尊のコンマ02!!

 で、4カドから伸びなりに絞めた逸子ママにぴったり連動し、スピーディーなまくり差しハンドルを突き刺した。バックでは伸び足の差で惜しくも先頭に立てなかったが、その後も艇界のオツボネ様を追うわ追うわ! 何度も1艇身差あたりまで詰め寄り、グレートマザーの心を寒からしめた。うむ、スタート度胸といい、的確なマーク差しといい、諦めずに追撃し続ける姿勢といい、レーサーとしてのセンスを如何なく発揮した3周だった。

 

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 私がはじめてこのレーサーの存在を知ったのは、やまと学校。111期の卒業式の前日だった。今でもはっきり覚えているのは、もちろんそのユニークな苗字があればこそだ。

 大豆生田。

 どう読めばいいのかわからず、関係者から「オオマメウダ」と教えてもらってから、やっと「訓練生としてかなり優秀な生徒です」みたいな情報もゲットしたのだった。名前ありき。私だけでなく、多くのファンもまずはこの名前から彼女の存在を脳みその襞に焼き付けたことだろう。そして、戸田を中心にこの名前が徐々に舟券に絡みだした頃、風の噂でこんな話が伝わってきた。

 4文字の苗字をさまざまなシステムに組み込むために、ある程度のまとまった資金がかかった。

 と。あくまで風の噂ではあるが、おそらく彼女自身もそんな話を聞いて恐縮したことだろう。だがしかし、その程度のことで肩をすぼめる必要はまったくない。今日のレースでわかる通り、この22歳の女性レーサーはその何十倍何百倍もの市場価値を秘めている。でもって、この一度聞いたら絶対に忘れない名前が、艇界以外の人々を惹きつける起爆剤にもなりえるだろう。

「大豆生田蒼というユニークな名前の女子レーサーが、男のレーサーを蹴散らしてSGというビッグレースを制しました」

 なんてね(笑)。それはまだまだ遠い未来としても、そんな夢を抱かせるだけの逸材ではある。GIデビュー戦で奮闘する姿を見つめながら、私はそう確信した。明日以降も、怯むことなく先輩に立ち向かい、ぜひとも節間に水神祭を成し遂げてもらいたい。

 

華やかな連勝

 

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 今日のMVPは、やはりピンピン連勝した「北陸のミーアキャット」か。まずは1R、F持ちの身での“1年1組”はやや肌寒い気分だったはずだが、今井美亜はコンマ09という男前なスタートから一気に逃げきってみせた。相変わらず、この子はオープニングカードなどの要所要所のイベントでキラリン素敵な光を放つ。持って生まれた華がある。

 

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 圧巻は、4号艇で臨んだ後半7R。このレースは6号艇の中谷朋子が前付けに動き、今日唯一の非枠なりレースだったのだが、美亜は慌てず騒がずその“混乱”を逆手にとってしまう。中谷を迎い入れての5カド発進。スロー勢の4艇がコンマ30前後とタイミングを逸するのを横目に、コンマ15というこれまた絶品のスタートで一気にまくりきった。結果論で言うなら「前付け艇が出現するレースの4号艇」も持って生まれた華だったか。前付け艇があればこそ、の鮮やかすぎるスタート一撃まくりだった。もちろん、明日以降もF持ちというハンデがつきまとう美亜だが、そろそろプレミアムGIの大輪を咲かせても不思議ではない頃合いだろう。今日の20点の貯金をどれだけ有効活用して、準優~優勝戦への道を突き進むのか。意外性とスター性に満ち溢れたミーアキャットの活躍を見守るとしよう。

 

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 さてさて、次は準MVP候補だが……ん、今日は1号艇がなかったのに1・2着という非凡な活躍を見せたレーサーがひとりいたような……おっと、それってあっきーですな♪ 今日のあっきーはまずは3Rで3コースから切れ味抜群のまくり差し(結果的には「抜き」での勝利)。このレースでは4、5コースの選手がWでフライングを切ったのだが、あっきーはそれをコンマ04でガッチリ受け止め、「恵まれ」とは無縁の1着を取りきった。枠番的にも展開的にもパワー的にも、実に価値の高い1勝だったな。

 

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 後半の10Rは4カドから自力アタックだ。スリットからわずかに覗くやいなや、強引かつ豪快にスロー勢を締め込み、インコース川野芽唯の直前で舳先を傾けまくり差しハンドルに切り替えた。武田信玄の風林火山を連想させる臨機応変な攻防。残念ながらわずかに舳先は届かなかったものの、安定感のあるパワー&ハンドルワークでしっかりと2着をもぎ取り、3・4号艇で18ポイントの荒稼ぎだ。正直、「前検のSS指名はちと盛りすぎだったか」と昨晩から反省していたのだが(笑)、なんのなんの今日のレースっぷりを見る限り「V候補の筆頭」と呼んでも言い過ぎではないだろう。

 

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 明日のあっきーは12Rの5号艇。遠藤エミ、寺田千恵というドリーム1・2着コンビと同居したのだが、今日のパワー&リズムならば十分に2着以内に食い込めるとお伝えしておく。3・4・5号艇で1・2・2着なんてことになれば、マジでVの最有力候補だと思うのだが、どうか。あ、『群馬の艇王』さん、コメントありがとうございます! 実は私も「アッキー」の方が書いていて座りがいいと思っているのですが、本人から「それも、嬉しい」(←満面の笑みでいながら、声のトーンは実に淡麗な綾波レイ調)と言われた文字が「あっきー」だったもんでして……って、何を書いてるんだか。ま、とにもかくにも明日からも必ず文章1行&写真1枚はこの欄にアップすると決めているので、全国のあっきー推しの読者諸兄はチョイチョイお立ち寄りくださいまし。

 

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※最後に、今日のパワー相場でなかなか賑やかな“事件”が発生した。一言で言うなら「セット交換ラッシュ」。まずは6Rの山川美由紀が「ピストン2個、リング4本、シリンダーケース(この3点がいわゆる基本的な「セット交換」。以下同)、さらにキャリアボデー、電気一式という大がかりな“移植手術”に踏みきった。

 すると、7Rの渡邉優美がセット交換、9Rの竹井奈美もセット交換、10Rの新田芳美もセット交換、最後は12Rドリーム戦の田口節子もセット交換+キャリアボデーという大整備! これだけ毎レースのようにセット交換がなされた光景は、ちょっと記憶にないな。最たる理由としては「前節(初下ろしから5節)まではほとんどプロペラのみの調整しか許されなかったが、今節から大がかりな整備が解禁になった」という感じだろうか。

 

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 で、このセット交換は前年度の優秀なモーター部品を移植するケースが多いそうで、今日の5人にもそれなりの“セット”が授けられたことだろう。私の勝手な見立てでは、今日の整備でほとんど成果がないように見えたのが新田、田口のふたり。山川(11Rの前にキャブレターも交換、もはやクランクシャフト以外はまったく別物のモーターだ)、竹井、渡邉の3人は大なり小なり良化したと思っている。この「セット交換ブーム」がどこまで続くかわからないが、直前情報でそうと知ったらそれぞれの足色をしっかりとチェックしてもらいたい。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)